まず既存の接点を洗い出す

新規開拓というと、知らない会社を訪問することを想像しがちです。しかし、成功率が高いのは既にある接点です。

1. 着荷主

荷物を届けている先です。その会社も、どこかへ荷物を出しています

  • 毎日届けている=顔が知られている
  • 自社の仕事ぶりを見てもらっている
  • ドライバーが担当者と話せる

最も有力な開拓先です。

2. 既存荷主の別部門・別拠点

本社と取引しているが支店とはしていない、A事業部とはしているがB事業部とはしていない。紹介してもらえる可能性があります。

3. 元請の荷主ではない先

元請経由で運んでいる荷主に直接アプローチするのは避けてください。 信義に反するだけでなく、既存の仕事を失います。あくまで別の接点からです。

4. 協力会社・同業からの紹介

自社では受けられない仕事を回してもらう関係から、直接の取引に発展することがあります。

5. 取引先・金融機関からの紹介

整備工場、燃料商社、保険代理店、銀行。紹介を依頼していない会社が多くあります。頼めば動いてくれることがあります。

ドライバーが最大の情報源

ドライバーは毎日、荷主の現場にいます。

  • 「あそこは他社の車が来ているが、遅れが多いらしい」
  • 「担当者が運送会社を探していると言っていた」
  • 「近くに新しい倉庫ができた」

この情報が会社に上がってくる仕組みを作ってください。

  • 点呼のときに聞く
  • 報告した情報が成約したら報奨する
  • 「営業してこい」ではなく「気づいたことを教えてほしい」と伝える

提案の作り方

「仕事をください」では動きません。相手の困りごとに応える形にしてください。

荷主が困っていること

  • 頼んでいる運送会社が車を出せない
  • 時間どおりに来ない
  • 荷扱いが雑
  • 連絡が取れない・遅い
  • 値上げを求められた
  • ドライバー不足で今後が不安

提案に入れる内容

  • 自社の体制(車両台数、車格、ドライバー数、営業所)
  • 対応できるエリアと時間帯
  • 安全への取り組み(Gマーク、事故率、教育)
  • 既存の実績(業種、規模。社名は伏せて可)
  • 連絡体制(誰が窓口か、緊急時の対応)
  • 料金の考え方

安さではなく、確実性と対応力で訴求してください。安さで取った仕事は、安さで失います。

断られる理由と対策

理由対策
今の業者で足りているスポット・緊急時の受け皿として登録してもらう
実績がない業種類似の実績を示す。小口から始める
エリアが合わない協力会社との連携で対応できることを示す
価格が高い総コスト(欠品、遅延、事故)で比較してもらう
会社の規模安定性を示す(財務、体制、継続年数)

「今すぐ」でなくても、登録しておいてもらうことに意味があります。既存業者が対応できない場面で、声がかかります。

営業の体制

専任の営業を置ける会社は限られます。次の形が現実的です。

  • 社長が担う:ただし承継の障害になります
  • 配車担当が兼任する:荷主の事情を知っている強み
  • 幹部が分担する

誰が担うにせよ、「いつ、誰が、どこに行くか」を計画にしてください。日常業務に流されて、営業が後回しになるのが最大の障害です。

社長だけが営業している状態は、承継とM&Aの両方で減点要因です。担当者を同行させるところから始めてください。管理職の育成をご覧ください。

受注前の確認

取れれば何でもよいわけではありません。

  • 必要単価を満たすか(目標利益から逆算した値決め
  • 拘束時間が規制に収まるか
  • 既存の運行と組み合わせられるか
  • 与信は問題ないか(支払能力の確認

直取引が増えると請求先も増えます。与信管理と入金管理の体制を先に整えてください。事務・バックオフィスの体制をご覧ください。

M&Aでの意味

直取引比率と、新規開拓の実績は、買い手が重視する項目です。

  • 営業機能があるか
  • 社長以外も開拓できるか
  • 過去3年で新規荷主が増えているか

直取引比率を上げる意味荷主分散が価値に効く理由をご覧ください。

着荷主に声をかけるときの順序

着荷主が最も有力な開拓先だと書きました。ただ、毎日行っているからこそ、切り出し方を誤ると届けている仕事のほうに影響します。

まず確認したいのが、その荷物を誰から請けているかです。元請を経由している場合、その着先に営業をかけるのは避けてください。元請の顧客を奪う形になり、既存の仕事を失います。

