営業許可の基本
食品衛生法では、公衆衛生に与える影響が著しい営業について、都道府県知事等の許可を受けることを求めています。許可は「営業者」と「施設」の組み合わせに対して与えられます。
この「営業者と施設の組み合わせ」という点が、承継の場面で決定的に効いてきます。営業者が変われば、原則として新たな手続きが必要になるからです。
1. 自社がどの業種に当たるか
許可が必要な業種は法令で定められています。食品製造業では、菓子製造業、そうざい製造業、食肉製品製造業、水産製品製造業、清涼飲料水製造業、乳製品に関する業種などが該当します。
注意すべきは、製造している品目が増えたときに、許可の範囲を確認したかという点です。新しい商品を始めた際に確認が漏れ、許可の範囲外の品目を製造していた——これは買収監査で実際によく見つかります。
許可が不要でも届出が必要な業種もあります。判定は営業許可が要る業種はどれかと営業許可と営業届出の違いをご覧ください。
2. 施設基準
許可を受けるには、施設が基準に適合している必要があります。基準は法令で定められ、都道府県等の条例で具体的な内容が定められている部分もあります。
一般的に確認される観点は次のとおりです。
- 区画の分離(原料の受入、製造、包装、保管、出荷の動線)
- 床・壁・天井の材質と清掃のしやすさ
- 手洗い設備の位置と数
- 給排水と便所の設置
- 換気、照明、防虫・防そ
- 器具・容器の洗浄設備
- 温度管理が必要な設備と、その計測手段
増改築や設備の入れ替えを行った場合、変更の届出が必要になることがあります。長年の間に手を入れた工場では、届出が漏れているケースがあります。施設基準の考え方をご覧ください。
3. 食品衛生責任者
施設ごとに食品衛生責任者を定める必要があります。資格の要件があり、変更した場合は届出が必要です。
経営者が兼任している会社では、代表交代や相続の際に不在になるリスクがあります。複数人が資格を持っている状態が望ましい形です。食品衛生責任者の要件と交代の手続きをご覧ください。
4. 更新
営業許可には有効期間があり、期間満了前に更新の手続きが必要です。有効期間は業種や自治体によって異なります。
承継の時期と更新の時期が重なると、手続きが錯綜します。許可証の有効期限を一覧にして管理することをおすすめします。営業許可の更新を参照してください。
5. 承継のときにどうなるか
ここが最も重要です。承継のスキームによって扱いが根本的に変わります。
| スキーム | 営業許可の扱い |
|---|---|
| 株式譲渡 | 会社は同じなので継続(代表者変更の届出が必要な場合あり) |
| 親族内・社内承継 | 同上 |
| 事業譲渡 | 営業者が変わるため、原則として新たな手続きが必要 |
| 会社分割・合併 | 承継に関する規定や自治体の運用による。要確認 |
| 個人事業から法人へ | 営業者が変わるため、原則として新たな手続きが必要 |
事業譲渡の場合、許可が下りるまで製造できません。この期間をどう扱うかが、スケジュール全体を決めます。事業譲渡のときの営業許可と営業許可は引き継げる?をご覧ください。
6. 承継前に確認すること
- 許可証の原本があるか(紛失していないか)
- 許可の業種・範囲が、実際に製造している品目と一致しているか
- 有効期限はいつか
- 施設に変更があった場合、届出をしているか
- 食品衛生責任者が適正に選任・届出されているか
- 行政からの指導・処分の履歴があるか
2番目でずれが見つかることが最も多くあります。方式を決める前に、管轄の保健所へ確認してください。
7. 衛生管理との関係
営業許可とは別に、HACCPに沿った衛生管理の実施が求められます。許可を得ていれば足りるわけではありません。
衛生管理計画を作り、記録を残し、検証する。この運用が継続していることが、承継の場面でも評価されます。HACCPに沿った衛生管理 完全ガイドをご覧ください。
まず何をするか
許可証を取り出して、業種・範囲・有効期限を確認する。これだけなら今日できます。実際の製造品目と照らして違和感があれば、そこが最初の論点です。
※ 営業許可・衛生管理・食品表示の具体的な取扱いは、法令の改正や管轄行政庁の運用によって異なります。実行にあたっては、管轄の保健所等および専門家に必ずご確認ください。