倉庫収益の構成

  • 保管料:預かることへの対価
  • 入出庫料(荷役料):入れる・出す作業
  • 附帯作業料:検品、仕分け、ラベル貼り、流通加工、梱包
  • システム利用料:在庫情報の提供など
  • 配送料:輸送とセットの場合

保管料の比重が高い契約ほど、収益は安定しますが単価は低くなります。 作業を伴う契約のほうが単価は上がりますが、人手が必要になります。

保管料の計算方式

方式特徴
坪貸し(面積単位)荷量に関係なく固定。収益が安定する
個建て(パレット・ケース単位)荷量に応じる。変動する
三期制期首在庫+入庫数で計算する方式

坪貸しは収益が安定する一方、荷量が増えても収入は増えません。 逆に個建ては、荷量が減ると収入も減ります。

どちらが有利かは、その荷主の荷量が増えるか減るかによります。契約時に見通しを確認してください。

坪あたり収益を見る

坪あたり月間収益 = 月間の倉庫売上 ÷ 使用坪数

この数字を、荷主別・エリア別に出してください。次が見えます。

  • どの荷主が効率的か
  • 賃借している場合、賃料を上回っているか
  • 空きスペースの機会損失

自社所有の倉庫でも、賃貸に出した場合の相場と比較すると、事業としての採算が見えます。

無償の作業を洗い出す

輸送と同じく、倉庫でも無償作業が積み重なります。

  • 棚卸しの立ち会い
  • 緊急の出荷対応
  • 返品の受け入れと検品
  • ラベルの貼り替え
  • 資材の管理(パレット、かご車)
  • 在庫データの作成・報告
  • 不良品の抜き取り

「昔から頼まれてやっている」作業が必ずあります。1か月、実際にかかった時間を記録してください。待機料・附帯作業料の収受と同じ進め方です。

作業料の設定

  • 時間単位:作業時間×単価
  • 個数単位:1ケース◯円、1点◯円
  • 月額固定:定型的な作業

単価は、人件費から逆算してください。作業者の時給、作業時間、間接費、利益を積み上げます。

稼働率の管理

倉庫の空きスペースは、そのまま機会損失です。

  • 月別の稼働率(使用坪数 ÷ 総坪数)
  • 季節変動
  • 空きが出る時期

季節変動の逆になる荷主を組み合わせられると、稼働が平準化します。営業の方針にしてください。

コスト側の管理

  • 人件費:最大の費目。作業の標準化と人員配置
  • 賃料(賃借の場合)
  • 光熱費:特に冷蔵・冷凍は大きい
  • フォークリフト:リース料、燃料、整備(フォークリフトの更新計画
  • 資材:パレット、ラップ、梱包材
  • システム:WMSの費用(WMS導入の効果と落とし穴

輸送とのセットで考える

倉庫と配送をセットで受託すると、次の利点があります。

  • 荷主にとってワンストップになる
  • 切り替えられにくい(関係が深くなる)
  • 車両の稼働を計画しやすい
  • 単価が上がる

これは3PLへの転換の方向でもあります。

契約の整備

倉庫の契約では、次を明確にしてください。

  • 保管料の計算方法と、算定の基準日
  • 作業料の範囲と単価
  • 範囲外の作業が発生した場合の扱い
  • 在庫差異があった場合の責任
  • 火災・水害時の責任と保険
  • 契約期間と解約予告

荷主との契約書を整える倉庫業の登録と承継をご覧ください。

M&Aでの評価

倉庫事業は収益の安定性で評価されます。次を整理しておいてください。

  • 倉庫別・荷主別の売上と利益
  • 坪あたり収益
  • 稼働率の推移
  • 契約期間と更新の状況
  • 作業の内容と料金の対応関係

輸送と倉庫を分けて数字が出せることが前提です。直近3期の数字をどう見せるかをご覧ください。

方式を選ぶときの判断

どちらが有利かはその荷主の荷量が増えるか減るかによると書きました。判断の材料をもう少し具体的にします。

まず、その荷主の事業がどう動いているかを聞いてください。取扱う品目が増えるのか、店舗や取引先が増えるのか。荷量の見通しは、荷主自身が持っています。

次に、季節の波を確認してください。年間を通じて平準なのか、特定の時期に膨らむのか。波が大きい荷主で個建てにすると、閑散期の収入が落ちます。

そして、こちらの空きの状況も見てください。倉庫に余裕があるなら、荷量が増えたときに収入も増える方式のほうが有利です。逆に、埋まっている状態なら、面積で確保する方式のほうが読めます。

