どこまで細かくするか
最も多い質問です。答えは「意思決定に必要な粒度まで」です。
粒度の選択肢
- 品目別:商品ごと(基本の粒度)
- 品目 × 取引先別:同じ商品でも取引先で価格が違う場合
- 品目 × 規格別:内容量やパッケージが違う場合
- ライン別:どのラインが稼いでいるか
- ロット別:日々の変動を見る場合
食品工場では、「品目 × 取引先」まで分けると実態が見えることが多くあります。同じ惣菜でも、量販店向けとコンビニ向けで価格も荷姿も違うためです。
細かくしすぎる弊害
- データ収集の負担が増え、続かない
- 配賦の精度が上がらず、かえって実態からずれる
- 数字が多すぎて、判断に使えない
まず品目別から始め、必要に応じて分けるのが実務的です。
見るべき2つの利益
限界利益
売価から変動費(原材料費、包材費、その品目を作るのに直接かかる労務費)を引いたもの。
この品目を1つ作ると、いくら会社に残るか。受注を受けるかどうかの判断に使います。
営業利益
限界利益から、配賦した固定費(設備の減価償却、間接人件費、家賃)を引いたもの。
その品目が全体としてどれだけ会社に貢献しているか。品目構成を考えるときに使います。
使い分けの例
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 限界利益がプラス、営業利益がマイナス | 稼働を埋めるなら受ける価値あり。ただし値上げの対象 |
| 限界利益がマイナス | 作れば作るほど損。撤退か値上げが必要 |
| 両方プラス | 伸ばす対象 |
この区別を知らずに「赤字だからやめる」と判断すると、かえって利益が減ります。固定費は品目をやめても消えないためです。儲からない商品をやめるをご覧ください。
採算表の項目
| 区分 | 項目 |
|---|---|
| 売上 | 売価(取引先別) |
| 販売数量 | |
| 変動費 | 原材料費(歩留まりを織り込む) |
| 包装資材費 | |
| 直接労務費 | |
| 外注加工費 | |
| 固定費 | 設備の減価償却費 |
| 間接人件費 | |
| 光熱費(一部は変動費) | |
| 工場の賃料・保険料 |
光熱費の扱いに注意してください。加熱・冷却は生産量に比例する部分があるため、一部を変動費として扱うほうが実態に近づきます。
食品工場で織り込むべきもの
1. 歩留まり
配合表どおりの量では、実際の原価は出ません。ロスを含めた実際の投入量で計算してください。
歩留まりが5%違えば、原材料費も5%違います。歩留まりとロスの改善をご覧ください。
2. 段取り替え時間
品目を切り替えるたびに、洗浄・調整の時間がかかります。この時間を、どの品目の負担にするかが採算に影響します。
ロットが小さい品目ほど、段取りの負担が重くなります。段取り替え時間の短縮をご覧ください。
3. 廃棄ロス
返品、期限切れ、規格外。これらを品目別に把握すると、実質的な採算が変わります。
4. 販売関連の費用
センターフィー、販促協賛金、返品、配送費。売上から実質的に引かれているものを採算に反映してください。
これを入れると、見かけの粗利率と実態が大きく違うことが分かる場合があります。物流費の見直しをご覧ください。
作った後の使い方
1. 品目を3つに仕分ける
- 伸ばす:営業利益が出ていて、まだ増やせる
- 維持する:限界利益は出ており、稼働を埋めている
- 見直す:限界利益が薄い、またはマイナス
2. 「見直す」品目に対応する
- まず値上げを交渉する
- 原価を下げられないか検討する(配合、工程、仕入先)
- それでも駄目なら撤退を検討する
いきなり撤退を検討しないでください。稼働が空くと、残った品目の固定費負担が増えます。
3. 更新の頻度を決める
月次で実績を反映するのが理想ですが、四半期に一度でも十分機能します。原材料の価格が動いたときは、その都度更新してください。
承継・M&Aでの価値
品目別採算が整備されている会社は、買い手からの評価が明確に変わります。統合後の計画を作るために必要な情報だからです。
また、後継者が値決めをできるようになります。買い手は食品工場の何を見ているかをご覧ください。