いまの受注業務の問題
- FAXを受け取り、手書きで転記する
- 電話での注文を、聞き取って書き取る
- それを生産計画に転記する
- さらに出荷指示書に転記する
- 請求書作成時にまた転記する
同じ情報を4〜5回転記しているのが実態です。そのたびにミスの機会が生じます。
転記ミスの影響
- 数量違いによる欠品・過剰生産
- 納品先違い
- 納期違い
- 請求金額の誤り
- クレーム対応の時間
1件のミスの損失は、想像より大きくなります。
デジタル化の選択肢
1. EDI(電子データ交換)
取引先のシステムと直接データをやり取りする形です。大手量販店やコンビニとの取引では、導入が求められることがあります。
- 転記が完全になくなる
- 取引先ごとに仕様が異なる場合がある
- 導入費用がかかる
2. Web受発注システム
取引先が自社のシステムに入力する形です。中小の取引先が多い場合に向きます。
- 比較的安価に導入できる
- 取引先に使ってもらう必要がある(ここが最大の課題)
- スマートフォンからも入力できるものが多い
3. FAXのOCR読み取り
受け取ったFAXを自動でデータ化する方法です。取引先の運用を変えずに済むのが利点です。
- 取引先の協力が不要
- 読み取り精度に限界がある(手書きは特に)
- 確認作業は残る
4. メール・チャットの活用
FAXをやめ、メールやチャットに移行するだけでも改善します。データとして残り、検索できるためです。
移行の手順
ステップ1:現状を把握する
- 取引先ごとの受注方法(FAX、電話、メール、EDI)
- 受注件数と、それにかかる時間
- 転記の回数
- 過去のミスの件数と内容
「受注業務に月◯時間かかっている」と数字にしてください。投資判断の根拠になります。
ステップ2:取引先を分類する
| 区分 | 対応 |
|---|---|
| EDI対応を求められている大手 | EDIを導入 |
| 件数が多い中堅 | Web受発注への移行を依頼 |
| 件数が少ない小規模 | FAX継続+OCR、またはメール |
すべてを一律にする必要はありません。件数の多い取引先から順に移行するのが効率的です。
ステップ3:社内の受け皿を作る
データ化しても、その先で転記が発生しては意味がありません。
- 受注データから生産計画へ
- 生産計画から出荷指示へ
- 出荷実績から請求へ
この流れがつながる形にしてください。生産管理システムの入れ方をご覧ください。
ステップ4:取引先に依頼する
ここが最大の関門です。取引先にとっては、運用を変える手間が発生します。
説得の材料
- ミスが減る(双方にとって利益)
- 発注の履歴が残る
- スマートフォンから発注できる
- 締め時間を遅くできる(対応時間が短縮されるため)
- 納期回答が速くなる
「締め時間を遅くできる」は、取引先にとって直接的なメリットです。有効な提案材料になります。
食品工場での実務上の注意
1. 急な変更への対応
食品では、当日の追加・変更が日常的に発生します。システム化しても、電話での変更は残ります。
「変更をどう処理するか」を設計に含めてください。システムに反映されない変更があると、混乱します。
2. 単位の統一
ケース、バラ、kg。取引先ごとに単位が違うことがあります。換算のルールを整理してください。
3. 締め時間と生産計画
受注の締め時間と、生産開始の時刻の関係。デジタル化で締めを遅くできると、需要予測の精度が上がります。仕込み計画と需要予測をご覧ください。
4. 軽減税率への対応
請求書の要件(適格請求書)に対応しているか。税率ごとの区分表示が必要です。軽減税率と区分経理をご覧ください。
効果
- 受注処理の時間短縮
- 転記ミスの削減
- 締め時間を遅くできる → 需要予測の精度向上
- 受注データの蓄積 → 分析に使える
- 属人化の解消
4番目が中長期で効きます。過去の受注データが蓄積されると、需要予測や生産計画の精度が上がります。
属人化の解消
受注業務は、「あの人しか対応できない」状態になりやすい業務です。
- 取引先ごとの癖を覚えている
- 電話での聞き取りに慣れている
- 独自のExcelで管理している
この状態は、承継の障害になります。デジタル化は、属人化を解く手段でもあります。承継時のシステム引き継ぎをご覧ください。
費用の目安
- Web受発注(クラウド):月額数万円〜
- FAX OCR:月額数万円〜
- EDI:初期数十万円〜数百万円
IT導入補助金などが使える場合があります。食品製造業が使える補助金の種類をご覧ください。