判断に迷う場合は、下限を設ける形も検討してください。荷量に応じて変動するが、一定額を下回らない。この形なら、双方のリスクが小さくなります。

そして、方式は途中で変えられます。契約の更新時に見直す前提で始めれば、最初の選択を過度に恐れる必要はありません。ただし、変える条件は契約に書いておいてください。

坪あたり収益を出した後にすること

荷主別・エリア別に坪あたりの収益を出してくださいと書きました。出した後の使い方を示します。

まず、賃借している倉庫については、坪あたりの賃料と比べてください。賃料を下回っている荷主があるなら、その区画は赤字です。作業の料金で補えているかを確認してください。

次に、荷主間で比べてください。同じ面積を使っていても、収益に差があります。差の理由は、方式の違い、作業の量、荷の回転の速さ。理由が分かれば、条件を見直す材料になります。

そして、空いている面積の機会損失を計算してください。使えていない坪数に、平均の坪あたり収益を掛ければ、逃している金額が出ます。この数字が、営業の動機になります。

自社で所有している倉庫についても、同じように見てください。賃料の支払いがないぶん収益がよく見えますが、その土地と建物を他に使った場合と比べる視点が必要です。

この集計は月次で回してください。荷量が動けば、坪あたりの数字も動きます。年に一度では、判断に使えません。

無償の作業を料金にするまで

一か月実際にかかった時間を記録してくださいと書きました。記録した後の進め方を補います。

まず、作業ごとに時間を集計してください。棚卸しの立ち会いに何時間、返品の検品に何時間。作業の種類ごとに分けることで、どれを料金化すべきかが見えます。

次に、優先順位を付けてください。時間が長く、頻度が高く、そして相手にとっても必要性が明確な作業から始めます。すべてを一度に料金化しようとすると、話が大きくなり過ぎます。

提示するときは、作業の内容と時間を示したうえで、単価を出してください。「この作業に月間これだけの時間がかかっています」という事実から入れば、話が交渉になります。

そして、料金化が難しい作業については、範囲を減らす提案に切り替えてください。相手側で行ってもらう、頻度を下げる、様式を簡素にする。費用がかからない案のほうが通ることがあります。

合意できたら、契約の別紙として作業と料金の一覧を作ってください。本文に書き込むより、追加や変更がしやすくなります。

稼働の波をどうならすか

季節変動の逆になる荷主を組み合わせられると稼働が平準化すると書きました。実際に営業の方針にするには、準備が要ります。

まず、自社の稼働の波を月ごとに把握してください。どの月に空きが出るかが分かって初めて、どんな荷主を探すべきかが決まります。

次に、その時期に荷量が増える業種を考えてください。年度末に動くもの、夏に動くもの、年末に集中するもの。既存の取引先の傾向からも推測できます。

そして、短期の預かりも検討してください。年間を通じた契約でなくても、特定の時期だけ場所を貸す形なら、成立しやすくなります。ただし、入出庫の作業が集中するため、人の手配が伴います。

空きが埋まらない期間が続く場合は、面積そのものを見直す判断もあります。賃借しているなら、契約の更新時に減らせないかを検討してください。

そして、稼働率の推移は記録して残してください。承継の場面でも、事業の安定性を示す材料になります。

在庫差異が起きたときの備え

契約で在庫差異があった場合の責任を明確にすると書きました。ここは実際に起きたときに揉めやすい部分です。

まず、差異が出る原因を分けて考えてください。入庫の時点で数が違っていた、出庫の際に取り違えた、破損して処分した、記録の入力を誤った。原因によって、責任の所在が変わります。

