「赤字だからやめる」が誤りになる理由
品目別採算で営業利益が赤字と出ても、やめると利益が減ることがあります。
理由は、配賦した固定費は品目をやめても消えないからです。設備の減価償却も、工場の賃料も、間接人件費も残ります。
その品目が負担していた固定費は、残った品目に上乗せされます。結果として、他の品目まで赤字になることがあります。
判断の基準は限界利益
限界利益 = 売価 − 変動費(原材料費、包材費、直接労務費、外注費)
| 状態 | 判断 |
|---|---|
| 限界利益がマイナス | 作るほど損。値上げか撤退 |
| 限界利益がプラス、営業利益がマイナス | 稼働を埋めるなら継続の価値あり。値上げの対象 |
| 両方プラス | 継続・拡大 |
まず限界利益を見てください。ここがマイナスなら、議論の余地は小さくなります。
それでも見るべき3つの観点
1. 稼働への影響
その品目をやめると、ラインの空き時間が生まれます。
- 空いた時間で他の品目を作れるか
- 作れないなら、その時間は完全な損失
- 人員の配置をどうするか
「やめた分だけ他を増やせる」なら撤退の効果は大きく、「増やせない」なら効果は限定的です。
2. 取引先への影響
その品目だけをやめると、取引全体に影響することがあります。
- 他の品目の受注も減らされる
- 「うちの商品を断る会社」という評価になる
- 棚を失い、再参入できなくなる
取引先全体の採算で見る必要があります。単品では赤字でも、その取引先全体では黒字ということがあります。
3. 段取り・共通原料への影響
- その品目と一緒に作っていた品目の段取りが変わる
- 共通で使っていた原料の発注量が減り、単価が上がる
- 包材の最低ロットに影響する
撤退の前にやること
順序1:値上げを交渉する
まずこれです。撤退は最後の手段です。
原価の根拠を示して、価格改定を求めてください。「この価格では継続が難しい」という説明は、正当な申し入れです。価格改定の交渉をご覧ください。
順序2:原価を下げられないか検討する
- 配合の見直し(品質を維持できる範囲で)
- 原材料の仕入先変更
- 包材の仕様変更
- 工程の見直し
- ロットサイズの変更
包材の見直しは効果が出やすい領域です。ただし表示の変更が必要になる場合があります。食品表示法の基本をご覧ください。
順序3:条件を変更する
- 最低ロットを設定する
- 納品頻度を減らす
- リードタイムを延ばす
価格が上げられなくても、条件が変われば採算が改善することがあります。
順序4:それでも駄目なら撤退
撤退の進め方
1. 時期を決めて伝える
突然やめないでください。取引先は代替の供給先を探す必要があります。
「◯月末をもって終了させていただきたい」と、余裕をもって伝えます。目安として3〜6か月前です。
2. 理由を説明する
「原材料の高騰により、現在の価格では継続が困難」といった説明をします。値上げの提案とセットで伝えると、条件変更で継続できる可能性が残ります。
3. 在庫を処理する
- 専用の原料・包材の在庫
- 使い切る計画を立てる
- 使い切れない分の処分費用を見込む
撤退にもコストがかかります。専用包材が大量に残ると、廃棄損が発生します。在庫回転を上げるをご覧ください。
4. 空いた稼働をどうするか決める
撤退の効果は、空いた時間を何に使うかで決まります。
- 他の品目の増産
- 新規受注の獲得
- 稼働時間そのものを短縮する(人件費・光熱費の削減)
3番目も有効な選択です。残業を減らす、1直に集約する。人件費とエネルギー費が確実に減ります。
撤退の効果を測る
撤退の前後で、次を比較してください。
- 全社の営業利益
- ラインの稼働率
- 1品目あたりの平均段取り時間
- 残業時間
- 在庫金額
品目単位ではなく、全社で見ることが重要です。
品目数そのものを見直す
個別の撤退判断とは別に、品目数が多すぎないかという視点も必要です。段取り替えの負担、在庫の種類、管理の手間。すべてが品目数に比例します。
品目数を絞るをご覧ください。