自社が直接請けている荷主の届け先であれば、話は別です。その会社が自社で出している荷物について、こちらから声をかけることに問題はありません。

切り出す相手は、荷受けの担当者ではなく、その会社で出荷を管理している部署です。荷受けの現場に営業をかけても、権限がありません。ただし、現場の担当者に「出荷のご担当はどなたですか」と聞くところから始められます。

そして、いきなり提案を持ち込まないでください。まず、どんな荷物をどこへ出しているかを聞く。話を聞く段階と、提案する段階を分けたほうが、結果的に早く進みます。

断られた場合も、日々の納品には影響させないでください。ここで態度が変わると、既存の取引にも響きます。

ドライバーからの情報を集める仕組み

情報が会社に上がってくる仕組みを作ってくださいと書きました。実際に回すための工夫を挙げます。

まず、聞き方を変えてください。「何か営業のネタはないか」では、何も出てきません。「最近、現場で変わったことはありましたか」と聞くと、話が出ます。

次に、聞くタイミングを決めてください。点呼の場が最も自然です。毎日の会話の中に一つ質問を足すだけなら、負担になりません。

そして、出てきた話を記録してください。その場で聞いて終わりだと、誰も追いかけません。簡単な様式でよいので、いつ、誰が、どこで、何を聞いたかを残します。

記録が溜まったら、月に一度見返してください。単発では意味のない話も、複数が重なると意味を持ちます。同じ会社について何度も話が出ているなら、動く価値があります。

そして、動いた結果を本人に返してください。「あの話、行ってみました」と伝えるだけで、次の情報が上がってきます。何も返さないと、報告の習慣が消えます。

提案書を一枚にまとめる

提案に入れる内容を挙げましたが、全部を並べると読まれません。一枚に収める形を考えてください。

上半分に置くのは、自社が何をできるかです。車両の構成、対応できるエリアと時間帯、体制。相手が最初に知りたいのはここです。

下半分に、安心の材料を置きます。安全への取り組み、継続してきた年数、類似の実績。数字があるものは数字で書いてください。

料金については、この段階で細かく書かないでください。条件が分からないまま金額を出すと、その数字だけで判断されます。「区間と条件をうかがったうえで、お見積もりします」で十分です。

そして、連絡先は目立つ場所に大きく書いてください。誰が窓口で、どうすればつながるか。急ぎのときに連絡が取れることは、それ自体が売りになります。

この一枚は、一度作れば使い回せます。相手ごとに変えるのは、実績の欄だけで足ります。

登録だけしてもらうという狙い方

今すぐでなくても登録しておいてもらうことに意味があると書きました。この狙い方を、もう少し具体的にします。

荷主の側では、既存の業者が対応できない場面が定期的に起きます。繁忙期、急な増便、事故や故障。そのときに思い出してもらえるかどうかが、すべてです。

だから、初回の訪問では受注を狙わないでください。狙うのは、担当者の記憶に残ることと、連絡先が手元に残ることです。

そのうえで、間隔を空けて接触を続けてください。年に二、三回で構いません。近くを通ったときに顔を出す、季節の挨拶を送る。長く続けるほど、思い出される確率が上がります。

そして、実際に急な依頼が来たときは、必ず受けてください。ここで断ると、次はありません。受けられる体制がないなら、協力会社と組んででも対応する価値があります。

一度うまく対応できれば、そこから継続の取引に変わることがあります。急な依頼こそ、実力を見てもらえる場面です。

営業を計画に落とす

いつ誰がどこに行くかを計画にしてくださいと書きました。この計画が回らない理由と、対処を整理します。

回らない最大の理由は、日常の業務が優先されることです。車が足りない、事故が起きた、荷主から連絡が来た。目の前の対応に追われると、営業は後回しになります。

対策は、時間を先に確保することです。週に半日、あるいは月に二日。この時間は動かさないと決めてください。予定に入れていない時間は、必ず埋まります。

もう一つの理由が、目標が曖昧なことです。「新規を増やす」では、何をすればよいか分かりません。訪問の件数、資料を渡した件数、見積もりを出した件数。行動の数で目標を置いてください。結果は運に左右されますが、行動は自分で決められます。

