属人化が招くもの
- その人が休むと、その商品が作れない
- 有給休暇を取らせられない
- シフトが組めない
- 本人が辞めたら、商品ごと失われる
- 買い手から見ると、大きなリスク
M&Aでは、キーパーソンの離職が最も恐れられます。属人化の解消は、そのまま企業価値に直結します。人が残るかどうかは価格に影響するかをご覧ください。
ステップ1:現状を見える化する
スキルマップを作ります。縦に人、横に工程を並べた表です。
| 工程 | Aさん | Bさん | Cさん | できる人数 |
|---|---|---|---|---|
| 原料前処理 | ◎ | ○ | △ | 2 |
| 仕込み・配合 | ◎ | − | − | 1 |
| 加熱・火入れ | ◎ | △ | − | 1 |
| 包装 | ○ | ◎ | ◎ | 3 |
評価の記号は次のように定義します。
- ◎:一人でできて、人に教えられる
- ○:一人でできる
- △:指導があればできる
- −:できない
「できる人数が1人」の工程が、優先して手を打つべき箇所です。
ステップ2:優先順位を付ける
すべての工程を全員ができるようにするのは、現実的ではありません。次の基準で絞ります。
- できる人が1人で、かつ止まると生産が止まる工程
- その人が定年間近、または退職の可能性がある工程
- 繁忙期に人手が必要になる工程
- 有給取得の妨げになっている工程
1番目から着手してください。ここが最もリスクが高い箇所です。
ステップ3:技能を言語化する
教える前に、何を教えるかを明確にする必要があります。
- 手順を書き出す
- 判断のポイントを言葉にする
- 数値にできるものは数値にする
- 写真・動画で「正解の状態」を残す
この作業が最も時間がかかります。職人の技をどう引き継ぐかで手順を扱っています。
ステップ4:教える人と学ぶ人を決める
名指しで割り当ててください。「誰かが覚えればいい」では進みません。
- 誰が誰に、いつまでに教えるか
- 1つの技能に対して、2人以上を割り当てる
- 教える時間を勤務時間内に確保する
3番目が重要です。「忙しいときに教える」では進みません。閑散期や、あらかじめ確保した時間で行ってください。
ステップ5:評価と結びつける
多能工化が進まない最大の理由は、本人にメリットがないことです。
学ぶ側へのメリット
- できる工程が増えると時給・手当が上がる
- スキルマップの評価が昇給・昇格の基準になる
- 資格取得の支援
教える側へのメリット
- 指導手当を付ける
- 「教えられる(◎)」を評価の対象にする
- 肩書き(トレーナー、指導員)を与える
「技を教えると自分の立場がなくなる」という不安が、最大の障害です。教えることが評価される仕組みにしてください。人事評価制度の作り方と賃金体系の見直しをご覧ください。
進めるときのコツ
1. 全員を対象にしない
意欲のある人、若手から始めてください。成功例ができると、周りが動きます。
2. 段階を分ける
いきなり「一人でできる」を目指さず、「見る → 手伝う → 一人でやる(確認あり)→ 一人でやる」と段階を踏みます。
3. 実際にやらせる
教えただけでは身につきません。定期的に交代して実際に担当させることが不可欠です。
「教えたが、いつもの人がやっている」状態では、いざというとき動けません。
4. 更新する
スキルマップは半年〜年1回更新してください。人の入れ替わりが多い食品工場では、放置するとすぐ実態とずれます。スキルマップの運用をご覧ください。
効果
- 有給休暇が取れるようになる(年5日の取得義務にも対応)
- シフトが組みやすくなる
- 欠員時に生産が止まらない
- 繁閑に応じて人を動かせる
- 教育の仕組みができる
- 承継・M&Aでの評価が上がる
年5日の年次有給休暇とシフト作成の実務をご覧ください。
承継の観点から
多能工化は、時間がかかるが、どの承継方法を選んでも効く取り組みです。
親族内承継でも、後継者が「誰がいないと何が止まるか」を把握していなければ経営できません。M&Aでは、買い手が最も気にする点です。
承継を考え始めたら、最優先で着手すべき項目の1つです。承継準備の優先順位の付け方をご覧ください。