言葉が通じないことで起きること
- 作業の指示が伝わらず、不良が出る
- 危険の警告が伝わらず、事故が起きる
- 体調不良を伝えられない(衛生管理上のリスク)
- 異常を報告できない
- 日本人側の苛立ちが、強い言葉につながる
「日本語を覚えてもらう」だけでは解決しません。伝える側の工夫が必要です。
やさしい日本語
難しい日本語を、分かりやすく言い換える方法です。翻訳より早く、その場で使えます。
基本のルール
- 短く区切る:「〜して、〜してから、〜します」→ 文を分ける
- 敬語を使いすぎない:「お持ちいただけますか」→「持ってきてください」
- あいまいな表現を避ける:「ちょっと」「なるべく」「適当に」を使わない
- 二重否定を使わない:「入れないわけではない」→「入れます」
- カタカナ語に注意:外来語でも意味が通じないことがあります
- 数字で示す:「少し多め」→「100グラム」
最後が最も重要です。食品工場の指示は、数値化すると格段に伝わります。
言い換えの例
| 避ける | 言い換え |
|---|---|
| いい感じになったら止めて | 色が茶色になったら止めます |
| 適当に混ぜて | 3分間、混ぜます |
| 気をつけて | 手を入れません。危ないです |
| 体調悪かったら言って | おなかが痛いとき、熱があるとき、すぐ言ってください |
視覚で伝える
手順書
- 写真を中心にする(文字は補助)
- 1つの動作=1枚の写真
- 「良い状態」と「悪い状態」を並べる
- 危険な箇所を赤で囲む
- 数値を大きく示す
掲示・表示
- 色分け(アレルゲンの区分、器具の使い分け)
- ピクトグラム(手洗い、立入禁止、危険)
- 床のライン(通路、置き場)
- 温度計の目盛りに色帯を付ける(正常範囲を緑、異常を赤)
色分けは、言葉を使わずに伝えられる最も強力な方法です。アレルゲン管理でも有効です。アレルゲン管理と表示をご覧ください。
翻訳が必要なもの
すべてを翻訳する必要はありませんが、次は母国語で用意する価値があります。
- 労働条件通知書・雇用契約書の要点
- 就業規則の主要な部分
- 安全に関する重要な注意事項
- 体調不良時の報告のルール
- 緊急時の対応
- 相談窓口の案内
1番目は特に重要です。労働条件を理解できる方法で説明する必要があります。雇用契約書と労働条件通知書の整備をご覧ください。
日本人側への教育
見落とされがちですが、受け入れる側の準備が不可欠です。
伝えること
- やさしい日本語の使い方
- 文化・習慣の違い(宗教上の制約、食習慣、休日の考え方)
- 「分かりました」が理解を意味しないことがある
- 差別的な言動が問題になること
3番目は現場でよく起こる誤解です。理解していなくても「はい」と答えることがあります。「やって見せてもらう」ことで確認してください。
理解を確認する方法
- 「分かりましたか」ではなく「やってみてください」
- 手順を説明してもらう
- 「どうなったら止めますか」と質問する
- チェックリストで項目ごとに確認する
「分かりましたか」は最も確認にならない質問です。
通訳・翻訳の手段
- 翻訳アプリ(日常の簡単なやり取り)
- 支援機関・監理団体の通訳
- 社内の同国人従業員(負担が偏らないよう配慮)
- 外部の通訳サービス(重要な面談時)
3番目には注意が必要です。特定の人に通訳の負担が集中すると、本来の業務ができなくなります。通訳を担う場合は、その分を評価に反映してください。
摩擦が起きたとき
言葉が通じないことへの苛立ちが、強い言葉や差別的な扱いにつながることがあります。
- 相談窓口を明示する(外国人従業員が使える形で)
- 管理職への教育
- 問題が起きたときの対応手順を決めておく
ハラスメント対応の体制づくりをご覧ください。
副次的な効果
多国籍の現場に合わせて整備した仕組みは、日本人従業員にも有効です。
- 写真中心の手順書は、新人の教育を早める
- 数値化された指示は、判断のばらつきを減らす
- 色分け・表示は、誰にとっても分かりやすい
「外国人のための対応」ではなく「誰にでも分かる工場にする」と捉えると、取り組みの意味が変わります。教育計画の作り方をご覧ください。