評価基準を決める
「できる/できない」の2段階では、成長が見えません。4段階をおすすめします。
| 段階 | 定義 | 判定の方法 |
|---|---|---|
| ◎ | 一人でできて、人に教えられる | 実際に新人を指導した実績 |
| ○ | 一人でできる | 確認なしで規定の品質・時間で完了 |
| △ | 指導があればできる | 手順書を見ながら、確認を受けて完了 |
| − | できない | 未経験 |
判定の方法まで決めることが重要です。「なんとなくできそう」で○を付けると、いざというとき機能しません。
工程の粒度
細かすぎると管理できず、粗すぎると実態が見えません。
粗すぎる例
「製造」「包装」「出荷」——これでは、製造の中のどこができるか分かりません。
細かすぎる例
作業の一つひとつを分けると、項目が100を超えて管理できなくなります。
適切な粒度
「その工程を任せられるか」で判断できる単位です。食品工場では20〜40項目程度が現実的です。
- 原料の受入・検品
- 計量・配合
- 仕込み
- 加熱・火入れ
- 冷却
- 成形
- 包装機の操作
- 金属検出機の操作・確認
- ラベル貼り・日付印字
- 出荷検品
- 設備の洗浄・分解
- 設備の日常点検
- 衛生記録の記入
「衛生記録の記入」「設備の洗浄」を入れることをおすすめします。これらも属人化しやすい業務です。
更新の仕組み
頻度
- 基本:半年に1回
- 人の入退社があったとき
- 新しい設備・工程が入ったとき
誰が更新するか
現場のリーダーが評価し、工場長が確認する形が一般的です。本人にも見せてください。自分の位置が分かると、目標が持てます。
掲示する
現場に掲示すると、次の効果があります。
- 誰に聞けばよいか分かる
- 本人の意識が変わる
- 教える側の役割が明確になる
ただし、評価の低い人が晒される形にならないよう配慮してください。個人名を出さずに「できる人数」だけを掲示する方法もあります。
他の制度との連動
1. シフト作成
スキルマップがあると、「このシフトで回るか」が事前に分かります。
「Aラインを回すには、加熱ができる人が1人、包装機の操作ができる人が1人必要」と定義しておけば、シフト作成の判断が速くなります。シフト作成の実務をご覧ください。
2. 教育計画
「できる人数が1人」の工程が、そのまま教育の優先順位になります。
誰に何をいつまでに教えるかを、スキルマップから逆算して決めてください。教育計画の作り方をご覧ください。
3. 人事評価・賃金
できる工程が増えることを、評価と処遇に反映します。
- ◎の数、○の数に応じた手当
- 昇給・昇格の要件に組み込む
- パートの時給に反映する
これがないと、多能工化は進みません。人事評価制度の作り方と賃金体系の見直しをご覧ください。
4. 採用
スキルマップから、どういう人が必要かが明確になります。「経験者募集」ではなく「◯◯ができる人」と具体的に示せます。食品工場の採用戦略をご覧ください。
目標を設定する
単に現状を記録するだけでなく、目標を置いてください。
- 全工程で「できる人数2人以上」を目指す
- 各人が「○以上の工程を◯個持つ」
- 「◎(教えられる)」の人を各工程に1人以上
「できる人数2人以上」が最初の目標として分かりやすく、効果も大きくなります。
承継・M&Aでの使い方
スキルマップは、そのまま提示できる資料になります。
- 買収監査での説明資料
- 後継者への引き継ぎ資料
- 取引先の工場監査(教育体制の証明)
「誰が抜けると何が止まるか」を把握し、対策していることを示せます。これは管理水準の高さの証明です。買い手は食品工場の何を見ているかをご覧ください。
始め方
完璧な表を作ろうとしないでください。まず紙1枚で、主要工程10項目 × 現メンバーから始めます。
作ってみると、「できる人が1人」の工程が想像以上に多いことに気づくはずです。そこが出発点になります。