何が問題になるのか

  • 作った人しか直せない
  • 計算式の意味が分からない
  • ファイルがどこにあるか分からない
  • 複数のバージョンが存在し、どれが最新か不明
  • その人が抜けると、業務が止まる

買収監査でも、業務の属人化として指摘されます法務デューデリジェンス人が残るかどうかは価格に影響するかをご覧ください。

ステップ1:棚卸しする

業務に使っているシステム・ファイルをすべて洗い出してください。

対象

  • 会計システム、給与システム
  • 販売管理、生産管理、在庫管理
  • 勤怠システム
  • Excelで作られた業務ファイル
  • 受発注に使うシステム
  • 取引先のポータルサイト
  • クラウドサービス(ストレージ、メール、会計)
  • ウェブサイト、ECサイト、SNS
  • 各種の申請システム(行政、業界団体)

一覧に記載する項目

項目内容
名称システム名・ファイル名
用途何に使っているか
使用頻度日次/月次/年次
担当者誰が使っているか
作成者誰が作ったか(Excelの場合)
保存場所サーバー、PC、クラウド
アカウント誰の名義か
契約会社名義か、個人名義か
費用月額・年額

「アカウント」と「契約」の欄が重要です。個人名義になっているものが見つかることがあります。

ステップ2:個人名義のものを整理する

次が個人名義になっていないか確認してください。

  • クラウドサービスの契約
  • ドメイン
  • ウェブサイトの管理権限
  • SNSアカウント
  • ECサイトのアカウント
  • 携帯電話
  • 各種システムの管理者アカウント

個人名義のままだと、その人が退職したときに使えなくなります。M&Aでも指摘されます。個人名義の設備・車両・土地をどう整理するかをご覧ください。

ステップ3:属人化したExcelに対処する

すべてをシステム化する必要はありません。重要度で対応を分けてください

重要度対応
止まると業務が回らないシステム化を検討、または複数人が扱える形に作り直す
あると便利だが代替可能手順書を作り、複数人が使える状態にする
使われていない廃止する

3番目が意外に多くあります。棚卸しすると、誰も使っていないファイルが見つかります。

作り直すときのポイント

  • 計算式に説明をつける
  • 入力欄と計算欄を色で分ける
  • マクロを使いすぎない(保守が困難になる)
  • 他のファイルへの参照を減らす
  • 操作手順書を作る

マクロは特に注意が必要です。作った人しか直せず、環境が変わると動かなくなることがあります。

ステップ4:保存場所を統一する

  • 共有サーバーまたはクラウドストレージに集約する
  • 個人のPCに業務ファイルを置かない
  • フォルダ構成のルールを決める
  • ファイル名の付け方を決める
  • バックアップを取る

「担当者のPCにしかない」状態が最も危険です。故障・盗難・退職で失われます。

ステップ5:権限を整理する

  • 誰がどのシステムにアクセスできるか
  • 管理者権限を持つのは誰か
  • 退職者のアカウントが残っていないか
  • パスワードの管理方法

退職者のアカウントが有効なまま残っていることがあります。セキュリティ上の問題であり、監査でも指摘されます。工場のセキュリティ対策をご覧ください。

ステップ6:引き継ぎ資料を作る

次を1つの資料にまとめてください。

  • システム・ファイルの一覧(上記の項目)
  • 各システムの操作手順
  • アカウント情報の管理場所(パスワードそのものは安全に管理)
  • 契約先と連絡先
  • 契約の更新時期
  • トラブル時の対応先

「契約の更新時期」を忘れないでください。自動更新の契約が、承継後に発覚することがあります。

M&Aでの実務

買収監査で確認されること

  • 使用しているシステムと契約状況
  • ライセンスが適正か(無許諾のソフトを使っていないか)
  • 個人名義の契約がないか
  • 業務が特定の人に依存していないか
  • データのバックアップ体制

2番目は見落とされがちです。ライセンス違反は、法的なリスクとして指摘されます。

クロージング時の引き渡し

  • 各システムの管理者アカウント
  • クラウドサービスの契約名義変更
  • ドメイン・ウェブサイトの管理権限
  • データのバックアップ

クロージングでやることをご覧ください。

いまできること

棚卸しだけなら数日でできます。一覧を作るだけで、次が見えてきます。

  • 個人名義の契約
  • 誰も使っていないサービス(費用の削減にもなる)
  • 属人化しているファイル
  • 退職者のアカウント

引き継ぎ資料の作り方とあわせて進めてください。