実運送と利用運送の違い

 実運送利用運送
誰が運ぶか自社の車両とドライバー他の運送事業者
荷主との関係自社が運送を引き受ける自社が運送を引き受け、実行を委託する
必要なもの一般貨物自動車運送事業の許可貨物利用運送事業の登録・許可

利用運送では、荷主に対して責任を負うのは自社です。実際に運ぶのは別の会社でも、荷主から見れば自社が運送人です。

第一種と第二種

制度は大きく二つに分かれます。

  • 第一種貨物利用運送事業:一つの輸送機関を利用する(例:トラックのみ)。登録
  • 第二種貨物利用運送事業:複数の輸送機関を組み合わせ、集荷から配達までを一貫して行う(例:鉄道・海運・航空とトラックの組み合わせ)。許可

中小の運送会社が関わるのは、多くの場合第一種(トラック)です。必要な要件や手続きは管轄の地方運輸局または行政書士に確認してください。

傭車との線引きが分かりにくい

運送業では、自社で運べない荷物を協力会社に依頼することが日常的にあります。これがどこまで「傭車」で、どこから「利用運送」なのか——実務で最も分かりにくい部分です。

一般に、次のような観点で判断されます。

  • 自社が荷主に対して運送を引き受けているか
  • 自社の車両で運ぶことを前提としているか、最初から他社に運ばせる前提か
  • その取引が継続的・恒常的なものか
  • 実運送を伴わない取次だけになっていないか

実運送の許可を持っていれば、付随する範囲の利用は許可の中で扱えるという整理もありますが、規模や態様によって判断が変わります。自社の運用が該当するかどうかは、必ず管轄に確認してください。

登録がないまま行っていた場合

気づかないうちに登録が必要な範囲に入っていた、というケースは実際にあります。次のような状況では確認が必要です。

  • 自社車両をほとんど使わず、協力会社への発注が売上の大半を占めている
  • 自社では扱えない地域・車格の仕事を、継続的に他社に回している
  • 荷主から受注し、全量を他社に流している路線がある

デューデリジェンスで指摘されると、是正が必要な状態として扱われます。法務デューデリジェンスと契約書の棚卸しをご覧ください。

登録を持つことの経営上の意味

  • 自社の車両数に縛られず受注できる:繁忙期や遠隔地の依頼を断らずに済む
  • 荷主との関係を維持できる:断り続けると仕事が離れます
  • ドライバー不足の緩和策になる:人を増やせなくても売上を作れる
  • 収益構造が変わる:車両を持たない分、固定費は軽くなります

一方で、利用運送に依存しすぎると利益率が薄くなります。協力会社への支払いを差し引いた後の利益をきちんと把握してください。

協力会社の管理

利用運送では、実際に運ぶのは他社ですが、荷主に対する責任は自社にあります。次を整えてください。

  • 協力会社の許可の有無を確認する(許可のない事業者への委託は重大なリスクです)
  • 保険の加入状況を確認する
  • 契約書を交わす(責任範囲、支払条件、事故時の扱い)
  • 下請法・物流特殊指定への対応(下請法・物流特殊指定の基本

承継・M&Aでの扱い

株式譲渡なら、会社が変わらないため登録は維持されます。役員変更などに伴う届出は必要です。

事業譲渡・会社分割では、実運送の許可と同様、登録の承継について個別の手続きが必要になります。運送業の許可とあわせて、両方の期間を見込む必要があります。認可にかかる期間の目安をご覧ください。

買い手が確認するのは次です。

  • 登録の有無と範囲
  • 実運送と利用運送の売上比率
  • 協力会社の依存度(特定の1社に偏っていないか)
  • 利用運送部分の利益率

利用運送を持つ会社は、利用運送事業の承継もあわせてご覧ください。

線引きが分かりにくい理由

傭車と利用運送の境目が実務で最も分かりにくいのは、日常の判断が積み重なって形が変わっていくからです。

最初は、自社で運べない一件を協力会社に頼むところから始まります。荷主との関係を保つための例外的な対応です。ところが、それが繰り返されるうちに常態になり、やがてその方面は最初から他社に回す前提になります。

