加工費とは
直接ひもづけられない費用のことです。食品工場では次が該当します。
- 設備の減価償却費
- 工場の賃料、保険料、固定資産税
- 間接人件費(工場長、品質管理、事務、保全)
- 電気、ガス、水道(一部は変動費)
- 修繕費
- 消耗品、洗剤
- 廃棄物処理費
これらを、何らかの基準で各品目に割り振ります。この基準の選び方が、採算の見え方を決めます。
配賦基準の選択肢
1. 生産数量(個数・重量)
最も単純です。「今月10万個作ったから、加工費÷10万個」。
向く場合
品目が少なく、製造の手間が似ている工場。
問題点
手間のかかる品目が過小評価されます。手作業の多い惣菜と、自動ラインで流れる商品を同じ扱いにすると実態からずれます。
2. 直接労務費
「その品目にかかった人件費に比例して配賦する」。
向く場合
人手のかかる工程が中心の工場。
問題点
設備を多く使う品目が過小評価されます。自動化が進んだラインで作る品目の負担が軽く出ます。
3. 製造時間(ライン占有時間)
「そのラインを何時間使ったか」に比例して配賦する。
向く場合
食品工場では、これが最も実態に近いことが多いと考えられます。
理由は、設備の減価償却も、間接人件費も、光熱費も、おおむねラインの稼働時間に比例するからです。
効果
この基準にすると、段取り替えに時間のかかる少量品目のコストが正しく現れます。
4. ライン別に分ける
複数のラインがある場合、まずライン別に加工費を集計し、その中で品目に配賦する方法です。
ラインごとに設備の規模も人数も違うため、精度が大きく上がります。
配賦で採算が変わる例
月の加工費300万円、生産数量10万個の工場で考えます。
| A商品 | B商品 | |
|---|---|---|
| 生産数量 | 8万個 | 2万個 |
| ライン占有時間 | 100時間 | 100時間 |
| 数量基準の配賦 | 240万円(30円/個) | 60万円(30円/個) |
| 時間基準の配賦 | 150万円(18.8円/個) | 150万円(75円/個) |
B商品の1個あたり加工費が、30円から75円に変わります。小ロットで段取りに時間のかかる品目の実態が、時間基準では正しく現れます。
数量基準のままだと、「B商品は儲かっている」と誤解したまま受注を増やすことになります。
食品工場での実務的な設計
ステップ1:ライン別に費用を分ける
- 設備の減価償却費:そのラインの設備を特定して集計
- 直接の人件費:ラインごとの配置人数から
- 光熱費:可能ならライン別に計測、難しければ設備容量で按分
ステップ2:共通費を各ラインに配賦する
工場長、品質管理、事務、保全、賃料。これらはライン占有時間や面積で配賦します。
ステップ3:ライン内で品目に配賦する
ライン占有時間(段取り替えの時間を含む)で配賦します。
段取り替え時間の扱い
ここが食品工場の要点です。段取り替えの時間を、どの品目の負担にするかで採算が変わります。
- 切り替え後の品目に負担させる:小ロット品目のコストが正しく現れる
- 全品目で按分する:計算は楽だが、実態がぼやける
前者をおすすめします。品目数を絞る判断や、ロットサイズの見直しにつながります。段取り替え時間の短縮と品目数を絞るをご覧ください。
操業度の扱い
稼働率が低いと、1個あたりの加工費は上がります。この「稼働していない時間のコスト」をどう扱うかも論点です。
- 実際の生産量で配賦する:稼働が低い月は原価が高く出る
- 基準操業度で配賦する:稼働の低さを「操業度差異」として別に把握する
後者のほうが、品目の採算と稼働の問題を分けて見られます。ライン稼働率の見方をご覧ください。
注意点:配賦は万能ではない
配賦した固定費は、その品目をやめても消えません。設備の減価償却も工場の賃料も残ります。
だからこそ、限界利益と営業利益を分けて見る必要があります。品目別採算の作り方と儲からない商品をやめるをご覧ください。