下請け構造の何が問題か
- 運賃を自分で決められない:元請の取り分が乗った後の金額
- 値上げの相手が元請:元請自身も荷主と交渉できていない
- 仕事量が元請次第:減らされたら対応できない
- 荷主の顔が見えない:改善提案ができない
- 切られたら終わり:代替の仕事がない
- M&Aで評価が下がる:買い手はこの構造をリスクと見ます
一方で、利点もあります。
- 営業しなくても仕事が来る
- 荷量が比較的安定する
- 請求先が少なく、事務負担が軽い
- 与信リスクが小さい
だからこそ、急に抜けるのではなく段階的に比率を変えるのが現実的です。
依存度を測る
まず現状を数字にしてください。
- 元請経由の売上と、その比率
- 元請ごとの内訳(1社に偏っていないか)
- 直取引の売上と比率
- それぞれの利益率
元請経由と直取引で、利益率がどれだけ違うかを計算してください。この差が、脱却に取り組む理由になります。荷主別の採算管理をご覧ください。
段階的に進める
ステップ1:今の元請との条件を改善する(1年目)
いきなり抜けるより、まず現在の取引条件を改善してください。
- 燃料サーチャージの導入(燃料サーチャージの導入)
- 待機料・附帯作業料の収受(待機料・附帯作業料の収受)
- 運賃の改定
取引の公正さに関するルールは、下請の立場を守る方向に働きます。交渉すること自体をためらう必要はありません。下請法・物流特殊指定の基本をご覧ください。
ステップ2:直取引を少しずつ増やす(1〜3年目)
- 着荷主からの開拓
- 既存の直取引荷主の深掘り
- 紹介の依頼
元請の荷主には直接アプローチしないという原則を守ってください。直取引の開拓をご覧ください。
ステップ3:比率を入れ替える(3〜5年目)
直取引が増えたら、条件の悪い元請の仕事から順に減らすことができます。ここで初めて、交渉力が生まれます。
元請との関係を壊さない
元請経由の仕事は、荷量の安定という価値があります。全部やめる必要はありません。
- 条件の良い元請とは続ける
- 減らす場合も、事前に伝えて期間を設ける
- 急に断らない
- 自社が受けられない仕事は、引き続き協力する
元請も同じ課題を抱えていることが多くあります。対立ではなく、条件を改善する相手として向き合ってください。
自社が元請になる
逆に、自社が元請の立場になるという方向もあります。
- 荷主から直接受注し、協力会社に出す
- 利用運送の登録が必要になる場合があります(貨物利用運送事業の登録)
- 与信・請求・品質管理の責任を負う
この場合、自社が協力会社に対して公正な条件を提示することが求められます。自分がされて嫌なことを、下にしないでください。
脱却できない構造的な要因
次に当てはまる場合、脱却は難しくなります。
- 営業できる人がいない:社長も現場に入っている
- 車両とドライバーに余裕がない:新規を受ける余力がない
- 請求・与信の体制がない:直取引が増えると事務が回らない
- 元請1社に9割依存:抜けると事業が成り立たない
これらは、脱却の前に解決すべき課題です。事務・バックオフィスの体制、管理職の育成をご覧ください。
時間軸の目安
直取引比率を大きく動かすには、3〜5年を見てください。
- 1年目:条件改善、開拓の体制づくり
- 2〜3年目:新規の獲得、比率が少しずつ変わる
- 4〜5年目:構造が変わる
引退から逆算して企業価値を高めたい場合、早く着手するほど効果が出ます。逆算経営の完全ガイドをご覧ください。
M&Aでの意味
買い手は、元請依存を明確なリスクと見ます。
- 元請が仕事を止めたら終わり
- 運賃改定の余地がない=収益改善ができない
- 荷主との関係という資産がない
逆に、直取引比率が高い会社は、買収後の改善余地があるとして評価されます。比率の推移を示せると、取り組みの成果が伝わります。直取引比率を上げる意味、評価が上がる会社の条件をご覧ください。
依存度を測った後にどう読むか
元請経由と直取引の利益率の差を計算してくださいと書きました。この差が出たときの読み方を補います。
