事務が担っている業務

領域主な業務
売上・請求運賃の集計、請求書の作成・送付、入金の消込、督促
支払い傭車費、燃料、リース、経費の支払い
給与労働時間の集計、給与計算、明細の作成、社会保険
労務入退社の手続き、健診の手配、36協定などの期限管理
許認可届出、選任者の研修管理、帳票の保存
車両車検・保険の管理、事故の保険対応、リース契約
経理証憑の整理、月次の資料、税理士とのやりとり
その他電話対応、来客、採用の窓口

会社を回すために必要なことのほとんどが、ここに集まっています。

一人事務のリスク

  • 休めない:給与計算や請求の時期は特に
  • 辞めたら止まる:引き継ぎ資料がないことが多い
  • ミスに気づけない:確認する人がいない
  • 不正のリスク:チェック機能が働かない
  • 承継できない:業務の全体像が本人にしか分からない

4番目は言いにくい話ですが、現金・振込・請求をすべて一人が扱う状態は、その人を守る意味でも望ましくありません。

まずやること:業務の棚卸し

大がかりな改革の前に、何をやっているかを書き出すところから始めてください。

  • 業務名
  • いつやるか(毎日、毎月◯日、年◯回)
  • 誰に対して/どこに提出するか
  • 使っているシステム・様式
  • 所要時間

1枚の表にするだけで、期限のある業務その人しかできない業務が見えてきます。

標準化する

  1. 手順書を作る:月次の作業を、順序と画面の操作まで書く
  2. 年間カレンダーを作る:36協定、健診、選任者研修、車検、保険更新、決算
  3. 様式を固定する:その都度作らない
  4. 保存場所を決める:誰でも探せるように

手順書は完璧でなくて構いません。「これを見れば7割はできる」水準で十分です。

チェック機能を作る

  • 振込の承認は別の人が行う
  • 請求の合計を社長または別の担当が確認する
  • 給与計算の結果を、前月比で確認する
  • 入金の消込状況を月次で共有する

小規模でも、二人の目を通す仕組みは作れます。

システム化を進める

  • 運送管理システム:配車から請求までつなげる
  • 給与計算ソフト:手計算をやめる
  • クラウド会計:税理士との連携が楽になる
  • 電子帳簿保存への対応:要件は変わることがあるため最新の情報を確認

導入時は負担が増えますが、属人化の解消と引き継ぎのしやすさという効果は大きいものです。

デジタコと連動させると、労働時間の集計から給与計算までがつながります。デジタコを労務管理にどう使うかをご覧ください。

人を増やせない場合

小規模な会社では、事務を二人にする余裕がないこともあります。その場合でも次はできます。

  • 手順書を作る:これだけでも引き継ぎ可能性が大きく変わります
  • 社長が一部を把握する:ネットバンキング、主要な期限
  • 外部に一部を委託する:給与計算は社労士、記帳は税理士
  • 短時間のパートを併用する:単純作業を切り出す

承継・M&Aでの論点

買い手が確認するのは次です。

  • 事務が何人体制か
  • その人が辞めたら何が止まるか
  • 手順書・マニュアルがあるか
  • システムを使っているか、手作業か
  • 請求・入金の管理が正確か
  • 労務・許認可の期限管理ができているか

事務担当が社長の配偶者や親族というケースは運送業に多くあります。この場合、M&A後にその人が退くことがほぼ前提になるため、買い手は「誰が代わるのか」を必ず問います

該当する場合は、承継の準備として業務の文書化を最優先してください。公私混同の解消が最優先である理由企業価値を高める取り組みをご覧ください。

棚卸しの表をどう作るか

一枚の表にするだけで期限のある業務とその人しかできない業務が見えてくると書きました。作り方を具体的にします。

まず、本人に書いてもらってください。外から見ていても、実際に何をやっているかは分かりません。ただし、書く時間を確保してあげてください。通常の業務の合間では進みません。

