基本の考え方

消費税には標準税率と軽減税率があり、飲食料品の譲渡などが軽減税率の対象とされています。

食品製造業では、売上のほとんどが軽減税率の対象となる一方、仕入や経費には両方の税率が混在します。これが実務の複雑さの原因です。

食品工場で対象が分かれる場面

売上側

取引一般的な扱い
製造した食品の販売軽減税率
食品と非food品の一体商品要件により扱いが分かれる
飲食設備での飲食提供標準税率
持ち帰り販売軽減税率
ケータリング・出張料理標準税率
食品の配送料を別途受領標準税率

直売所や飲食スペースを併設している工場では、店内飲食と持ち帰りで扱いが変わります。レジでの区分が必要になります。

仕入・経費側

取引一般的な扱い
原材料の仕入軽減税率
包装資材標準税率
洗剤・消毒剤標準税率
設備・機械標準税率
光熱費・燃料標準税率
物流費標準税率

包装資材が標準税率である点が、食品工場で混乱しやすいところです。中身は軽減、包材は標準となります。

迷いやすい場面

1. 一体商品

食品と食品以外がセットになっている商品は、一定の要件を満たす場合に全体が軽減税率の対象となることがあります。要件があるため、個別に確認が必要です。

贈答用のセット商品、おまけ付きの商品などが該当しえます。

2. 容器・包装

商品と一体として販売される通常必要な包装は、商品と同じ扱いになると考えられます。一方、包装資材そのものを仕入れるのは標準税率です。

3. 直売所・イートイン

工場に併設した売店で、飲食スペースを設けている場合。店内飲食か持ち帰りかを確認する運用が必要になります。

4. 配送料

商品代金に含めているか、別途受領しているかで扱いが変わります。ECを行っている場合は特に確認してください。

区分経理の実務

1. 帳簿の対応

税率ごとに区分して記帳する必要があります。会計ソフトが対応しているかを確認してください。

2. 請求書等の対応

適格請求書等保存方式(インボイス制度)のもとでは、登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額等の記載が求められます。

自社が発行する請求書が要件を満たしているか、受け取る請求書が適格請求書になっているかの両面を確認してください。

3. 販売管理システムの対応

受注から請求までのシステムが、税率の区分に対応している必要があります。手書きの納品書やFAX注文が残っている工場では、対応が遅れがちです。

デジタル化の進め方は受発注のデジタル化をご覧ください。

4. 原価計算への影響

原材料は軽減、包材は標準。原価計算で税抜きの金額を正しく扱えているかを確認してください。システムの設定を誤ると、原価が実態とずれます。

原価管理システムの選び方をご覧ください。

仕入先が免税事業者の場合

適格請求書を発行できない事業者からの仕入については、仕入税額控除の扱いに影響があります。

食品製造業では、地域の生産者や小規模な事業者から原料を仕入れていることがあります。この場合の対応を、税理士と確認してください。

取引条件の見直しが必要になる場合もありますが、一方的な条件変更は下請取引の観点から問題となることがあります。慎重な対応が必要です。価格交渉の環境整備をご覧ください。

承継時に確認される点

  • 税率の区分が適切に行われているか
  • 適格請求書発行事業者の登録をしているか
  • システムが対応しているか
  • 過去の申告に誤りがないか

買収監査では、消費税の処理誤りが指摘されることがあります。過去に遡って修正が必要になると、負担が生じます。財務デューデリジェンスをご覧ください。

顧問税理士と確認する

この領域は個別性が高く、取引の実態によって判断が変わります。自社の取引パターンを整理して、税理士に確認してください。

特に、新しい販売形態(EC、直売、イートイン)を始める際は、始める前に確認することをおすすめします。顧問税理士とどう連携するかをご覧ください。

※ 消費税の税率や区分の判定、インボイス制度の取扱いは、法令の改正や取引の実態によって異なります。実行にあたっては顧問税理士に必ずご確認ください。