稼働率の定義を決める
まず、何を分母にするかを決めてください。定義が曖昧だと、数字の意味が分かりません。
- 暦時間:24時間365日
- 操業時間:工場が動いている時間
- 負荷時間:生産の計画がある時間
改善の議論では、負荷時間を分母にするのが実務的です。「生産する予定だった時間のうち、どれだけ実際に生産できたか」を見ます。
止まっている時間を分解する
負荷時間から、次を順に引いていきます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 段取り・切り替え | 洗浄、分解・組立、調整、試運転 |
| 設備の故障 | 突発的な停止と修理 |
| チョコ停 | 詰まり、噛み込み、センサー誤検知など短時間の停止 |
| 材料待ち | 原料・包材の供給遅れ |
| 人待ち | 人員不足、休憩、朝礼 |
| 清掃 | 日常清掃、定期清掃 |
| 速度低下 | 設計速度より遅く動かしている |
| 不良 | 作ったが良品にならなかった分 |
チョコ停は、記録されないまま積み上がります。1回3分でも、1日20回なら1時間です。
設備総合効率という見方
次の3つを掛け合わせて評価する考え方があります。
- 時間稼働率:止まらずに動いていたか
- 性能稼働率:本来の速度で動いていたか
- 良品率:作ったものが良品だったか
3つを掛けると、実質的な効率が出ます。それぞれ90%でも、掛け合わせると73%です。
「時間稼働率だけを見ていると、速度低下と不良が見えません」。3つに分けることに意味があります。
記録の取り方
まずは紙で
製造日報に、停止した時刻・時間・理由を記入する欄を作ります。
理由は選択式にしてください。「段取り/故障/チョコ停/材料待ち/人待ち/清掃/その他」。書く負担を減らすことが、続けるコツです。
次に自動収集
設備の信号から稼働・停止を自動記録できると、精度が上がります。特にチョコ停は、人が記録するのは困難です。
生産実績の自動収集をご覧ください。
改善の優先順位
1. 金額の大きいものから
時間ではなく、金額換算で優先順位を付けてください。
「1時間止まると、いくらの生産機会を失うか」を計算します。ラインの1時間あたりの限界利益がそのまま損失額です。
2. ボトルネック工程を優先する
複数の工程がある場合、最も遅い工程が全体の速度を決めます。
ボトルネックでない工程を改善しても、全体の生産量は変わりません。まずボトルネックを特定してください。
ボトルネックの見つけ方
- 仕掛品が溜まっている工程の直後
- 常にフル稼働している工程
- 他の工程が待っている工程
3. 費用のかからない対策から
- 生産順序の見直し(段取りの削減)
- 作業手順の標準化
- 材料の供給方法の改善
- チョコ停の原因除去(清掃、部品交換)
- 予防保全の導入
- 設備の改造・更新
チョコ停への対応
食品工場で最も見落とされる損失です。
典型的な原因
- 製品の詰まり(形状のばらつき、粘着)
- 包材の噛み込み・蛇行
- センサーの汚れによる誤検知
- コンベア上での転倒・重なり
- 異物検出機の過検出
対策
- 発生箇所と回数を記録する(まずこれ)
- 頻度の高い箇所から原因を潰す
- ガイド・シュートの形状を調整する
- センサーの清掃頻度を上げる
- 原料・包材のばらつきを仕入先と協議する
「いつものこと」として放置されていることが多く、記録を始めるだけで改善が進みます。
予防保全
故障してから直す(事後保全)から、壊れる前に手を打つ(予防保全)への転換です。
- 設備ごとの点検項目と頻度を決める
- 消耗部品の交換周期を決める
- 点検の記録を残す
- 故障の履歴を分析し、周期を見直す
突発故障は、生産計画を狂わせ、納期にも影響します。予防保全の効果は、稼働率以上に大きくなります。
設備投資の判断に使う
稼働率の分解ができていると、設備投資が本当に必要かが判断できます。
- 段取りが原因 → 段取り改善が先
- チョコ停が原因 → 改造や部品交換で済むかも
- 設計速度自体が足りない → 設備更新が必要
分解せずに「生産能力が足りない」と設備を入れると、律速工程が変わらず効果が出ないことがあります。省力化投資の順序をご覧ください。
承継・M&Aでの意味
稼働率と余力は、買い手が最も関心を持つ情報の1つです。「自社の生産を移せる余地があるか」を判断する材料になります。
稼働率の記録があり、余力を数字で示せる工場は、交渉で有利になります。価格交渉で使える材料と買い手は食品工場の何を見ているかをご覧ください。