そして、時期の欄を必ず入れてください。毎日、毎月の何日、年に何回。この情報があると、月ごとの負担の波が見えます。

所要時間も入れてください。厳密でなくて構いません。おおよそ何時間か。合計すると、その人の一か月がどう使われているかが分かります。

そして、その人しかできない業務に印を付けてください。誰も代われない業務がどれだけあるかが、リスクの大きさになります。

この表は、承継の場面でもそのまま使えます。買い手が最初に知りたいのが、この人が抜けたら何が止まるかだからです。

手順書をどこから書くか

これを見れば七割はできる水準で十分だと書きました。書き始める順序を示します。

まず、月次で必ず発生する業務から書いてください。給与の計算、請求の作成、支払いの処理。頻度が高く、止まると影響が大きい業務です。

書き方は、順序に沿って並べるだけで足ります。何日に何をして、どの画面でどう操作するか。画面の写真を貼ると、格段に分かりやすくなります。

そして、判断が必要な場面も書いてください。この場合はこうする、という分岐。ここが書かれていないと、その人にしかできない状態が残ります。

次に、年に数回の業務を書いてください。頻度が低いものほど、忘れられます。書いておけば、次の年に思い出せます。

そして、書いた手順書を、別の人が実際にやってみてください。読んでできなければ、書き足りない部分があります。この確認をしないと、書いただけで終わります。

年間カレンダーに載せるもの

年間カレンダーを作ると書きました。載せるべき項目を整理します。

まず、労務に関するものです。協定の届出、健康診断、選任者の研修、年度の手続き。期限があり、漏らせないものです。

次に、許認可に関するものです。届出の期限、選任の変更、報告の時期。ここが漏れると、指摘の対象になります。

そして、車両に関するものです。車検、保険の更新、リースの満了。台数が多いほど、管理が必要になります。

あわせて、経理に関するものも入れてください。決算、申告、月次の締め。税理士とのやり取りの時期も含めます。

これらを一枚に集めると、月ごとの負担が見えます。特定の月に集中しているなら、可能な範囲で分散させてください。

そして、このカレンダーは共有してください。事務の担当だけが持っていると、その人が休んだときに誰も気づけません。

二人の目を通す仕組み

小規模でも二人の目を通す仕組みは作れると書きました。具体的な形を示します。

まず、振込の承認を分けてください。作成する人と、実行する人を別にする。この一点だけでも、大きく変わります。

そして、請求の合計を別の人が確認してください。金額の大きなずれは、合計を見れば気づけます。細かく見る必要はありません。

給与についても、前月との比較を別の人が見てください。大きく変わっている人がいれば、理由を確認する。誤りに気づく機会になります。

入金の状況も、月次で共有してください。未入金が放置されていないか。ここは資金繰りにも直結します。

これらは、社長が担っても構いません。専任の人を増やす必要はありません。確認する目が二つあることが目的です。

そして、この仕組みは担当者を守るためでもあります。一人で全部を扱う状態は、疑いを持たれたときに証明できません。

外部に委託する範囲を決める

給与計算は社労士、記帳は税理士という形に触れました。委託の範囲を決める考え方を示します。

まず、委託しやすいのは、専門的な知識が要り、頻度が決まっている業務です。給与の計算、記帳、社会保険の手続き。これらは外に出しやすい部分です。

一方、社内でしかできない業務もあります。労働時間の集計、運行の実績の把握、荷主との請求のやり取り。実態を知らなければできません。

だから、境目を明確にしてください。どこまでを社内で用意し、どこから外に渡すか。この受け渡しの手順が決まっていないと、かえって手間が増えます。

そして、費用と時間を比べてください。委託には費用がかかりますが、社内の時間が空きます。空いた時間で何ができるかも含めて判断してください。

あわせて、委託しても内容を理解しておく必要があります。全部を任せて中身が分からない状態だと、誤りに気づけません。

システムを入れるときの順序

導入時は負担が増えますと書きました。進め方を具体的にします。

まず、何を解決したいのかを決めてください。手作業を減らしたいのか、二重の入力をやめたいのか、記録を残したいのか。目的が決まっていないと、選ぶ基準もありません。