だから、記録の精度を上げることが最大の備えになります。入庫と出庫のたびに数量を確認し、記録に残す。この当たり前の運用が、後から自社を守ります。

次に、定期的に照合してください。月に一度、あるいは荷主の棚卸しに合わせて、実際の在庫と記録を突き合わせます。差異は早く見つけるほど、原因を追いやすくなります。

そして、差異が出たときの手順を決めておいてください。誰に報告し、どう調査し、どこまで補償するか。契約に一定の許容範囲を定めている場合もあります。

あわせて、保険の適用範囲も確認してください。破損や紛失について、どこまで補償されるか。荷主に対して負っている責任と、保険で埋まる範囲がずれていないかを見ておいてください。

人件費をどう管理するか

人件費が最大の費目だと書きました。倉庫の採算は、ここをどう管理するかで決まります。

まず、作業ごとの標準的な時間を把握してください。一ケースの検品に何分、一パレットの積み替えに何分。感覚ではなく、測って決めます。この数字がなければ、料金も人員配置も決められません。

次に、日ごと時間ごとの作業量の波を見てください。入出庫が特定の時間に集中しているなら、その時間に人を厚くする必要があります。一日を通じて同じ人数を置くと、余る時間が出ます。

そして、波が大きい場合は、常時雇用と短時間の組み合わせを検討してください。ただし、作業に習熟が必要な部分は、人が入れ替わると質が落ちます。どの作業を誰が担うかを整理してください。

作業の標準化も効きます。手順が人によって違うと、時間の見積もりが立ちません。手順を決めて文書にすることが、結果として人件費の管理につながります。

そして、実際にかかった時間を記録してください。標準との差が見えると、どこで時間を失っているかが分かります。

輸送とセットにするときの注意

倉庫と配送をセットで受託する利点を挙げました。ただ、注意すべき点もあります。

まず、数字を分けて把握することです。セットで受けていると、全体の収支しか見えなくなりがちです。倉庫が赤字で輸送が黒字、あるいはその逆という状態が隠れます。必ず分けて集計してください。

次に、契約が一体になっている場合、片方の条件だけを見直すのが難しくなります。倉庫の作業が増えたのに、運賃の話として扱われて進まない。こうした事態を避けるため、契約の中でも項目を分けておいてください。

そして、依存が深まる点です。切り替えられにくいことは強みですが、その荷主の事情に大きく左右されます。倉庫の面積と人を専用に抱えている場合、失ったときの影響は輸送だけの場合より大きくなります。

だから、契約の期間と解約の予告について、通常の運送契約より慎重に定めてください。設備と人を抱える前提であることを、条件に反映する必要があります。

そのうえで、セットで受けられる会社は限られます。この点は、他社との差になります。

作業料の単価を決める手順

単価は人件費から逆算してくださいと書きました。積み上げの手順を具体的にします。

まず、作業に当たる人の時間あたりの費用を出します。賃金だけでなく、社会保険料の会社負担分を含めてください。

次に、その作業にかかる時間を掛けます。標準的な時間が測れていれば、そのまま使えます。測れていなければ、まず測ることから始めてください。

そこに、設備と場所の費用を乗せます。フォークリフト、資材、その作業のために使う面積。作業の内容によって、比重が変わります。

さらに、間接の費用を乗せます。管理する人の時間、事務の処理、システムの費用。全体の費用を作業量で割った額を配賦する形で構いません。

最後に、利益を乗せた額が単価になります。ここまで計算しておけば、相手から根拠を問われても答えられます。

そして、単価は年に一度見直してください。賃金も資材も変わります。据え置いたままだと、いつのまにか採算が合わなくなります。

まとめ

保管料だけでは利益が出にくく、附帯作業の料金化が収益を決めます。無償で行っている作業を1か月記録し、人件費から逆算した単価を設定してください。坪あたり収益を荷主別に出すと、効率が見えます。輸送とのセット受託は、収益と関係の両方を強くします。