この過程のどこかで、性質が変わっています。ただ、変わった瞬間は誰にも分かりません。日々の判断としては、どれも同じ「頼む」という行為だからです。

だから、年に一度は取引ごとの実態を見返してください。この荷主のこの方面は、自社の車で運んでいるのか、最初から他社に回しているのか。比率が変わっていないか。

見返す習慣がなければ、気づかないまま範囲が広がります。指摘されて初めて知る、という事態を防ぐのは、この点検だけです。

自社の運用を数字で確かめる

確認が必要な状況として挙げた三つは、いずれも数字で見えます。

まず、売上に占める傭車費の比率です。この比率が高いほど、自社で運んでいない部分が大きいということになります。年ごとの推移を見れば、傾向も分かります。

次に、方面や荷主ごとの内訳です。全社では自社の車が主でも、特定の方面だけは全量を他社に流している、ということがあります。この方面別の見方をしないと、実態が見えません。

そして、自社の車両の稼働です。台数に対して実際に動いている割合が低く、その分を他社に頼っているなら、構造として利用が中心になっています。

これらの数字を出したうえで、判断に迷う部分は所管に確認してください。実態を示せれば、判断も具体的になります。

登録を持つことの実利

経営上の意味として挙げた項目のうち、実務で最も効くのは「断らずに済む」という点です。

荷主から依頼を受けたときに、車がない、車格が合わない、その方面には行かない。こうした理由で断り続けると、荷主は他の会社を探します。そして、いったん他社で回り始めれば、戻ってこないことがあります。

断らずに済めば、関係が保たれます。自社で運べる分は自社で、運べない分は他社に依頼する。この形なら、荷主から見れば一貫して対応してもらえることになります。

そして、人を増やせない時期にも売上を作れます。ドライバーの採用が難しい状況では、この意味は小さくありません。

ただし、利益率は薄くなります。他社に払った後にいくら残るのかを、取引ごとに把握してください。件数が増えても利益が伸びていないなら、単価か配分の見直しが要ります。

薄い利益をどう守るか

利用運送に依存しすぎると利益率が薄くなるという点は、経営の課題として残ります。

守る手立てはいくつかあります。ひとつは、自社が果たしている機能を明確にすることです。単に右から左へ流しているだけなら、外される理由が生まれます。方面や品目をまたいで手配できること、急な依頼に応えられること、事故や遅延の処理を引き受けること。これらが機能として認められれば、対価も守れます。

もうひとつは、協力会社への発注の条件を整えることです。同じ仕事を複数の相手に頼めるようにしておけば、条件の交渉ができます。一社にしか頼めない状態だと、相手の条件を受けるしかありません。

そして、荷主との単価を見直すことです。原価が上がっているのに運賃が据え置かれていれば、薄い利益がさらに削られます。手配にかかる手間も原価に含めて、根拠を示してください。

協力会社の確認を手順にする

許可のない事業者への委託は重大なリスクだという点は、強調に値します。名義貸しに近い状態として扱われかねません。

だから、委託を始める前に許可や届出の状況を確認し、控えを保管する運用にしてください。手順として決めてしまえば、忘れることがなくなります。

あわせて確認したいのは、任意保険の加入状況、車両の情報、そして事故が起きたときの連絡先です。これらを一枚の様式にまとめ、新しい相手と取引を始めるときに必ず記入してもらう形にします。

