食品工場の段取り替えの特徴
他業種と違い、洗浄が伴うのが最大の特徴です。
- アレルゲンの切り替えでは、徹底した洗浄が必要
- 味・色の混入を防ぐための洗浄
- 洗浄後の乾燥・組み立て
- 温度条件の切り替え(加熱・冷却設備の立ち上げ直し)
- 包材・ラベルの切り替えと確認
衛生管理上の要請があるため、単純に短縮できない部分があります。品質と安全を落とさずに短縮する方法を考える必要があります。
まず時間を測る
改善の第一歩は測定です。次を記録してください。
- 段取り開始から生産再開までの時間
- その内訳(分解、洗浄、乾燥、組立、調整、試運転、確認)
- 品目の組み合わせ別の時間
- 担当者別の時間
内訳を取ると、どこに時間がかかっているかが見えます。多くの場合、洗浄と乾燥、そして立ち上げの調整に時間が集中しています。
内段取りと外段取りを分ける
改善の基本的な考え方です。
- 内段取り:設備を止めないとできない作業
- 外段取り:設備が動いている間にできる作業
外段取りに移せる作業を洗い出すことが、最も効果的な改善です。
外段取りに移せる例
- 次の品目の原料の計量・準備
- 包材・ラベルの準備と確認
- 交換する部品の準備(洗浄済みの予備を用意)
- 治具・工具の準備
- 作業手順書の確認
- 次の品目の設定値の確認
予備の部品を用意するのが効果的です。ノズル、ホッパー、コンベアのベルトなど、洗浄済みの予備があれば、外して付け替えるだけで済みます。
洗浄時間を短縮する
1. 生産順序を工夫する
最も費用のかからない対策です。
- 色の薄いものから濃いものへ
- 味の薄いものから濃いものへ
- アレルゲンを含まないものから含むものへ
- 同系統の品目を連続で作る
順序を変えるだけで、簡易洗浄で済むケースが増えます。ただし、洗浄の妥当性は必ず確認してください。アレルゲン管理と表示をご覧ください。
2. 洗浄しやすい設計にする
- 分解しやすい構造の設備を選ぶ
- デッドスペースの少ない配管
- CIP(定置洗浄)の導入
- 洗浄しやすい材質・表面処理
設備の更新時に、洗浄性を選定基準に入れてください。導入後は変えられません。
3. 洗浄の標準化
人によって時間が違う場合、手順が標準化されていません。
- 手順書を作る(写真付き)
- 洗剤の濃度・温度・時間を決める
- チェックリストで確認する
- 複数人が同じ手順でできるようにする
標準化は、時間短縮と品質保証の両方に効きます。
立ち上げ調整を短縮する
- 品目別の設定値を記録し、再現できるようにする
- 設定値をプリセットできる設備を選ぶ
- 試作・確認の回数を減らす(1回で決まる条件を確立する)
- 立ち上げ時のロス品の扱いを決めておく
「勘で合わせている」状態を、数値に置き換えることが要点です。職人の技をどう引き継ぐかと同じ発想です。
役割分担で短縮する
段取り替えは、複数人で分担すると時間が減ります。
- 洗浄担当と準備担当を分ける
- 誰が何をやるかを事前に決めておく
- 手順書に担当を明記する
ただし、人を増やせば人件費も増えます。短縮した時間で生産できる量と比較して判断してください。
効果の測り方
- 1回あたりの段取り時間
- 月の段取り総時間
- ライン稼働率
- 同じ時間での生産量
短縮した時間を何に使うかで効果が決まります。
- 生産量を増やす → 売上と利益が増える
- 稼働時間を短くする → 人件費・光熱費が減る
- 小ロット対応を増やす → 在庫が減り、短納期に対応できる
3番目は見落とされがちですが、段取りが短ければ小ロットでも採算が合うようになります。作りすぎを防ぎ、廃棄が減ります。仕込み計画と需要予測をご覧ください。
品目数との関係
段取り時間の総量は、1回あたりの時間 × 回数です。回数を減らす(品目数を絞る、ロットをまとめる)ことも同時に検討してください。品目数を絞るをご覧ください。
設備投資との関係
「生産能力が足りない」と感じたとき、設備を増やす前に段取りを見直してください。
段取り時間が稼働時間の2割を占めているなら、それを半減させるだけで生産能力が1割増えます。設備投資より安く、早く効果が出ます。省人化投資の順序をご覧ください。