集めるデータは4つ
- 原材料の使用量と単価
- 生産数量
- 作業時間
- 経費
この4つがあれば、原価は計算できます。難しいのは「集めること」であって、「計算すること」ではありません。
データ1:原材料の使用量と単価
単価
仕入伝票から取れます。直近の単価を使ってください。半年前の単価では、いまの原価になりません。
原材料が値上がりしている局面では、月次で更新することが重要です。
使用量
ここが難所です。3つの方法があります。
- 配合表から:レシピどおりの理論値。手軽だが、ロスが反映されない
- 棚卸から:期首在庫+仕入−期末在庫=使用量。全体は分かるが品目別に分けられない
- 実測から:ロットごとに投入量を記録する。正確だが手間がかかる
おすすめは「配合表 + 歩留まり」です。配合表の理論値に、実際の歩留まりを反映させます。
歩留まりは、投入した原料の重量と、できた製品の重量を数回測るだけで概算できます。歩留まりとロスの改善をご覧ください。
データ2:生産数量
製造日報から取れることが多いはずです。確認すべきは次の点です。
- 品目別に記録されているか
- 良品と不良品が分けられているか
- ロット単位で追えるか
不良品の数量を記録していない工場が意外に多くあります。ここを記録し始めるだけで、ロスの実態が見えます。
データ3:作業時間
最も集めにくいデータです。次の順で精度を上げてください。
段階1:ラインの稼働時間で代用する
「Aラインを何時から何時まで、何の品目で使ったか」。これだけでも、ライン占有時間による配賦ができます。
段階2:工程別に分ける
前処理、加熱、冷却、包装。工程ごとの所要時間を把握します。
段階3:人数を掛ける
「Aライン2時間、5人」なら10人時。これで直接労務費が出ます。
製造日報に「何人で何時間」の欄を追加するだけで、段階3まで到達できます。
データ4:経費
試算表から取れます。工場に関わる費用を抜き出してください。
- 電気、ガス、水道、燃料
- 設備の減価償却費
- 修繕費
- 間接人件費(工場長、品質管理、事務)
- 工場の賃料、保険料
- 消耗品、洗剤
- 廃棄物処理費
これらを合計し、月あたりの加工費を出します。これを各品目に配賦します。加工費の配賦をご覧ください。
3か月で形にする手順
1か月目:仕組みを作る
- 売上上位10品目を選ぶ
- 各品目の配合表を確認・整備する
- 原材料の最新単価を一覧にする
- 製造日報に、必要な項目(品目、数量、人数、時間、不良数)を追加する
- 表計算ソフトで計算シートを作る
4番目が最も重要です。日報が変われば、データは自動的に溜まります。
2か月目:データを集める
日報を運用しながら、次を実施します。
- 主要品目の歩留まりを実測する(各3回程度)
- 段取り替えの時間を計測する
- 試算表から加工費を集計する
3か月目:計算して検証する
- 品目別の原価を計算する
- 全品目の原価 × 生産数量を合計する
- 試算表の製造原価と比べる
- 大きくずれていれば、原因を探す
3番目の照合が重要です。積み上げた原価の合計が実際の原価と合わなければ、どこかに漏れがあります。
よくあるつまずき
1. 完璧を目指してしまう
全品目、全工程を最初からやろうとすると挫折します。10品目、月次の精度で十分です。
2. 日報の記入が続かない
項目を増やしすぎると、書かれなくなります。1枚に収める、チェック方式にする、その場で書ける場所に置く。衛生管理の記録と同じ原則です。衛生管理の記録の残し方をご覧ください。
3. 現場の協力が得られない
「なぜ書くのか」を説明してください。「儲かっていない商品を値上げするための資料」と伝えると、協力が得られやすくなります。
集計結果を現場にも共有すると、当事者意識が生まれます。
4. 担当者が1人しかいない
その人が抜けると止まります。手順を文書化し、2人で回せる状態にしてください。引き継ぎ資料の作り方をご覧ください。
誰がやるか
後継者がいる場合、後継者に作らせるのが最も効果的です。作る過程で、会社の構造が体で分かります。後継者を育てる順序をご覧ください。