表示は「作った後」で直せない

製造工程の不備は、多くの場合その日のうちに気づけます。しかし表示の誤りは、商品が店頭に並び、消費者の手に渡ってから発覚することが少なくありません。だからこそ影響が大きくなります。

食品表示法に基づく食品表示基準では、名称、原材料名、添加物、内容量、期限表示、保存方法、製造者などの表示が求められます。中でも実務上のリスクが集中するのがアレルゲンの表示です。

アレルゲン表示のリスクはどこにあるか

表示そのものの書き間違いだけでなく、次のような場面でリスクが生まれます。

  • 原料の規格書が更新され、配合が変わったのに表示に反映されていない
  • 仕入先を変更した際に、原料に含まれるアレルゲンが変わった
  • 同じラインで異なる商品を製造しており、洗浄不足で意図しない混入が起きた
  • 包材の切り替え時に、旧版と新版が混在した

いずれも「表示担当者が間違えた」のではなく、原料情報・製造計画・包材管理のつながりが切れていたことが原因です。承継の場面でも、この3つのつながりが管理されているかが見られます。

自主回収には届出が求められる

食品衛生法・食品表示法に基づき、事業者が自主回収を行う場合には、行政への届出が求められる制度が設けられています。届け出られた情報は公表される仕組みになっています。

つまり、回収は社内で完結する話ではありません。いつ・何を・なぜ回収し、どう再発を防いだかが記録として残ります。承継の検討では、この履歴が確認されることになります。

過去に回収があると不利になるのか

回収の履歴があること自体が、承継を難しくするとは限りません。買い手が見るのは、次の3点です。

  1. 原因が特定できているか
  2. 再発防止策が実施され、定着しているか
  3. 同種の事案が繰り返されていないか

むしろ、回収を経験し、そこから仕組みを立て直した会社は「管理できる会社」と評価されることがあります。逆に、原因が曖昧なまま「気をつける」で終わっている場合は、リスクが残っていると見なされます。

承継前に整理しておきたいもの

  • 商品ごとの表示内容と、その根拠となる原料規格書の対応表
  • 原料の仕入先変更・規格変更があったときの、表示見直しの手順
  • 包材の在庫管理と、切り替え時のルール
  • 同一ラインでの製造順序と、アレルゲンを考慮した洗浄基準
  • 過去の苦情・事故・回収の一覧と、再発防止策の実施状況
  • PL保険・リコール保険の加入状況と補償範囲

特に1つ目は、整えるのに手間がかかるぶん、揃っていると評価されます。表示と原料規格書が紐づいていない状態は、それ自体がリスクとして指摘されます。

受託製造の場合の責任分担

PB・OEMを受託している場合、表示の内容を決めるのは委託者でも、製造者としての責任は残ります。契約上、表示の作成・確認・誤表示が生じた場合の負担がどう分担されているかは、承継の検討で必ず確認される点です。

契約書を読み直し、責任範囲が曖昧なままになっていないかを点検しておくことをおすすめします。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。食品表示の具体的な要求事項や回収時の手続きは、法令の改正や管轄行政庁の運用によって異なります。実際の対応にあたっては、管轄の保健所・消費者行政の窓口等および専門家にご確認ください。