既に取引している相手についても、この機会に一斉に確認してください。長年の付き合いほど、書類を交わさないまま続いていることがあります。

そして、年に一度は更新してください。許可の状況も保険の内容も変わります。確認した日付を記録に残しておけば、いつの情報かが分かります。

責任は自社にあるという前提

実際に運ぶのは他社でも、荷主に対して責任を負うのは自社です。この構造が、契約の設計に効いてきます。

荷主との契約でこちらが負う責任と、協力会社との契約でこちらが求められる責任。この二つがずれていると、差の部分が自社の負担になります。

たとえば、荷主に対しては損害の全額を負う内容になっているのに、協力会社との間では上限が設けられている。この場合、上限を超えた部分は自社が被ります。

だから、両方の契約を並べて見てください。責任の範囲、上限、免責となる場合、申し出の期限。対応していない部分があれば、どちらかを調整するか、保険で埋める必要があります。

保険についても、利用運送の部分が対象になっているかを確認してください。自社の車両に関する保険だけでは、他社に運ばせた荷物の損害が対象外になることがあります。

承継で見られる比率

買い手が確認する項目のうち、実運送と利用運送の売上比率は、会社の性格を示す指標になります。

実運送が中心なら、車両と人が価値の中心です。買い手は、その車両が動くか、人が残るかを見ます。

利用運送が中心なら、荷主との関係と協力会社のネットワーク、そして手配のノウハウが価値になります。ただ、これらは書類に残りにくく、社長個人に紐づいていることが多い。だから、引き継げる形になっているかが問われます。

協力会社の依存度も同じ観点です。特定の一社に発注が集中していれば、その会社が受けられなくなった時点で仕事が止まります。

そして、利用運送部分の利益率です。件数だけあって利益が残っていなければ、規模の割に価値は低く見られます。

だから、準備としては、比率と内訳を出せるようにしておくことです。合算した数字だけでは、何で稼いでいる会社なのかが伝わりません。

登録が要る範囲に入っていた場合

気づかないうちに範囲に入っていたと分かったとき、どう動くかを整理しておきます。

まず、所管に相談してください。自己判断で「これからは減らす」と決めても、過去の扱いが残ります。実態を示して、どう処理すべきかを聞くのが確実です。

そのうえで、登録を取るのか、運用を変えるのかを決めます。登録を取れば、範囲を気にせず受注できます。運用を変えるなら、自社の車で運ぶ比率を上げるか、その方面から撤退するかになります。

登録には要件と手続きがあり、期間もかかります。だから、承継の話が具体化してから動くのでは間に合いません。早く確認するほど、選べる手が多くなります。

そして、この論点は運送の許可とは別の制度です。運送側の手続きを進めているうちに、利用運送側が意識から外れることがあります。保有している許認可の一覧に含めて管理してください。

下請の関係としての整理も要る

協力会社に仕事を出す立場になれば、下請に関する制度への対応も必要になります。

書面で条件を示すこと、支払いの期日を守ること、不当に単価を下げないこと。これらは、取引の規模や当事者の関係によって適用の有無が変わります。自社が該当するかを確認してください。

実務としては、発注のたびに条件を書面またはデータで残す運用にするのが基本です。口頭で頼んで後から金額を決める形は、揉め事の元になります。

そして、支払いの条件を一覧にしてください。協力会社ごとに、いつ締めて、いつ払うのか。長年の慣行で相手ごとにばらばらになっていることがあります。

この整理は、承継の場面でも見られます。協力会社との関係が書面で説明できる会社は、引き継ぎやすい会社として扱われます。

まとめ

貨物利用運送事業は実運送とは別の制度で、第一種は登録、第二種は許可が必要です。傭車との線引きは実務で分かりにくく、知らないうちに登録が必要な範囲に入っていることがあります。自社の運用が該当するか、管轄に確認してください。協力会社の許可と保険の確認は、荷主への責任を果たすうえで不可欠です。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。許認可の具体的な取扱い・必要書類・審査期間は、法令の改正や管轄行政庁の運用によって異なります。実際の手続きにあたっては、必ず管轄の運輸支局等および専門家にご確認ください。