そして、行った先を一覧に残してください。いつ、誰に会い、何を話し、次にいつ連絡するか。この記録がないと、間隔が空きすぎたり、同じ話を繰り返したりします。

記録があると、担当が代わっても続けられます。社長だけが持っている情報を、会社の記録に移すことになります。

受注前の確認をどう回すか

取れれば何でもよいわけではないと書きました。ただ、話が来たときに一件ずつ確認していると、返答が遅くなります。手順を決めておいてください。

まず、その場で確認する項目を絞ります。区間、頻度、必要な車格、時刻の指定、荷物の性質。この五つが分かれば、おおよその判断ができます。

次に、社内で確認する項目です。必要な単価を満たすか、拘束時間が収まるか、既存の運行と組み合わせられるか。これらは配車と原価の担当が見ます。

そして、相手の支払いに関する確認です。新しい取引先の場合、ここを飛ばさないでください。運んだ後に入金がないと、損失がそのまま残ります。会社の情報を調べる、取引の条件を書面にする、初回は条件を厳しめにする。段階を踏んでください。

返答の期限も決めておいてください。判断に時間がかかると、その間に他社に決まります。二日以内に一次回答をする、といった目安を置くと、社内も動きます。

断る場合も、理由を添えて丁寧に返してください。今回は条件が合わなくても、次の機会があります。

新規が増えたときの体制

直取引が増えると請求先も増えると書きました。開拓が進んだ後に困る場面を、先に想定しておいてください。

まず、請求と入金の管理です。取引先が増えるほど、締めの日も支払いの日もばらばらになります。誰がいつ請求し、入金を確認するか。ここが回らないと、資金の状況が見えなくなります。

次に、窓口の対応です。荷主が増えれば、問い合わせも増えます。配車の担当が全部を受けていると、運行の管理が手薄になります。誰が受けるかを決めてください。

そして、条件の管理です。取引先ごとに運賃も作業の範囲も違います。書面がないまま増えると、数年後に誰も条件を説明できなくなります。新しい取引を始めるときに、条件を一枚にまとめる運用にしてください。

体制が追いつかないまま件数だけ増えると、既存の取引の品質が落ちます。開拓のペースは、受けられる体制と合わせてください。

そのうえで、体制を整えること自体が承継の準備になります。社長が全部を把握している状態から、記録で回る状態に変わるからです。

紹介を頼むときの伝え方

取引先や金融機関に紹介を依頼していない会社が多いと書きました。頼めば動くことがあるのに、頼み方が分からないという場面があります。

大事なのは、条件を具体的に伝えることです。「どこか荷主を紹介してください」では、相手も動けません。どの方面の、どんな荷物を、どのくらいの頻度で運びたいのか。具体的なほど、思い当たる先が出てきます。

あわせて、自社が何をできるかを一枚渡してください。相手が誰かに話すときに、その紙があれば伝えられます。口頭だけでは、正確には伝わりません。

そして、紹介してもらった後の報告を欠かさないでください。話がまとまってもまとまらなくても、結果を伝える。これがあるかどうかで、次に紹介してもらえるかが決まります。

頼む相手は、日常的に多くの会社と接している立場の人です。整備工場、燃料の商社、保険の代理店、金融機関。いずれも、地域の会社の状況をよく知っています。

そして、こちらからも紹介できる場面があれば返してください。一方的に頼むだけの関係は、続きません。

まとめ

新規開拓は、着荷主・既存荷主の別部門・紹介という既存の接点から始めてください。ドライバーが持つ現場情報を吸い上げる仕組みが有効です。提案は安さではなく確実性で。営業を計画に落とし、社長以外も担える体制にすることが、承継の準備にもなります。