差が大きい場合、脱却の効果が明確です。同じ車両と人で、直の仕事に振り向けたときにどれだけ変わるかが計算できます。この数字が、社内を動かす材料になります。
差が小さい場合は、話が変わります。元請経由でもそれなりの条件で受けているということです。この場合、急いで比率を変える必要はありません。むしろ、営業の負担がない分だけ有利かもしれません。
そして、逆に直取引のほうが利益率が低い場合もあります。開拓の初期に条件を下げて取った取引が残っている、事務の負担が乗っている。原因を確かめてください。直だからよいというわけではありません。
あわせて、元請ごとの内訳も見てください。一社に偏っている場合と、複数に分散している場合では、リスクの大きさが違います。分散していれば、一社が減っても致命的にはなりません。
だから、脱却という言葉に引きずられず、まず数字を見てください。取り組むべきは、比率そのものではなく、条件の悪い取引です。
元請との条件改善から始める理由
いきなり抜けるより現在の取引条件を改善してくださいと書きました。この順序には理由があります。
一つは、効果が早いことです。開拓には年単位の時間がかかりますが、条件の改善は数か月で結果が出ることがあります。
二つ目は、リスクが小さいことです。今ある取引の条件を良くする取り組みは、失うものがありません。開拓は、体制が追いつかなければ既存の品質を落とします。
三つ目は、社内の経験になることです。条件の交渉を経験した会社は、直取引でも条件を決められます。交渉したことのない会社が直取引を始めても、結局は言われた条件で受けることになります。
そして、元請との条件が改善すれば、脱却の必要性そのものが下がる場合もあります。目的は比率を変えることではなく、採算の取れる状態を作ることです。
だから、最初の一年は条件の改善に集中してください。並行して開拓の準備を進める形が現実的です。
体制の課題を先に潰す
脱却の前に解決すべき課題を挙げました。それぞれについて、着手の仕方を示します。
営業できる人がいない場合。専任を置く必要はありません。配車の担当が週に半日、あるいは幹部が分担する形から始められます。大事なのは、時間を確保することです。
車両とドライバーに余裕がない場合。ここは採用と稼働の問題です。ただし、新規を受ける余力がまったくないなら、開拓しても受けられません。まず稼働の改善に取り組んでください。
請求と与信の体制がない場合。直取引が増えると、請求先が増え、入金の確認も増えます。今のうちに、誰がどう処理するかを決めておいてください。取引が増えてから整えるのでは遅くなります。
一社に大きく依存している場合。これが最も難しい状態です。抜けると事業が成り立たないため、時間をかけて少しずつ比率を変えるしかありません。焦って動くと、依存先との関係も壊します。
どの課題も、解決に時間がかかります。だから、脱却を考え始めた時点で、これらの準備を始めてください。
減らす順番の決め方
条件の悪い元請の仕事から順に減らすことができると書きました。この順番の決め方を具体的にします。
見るのは、利益率と、その取引の安定性です。利益率が低く、量も不安定な取引が最初の候補になります。
一方、利益率が低くても、量が安定していて閑散期を埋めている取引は、慎重に扱ってください。減らした後の穴が埋まらなければ、固定費だけが残ります。
そして、減らす前に代わりが確保できているかを確認してください。順序としては、新しい取引が始まってから、既存を減らす形です。逆にすると、収入が途切れます。
減らすときは、全部を一度に切らないでください。便数を減らす、担当する路線を絞る。段階を踏めば、相手も対応できます。
そして、必ず事前に伝えてください。急に断ると、業界内での評判に関わります。期間を設けて減らす形なら、関係を残したまま進められます。
自社が元請になる場合の負担
自社が元請の立場になるという方向に触れました。この選択には、相応の負担が伴います。
まず、与信です。荷主から直接受注するということは、入金されない場合の負担を自社が負うということです。運んだ後に支払われなければ、協力会社への支払いだけが残ります。取引を始める前の確認と、条件の設定が重要になります。
