導入の目的
- 集計の手間を減らす
- 労働時間を客観的に記録する(法令上の要請)
- 時間外労働の上限を管理する
- 有給の取得状況を管理する
- 変形労働時間制の運用を正しく行う
- 給与計算と連携する
2番目が最も重要です。労働時間の把握は、客観的な方法で行うことが求められています。労働時間の把握をご覧ください。
食品工場に必要な要件
1. シフト制への対応
- 早番・遅番・夜勤などの勤務パターンを登録できる
- 日ごとに異なる所定労働時間を設定できる
- シフト表を作成・管理できる
- シフトの希望を収集できる
固定の始業・終業時刻しか設定できないシステムでは、食品工場では使えません。
2. 変形労働時間制への対応
1年単位・1か月単位の変形労働時間制を採用している場合、その計算に対応しているかを必ず確認してください。
- 対象期間の総枠を管理できる
- 各日の所定労働時間を事前に設定できる
- 期間全体での過不足を計算できる
- 中途入退社者の精算ができる
対応していないシステムだと、結局手計算になります。変形労働時間制の点検をご覧ください。
3. 割増賃金の計算
- 時間外、深夜、休日の区分
- 深夜と休日が重なる場合の計算
- 法定休日と所定休日の区別
- 月60時間超の割増率
割増賃金の計算をご覧ください。
4. 打刻の方法
食品工場では、打刻の方法と位置が重要です。
- ICカード(手袋でも使える)
- 指紋・静脈認証(手が濡れていると認識しにくい場合がある)
- 顔認証(マスク・帽子への対応を確認)
- スマートフォン(私物の使用可否を検討)
ICカードが最も確実なことが多くあります。手袋のまま、濡れた手でも使えます。
5. 打刻機の設置位置
これがシステム選定と同じくらい重要です。
更衣室の外に置くと、着替えの時間が記録されません。更衣室の入口に設置することで、この問題が構造的に解決します。
着替え・手洗い・清掃の時間はどう扱うかをご覧ください。
6. 環境への耐性
- 防水・防塵
- 低温環境での動作
- 清掃・消毒への耐性
あると有効な機能
- 時間外労働の上限アラート:36協定の範囲を超える前に通知
- 有給取得の進捗管理:年5日の達成状況
- 打刻漏れの検知
- スマートフォンからのシフト確認・希望提出
- 給与計算システムとの連携
- 多言語対応(外国人従業員向け)
1番目と2番目は、労務リスクを直接減らします。36協定の点検と年5日の年次有給休暇をご覧ください。
多言語対応は、外国人従業員の多い工場では実務的な価値があります。多国籍な現場のコミュニケーション設計をご覧ください。
選定の進め方
- 自社の勤務形態を整理する(勤務パターン、変形労働、雇用形態)
- 現在の集計作業にかかっている時間を測る
- 複数社から提案を受ける
- 自社のシフトパターンで計算できるかテストする
- 打刻機を実際に試す(手袋、濡れた手)
- 設置位置を決める
4番目を必ず行ってください。複雑なシフト制では、対応できないシステムがあります。
導入時の注意
1. 過去の未払いが表面化することがある
打刻位置を変えると、これまで記録されていなかった時間が記録されます。
その結果、労働時間が増え、割増賃金も増えます。これは正常化ですが、過去分の扱いという問題が生じます。
導入前に、社会保険労務士に相談してください。未払い残業が見つかったときの対応をご覧ください。
2. 就業規則との整合
システムの計算ロジックと、就業規則の定めが一致しているか確認してください。端数処理、休憩の控除、割増の計算など。
3. 従業員への説明
打刻の方法が変わることを、事前に丁寧に説明してください。「監視されている」と受け取られないよう、目的(正しく賃金を払うため、法令を守るため)を明確に伝えます。
効果
- 集計時間の削減(月数十時間になることも)
- 計算ミスの防止
- 労務リスクの低減
- 時間外労働の可視化 → 削減につながる
- シフト作成の効率化
3番目が最も価値のある効果です。未払い残業のリスクは、金額が大きくなりやすく、M&Aでも指摘されます。
承継・M&Aでの意味
労務デューデリジェンスでは、勤怠記録と賃金台帳の突合が必ず行われます。
システムで客観的に記録され、正しく計算されていれば、この分野の指摘が大きく減ります。
労務デューデリに備えると労務デューデリジェンスをご覧ください。
費用の目安
- クラウド型:1人あたり月額数百円〜
- 打刻機:1台数万円〜十数万円
- 初期設定費用:数万円〜数十万円
集計にかかっている人時と比較すれば、回収は容易なことが多い投資です。