そして、一度にすべてを入れ替えないでください。給与の計算から、あるいは請求から。一つずつ移行するほうが、失敗しても戻せます。

移行の時期は、繁忙期を避けてください。決算の時期、年度の切り替え、繁忙期。これらと重なると、通常の業務も回らなくなります。

そして、しばらくは並行して運用してください。新しい仕組みで出た数字と、これまでの方法で出た数字を突き合わせる。ずれがあれば、設定に問題があります。

あわせて、手順書を書き直してください。システムが変われば、手順も変わります。古い手順書のままだと、引き継ぎで混乱します。

親族が担っている場合

M&A後にその人が退くことがほぼ前提になると書きました。この場合の準備を具体的にします。

まず、業務の文書化を最優先にしてください。他のどの取り組みより先です。買い手が最も懸念する点だからです。

そして、可能なら別の人に一部を移してください。全部を移す必要はありません。誰かが一部を担っている状態になれば、引き継ぎの見通しが立ちます。

あわせて、公私の区分も確認してください。会社の口座と個人の資金、経費の扱い。ここが曖昧だと、別の論点になります。

そして、その人の処遇についても整理してください。実際の業務に対して適正な水準か。過大でも過少でも、説明が必要になります。

準備には時間がかかります。承継を考え始めた時点で着手してください。話が動いてから始めるのでは、間に合いません。

休める体制を作る

休めないという問題を最初に挙げました。この解消を具体的にします。

まず、休めない時期を特定してください。給与の計算、請求の作成、支払いの処理。月のどの時期が動かせないか。

そのうえで、その時期の作業を誰かが代われる形にしてください。全部でなくて構いません。一部だけでも移せれば、休める日が作れます。

そして、実際に休んでもらってください。体制を作っても、休まなければ確認できません。試すことで、足りない部分が見えます。

休んだ日に問題が起きたら、そこが移せていない箇所です。手順書に書き足し、次に備えてください。

そして、これを繰り返してください。一度で完成することはありません。年に数回試すうちに、体制が整っていきます。

休めるようになることは、本人にとっても会社にとっても利益です。急な病気や事情にも対応できるようになります。

期限管理を仕組みにする

労務・許認可の期限管理ができているかが問われると書きました。仕組みにする方法を示します。

まず、期限のあるものをすべて一覧にしてください。年間カレンダーに載せる項目です。ここが出発点になります。

そして、動き出す時期を決めてください。期限の当月に気づいても、間に合わないものがあります。二か月前、三か月前。項目ごとに目安を決めてください。

あわせて、確認する日を固定してください。月の初めに、その月と翌月の予定を確認する。この時間を毎月取れば、漏れません。

そして、対応が済んだら記録してください。いつ、何を、どう処理したか。次の年の参考になり、確認の証跡にもなります。

この管理は、事務の担当だけに任せないでください。社長も一覧を持ち、進み具合を確認する。二人で見る形にしてください。

請求と入金の管理を確実にする

請求・入金の管理が正確かが確認されると書きました。実務の要点を補足します。

まず、請求の漏れを防ぐ仕組みが要ります。運行の実績と請求を突き合わせ、請求していない運行がないかを確認してください。とくに、スポットの仕事や、待機料などの追加分は漏れやすい部分です。

そして、入金の確認を月次で行ってください。請求した金額と入金された金額が合っているか。差がある場合は、その理由を確認してください。

入金が遅れている先については、記録を残してください。いつ、いくらが未入金か。放置すると、回収が難しくなります。

そして、督促の手順も決めてください。何日遅れたら連絡するか、誰が連絡するか。決まっていないと、言い出しにくいまま時間が過ぎます。

あわせて、新しい取引先については、初回の入金を必ず確認してください。ここで問題があれば、以後の条件を見直す判断ができます。

まとめ

事務は請求から労務・許認可まで幅広く担い、一人体制だと会社の急所になります。まず業務を棚卸しして1枚の表にし、手順書と年間カレンダーを作ってください。人を増やせなくても、文書化と外部委託でリスクは下げられます。親族が担っている場合は特に、早めの文書化が必要です。