次に、品質の責任です。協力会社が起こした遅延や事故についても、荷主に対しては自社が責任を負います。誰に出すか、どう管理するかを決める必要があります。
そして、資金の負担です。荷主からの入金より先に協力会社へ支払う形になると、取引が増えるほど資金が要ります。この構造を、始める前に計算しておいてください。
あわせて、取引の形態によっては必要な登録があります。自社で運ばず取り次ぐ形になるなら、手続きを確認してください。
そして、協力会社に対する条件は、自社が元請に求めてきたものと同じ水準にしてください。立場が変わった途端に条件を絞る会社は、いずれ協力会社から選ばれなくなります。
時間軸を社内でどう共有するか
三年から五年を見てくださいと書きました。この時間の長さが、取り組みが続かない理由にもなります。
一年目は、条件の改善と体制づくりです。目に見える成果は少なく、社内では手応えを感じにくい時期になります。だから、この時期の目標は行動の数で置いてください。訪問した件数、条件を見直した取引の数。結果ではなく、動いたかどうかで測ります。
二年目から三年目に、少しずつ新規が入り始めます。この時期に大事なのは、入った取引の条件を安定させることです。件数を追って条件を下げると、比率が変わっても採算が改善しません。
四年目以降に、構造が変わります。ここで初めて、条件の悪い取引を減らす選択ができます。
この見通しを、最初に社内で共有してください。すぐに結果が出ないことを分かったうえで始めるのと、期待して始めて失望するのとでは、続き方が違います。
そして、年に一度は比率を測って共有してください。少しずつでも動いていることが見えれば、取り組みが続きます。
買い手が構造をどう確かめるか
元請依存を明確なリスクと見ると書きました。具体的にどう確かめられるかを補足します。
まず、売上の内訳です。上位の取引先とその比率。ここで一社に大きく偏っていると、その一社の契約内容と継続性が最重要の確認事項になります。
次に、その取引の条件です。契約書があるか、期間はどうなっているか、解約の予告はどう定められているか。書面がなければ、いつ止まってもおかしくないと見られます。
そして、運賃の改定の履歴です。何年据え置かれているかは、収益改善の余地を測る材料であると同時に、交渉力の指標でもあります。
あわせて、直取引の比率の推移も見られます。数年で上がっているなら、営業の機能があると評価されます。横ばいなら、社長個人に依存した営業しかないと見られることがあります。
だから、比率の推移は記録として残してください。取り組んできた経過が示せることが、数字そのものと同じくらい効きます。
元請の立場も理解しておく
元請も同じ課題を抱えていることが多いと書きました。この点を理解しているかどうかで、交渉の進み方が変わります。
元請が荷主から受け取っている金額が上がらなければ、下に回す分も上がりません。ここを踏まえずに要求だけを重ねると、話が止まります。
だから、元請に対しては、一緒に荷主へ説明する形を提案する余地があります。こちらが用意した原価の資料は、元請が社内や荷主に持っていく材料になります。
そして、元請にとってこちらが必要な相手であることも重要です。時間を守る、急な依頼に応じる、事故を起こさない。この実績があれば、条件の話も聞いてもらえます。
一方で、元請が荷主から収受しているのに下に回していない場合は、話が変わります。この場合は分配の問題であり、取引の公正さに関わる論点になります。事実を確かめたうえで、記録を残しながら申し入れてください。
どちらの場合も、対立の形にしないことです。関係を保ったまま条件を変えるほうが、結果として早く進みます。
まとめ
下請け構造の問題は、運賃の決定権がないことです。まず現在の元請との条件を改善し、並行して着荷主などから直取引を開拓してください。比率が変われば、条件の悪い仕事から減らせます。3〜5年かかる取り組みなので、早く着手するほど効果が出ます。