優先順位の付け方は2軸
承継準備の項目は、次の2軸で仕分けると判断しやすくなります。
- 時間軸:効果が出るまでに何年かかるか
- 汎用性:どの承継方法を選んでも役に立つか
時間がかかり、かつどの道でも効くものが最優先です。逆に、短期間でできて特定の道でしか使わないものは後回しで構いません。
最優先:品目別の原価を見えるようにする
整備に半年から1年、改善が数字に出るまでさらに1〜2年。時間はかかりますが、親族内承継でも社内承継でもM&Aでも、必ず効きます。
後継者は「どの商品で儲かっているか」が分からないと経営できません。買い手も同じところを見ます。金融機関への説明力も上がります。着手の仕方は原価計算を始めるにまとめました。
次点:属人化を解く
配合、火入れの見極め、段取りの順番、取引先ごとの細かい約束事。これらが特定の人の頭の中にある状態は、承継のいちばんの障害です。
文書化とスキルマップの整備は地味ですが、時間がかかり、どの道でも効きます。職人の技をどう引き継ぐかと多能工化とスキルマップをご覧ください。
3番目:衛生管理の記録を継続する
HACCPに沿った衛生管理の記録は、積み上げた期間そのものが価値になります。今日から始めても、3年分にするには3年かかります。だから早いほうがよいのです。
記録が続いている工場は、買い手からも取引先からも「管理されている工場」と見られます。衛生管理の記録の残し方を参照してください。
4番目:名義と契約を整理する
工場の土地建物、設備、車両が個人名義になっていないか。OEMや供給の契約書が残っているか。株主名簿が実態と合っているか。
これらは調べるのに時間はかかりませんが、問題が見つかったときの解決に時間がかかります。だから早めに「調べるだけ」をやっておく価値があります。個人名義の設備・車両・土地をどう整理するかと名義株の整理で扱っています。
後回しでよいもの
次の項目は、方向が決まってからで間に合います。先にやっても、状況が変われば作り直しになります。
- 株式の具体的な移転スキームの設計
- 買い手候補のリストアップ
- ノンネームシートや企業概要書の作成
- 従業員・取引先への開示の準備
時間が足りないときの割り切り
すでに実行まで2〜3年しかない場合は、上の1〜3を全部やろうとせず、原価の見える化と名義・契約の整理に絞るほうが現実的です。
属人化や記録の蓄積は、買い手側がPMIで解決できる領域でもあります。限られた時間は、買い手が自分では解決できないところ(数字と権利関係)に使ってください。