典型的な発生原因
- 着替え・手洗い・清掃の時間が労働時間に含まれていない
- 変形労働時間制の要件を満たしていない
- 固定残業代が有効に機能していない
- 割増賃金の算定基礎から手当を誤って除外している
- 労働時間の端数を切り捨てている
- 残業の申請制が形骸化し、実態が記録されていない
- 管理監督者の範囲が広すぎる
食品工場では、最初の3つが特に多く、金額も大きくなります。
金額のインパクト
未払い賃金の請求には期間の定めがあります。この期間は改正されており、遡る範囲が広がっています。
単純化した試算をしてみます。
- 1人あたり1日15分の未払い
- 月20日勤務 → 月5時間
- 時間単価1,500円 → 月7,500円
- 従業員50名 → 月37.5万円
- 年間450万円
これに遡及分と割増率が加わります。数千万円規模になることも珍しくありません。
見つかったときの順序
1. 事実を確定する
- どの原因で、いつから発生しているか
- 対象となる従業員の範囲
- 1人あたりの未払い時間
- 概算の金額
まず金額を把握してください。規模が分からないと、対応の方針が決まりません。
2. 専門家に相談する
自己判断で進めないでください。社会保険労務士・弁護士に相談し、次を確認します。
- 本当に未払いに該当するか(該当しないケースもあります)
- 遡る期間の考え方
- 支払いの方法と手続き
- 従業員への説明の仕方
3. 将来分を是正する
まず、今後発生しないようにすることが最優先です。
- 打刻位置を変える
- 労働時間の定義を明確にする
- 変形労働時間制の運用を正す、または制度をやめる
- 固定残業代の設計を見直す
- 賃金計算のロジックを修正する
ここを止めないと、毎月増え続けます。
4. 過去分の対応を決める
選択肢としては、次のような対応が考えられます。
- 遡って支払う
- 一定期間分について支払う
- 個別に説明し、合意を得る
どの対応が適切かは、個別の事情によって異なります。専門家と検討してください。
従業員への説明
過去分を支払う場合、説明の仕方が重要です。
- 誤りがあったことを認める
- 原因を説明する
- 今後どう是正するかを示す
- 過去分の計算根拠を示す
誠実に対応することで、かえって信頼が高まることがあります。逆に、隠す・ごまかすと、退職者からの請求や労働基準監督署への申告につながります。
労働基準監督署の調査で指摘された場合
是正勧告を受けた場合、期限までに是正し、報告書を提出することになります。
誠実に対応すれば、直ちに重い処分に至ることは多くありません。放置や虚偽の報告が最も問題です。労働基準監督署の調査で見られることをご覧ください。
M&Aへの影響
買収監査で見つかった場合
- 未払い額が算定される
- その金額が価格から差し引かれる
- または、クロージングまでの解消が条件になる
- または、補償条項の対象になる
金額が大きい場合、破談の原因にもなります。M&Aが途中で止まる理由をご覧ください。
先に開示した場合
交渉の前提になり、表明保証の対象からも外せます。金額の議論はありますが、信頼を失うことはありません。
「先に出す」ほうが、あらゆる面で有利です。労務デューデリに備えるをご覧ください。
早く動くほど有利
理由は3つです。
- 遡る期間が短くなる(放置すると金額が増える)
- M&Aの直前だと、対応する時間がない
- 退職者から請求される前に是正できる
承継を考え始めた時点で、まず点検してください。社会保険労務士に依頼する費用は、後から発生しうる金額と比べればわずかです。
※ 未払い賃金の算定や遡及の範囲、対応方法は個別の事情によって異なります。実際の対応にあたっては、必ず社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。