無償で行っている作業を洗い出す
まず、実際に何をやっているかを書き出してください。
- 荷待ち:到着から積込み・荷降ろし開始までの時間
- 手積み・手降ろし
- 仕分け・検品
- 棚入れ・陳列
- ラベル貼り、値札付け
- 資材の回収(パレット、かご車、梱包材)
- 横持ち:構内の移動
- 付帯の書類作成
「昔からやっているから」という理由で続いている作業が、必ず見つかります。
記録を取る
交渉には数字が必要です。1か月でよいので、実測してください。
| 記録する項目 | 内容 |
|---|---|
| 日付・便 | いつの運行か |
| 荷主・納品先 | どこで発生したか |
| 到着時刻/作業開始時刻 | 荷待ち時間 |
| 作業内容 | 何をしたか |
| 作業時間 | どれだけかかったか |
デジタコの停車記録と日報を組み合わせれば、比較的簡単に集計できます。デジタコを労務管理にどう使うか、労働時間の把握方法をご覧ください。
1か月分の集計を荷主別に出すと、それだけで交渉の材料になります。
提案の仕方
1. 事実を示す
「御社での荷待ちは、直近1か月で平均◯分、月間◯時間でした」
感情ではなく数字から入ることで、話が交渉になります。
2. コストを示す
「その時間、車両とドライバーが拘束されています。当社の時間あたり原価は◯円で、月間◯円の負担になっています」
3. 選択肢を出す
ここが重要です。「払ってください」だけでは進みません。
- 案A:待機料をいただく(◯分超過で◯円)
- 案B:待機時間を減らす(予約制、時間指定の変更)
- 案C:作業を減らす(荷役を荷主側で行う、パレット化)
荷主にとっては案Bや案Cのほうが安く済むことがあります。実際、これがきっかけで待機が改善されるケースは多くあります。
4. 労働時間規制を理由に使う
「拘束時間の規制により、この待機時間があると運行が組めなくなります」という説明は、荷主も理解を示しやすい理由です。荷主側にも物流の停滞は困るためです。
時間外労働の上限規制への対応をご覧ください。
料金の設定
- 待機料:一定時間(30分など)を超えた分について、時間単位で
- 附帯作業料:作業の種類ごとに、時間単位または件数単位で
金額は、自社の時間あたり原価を基準に設定してください。キロ単価・時間単価の考え方をご覧ください。
公表されている運賃・料金の考え方も、根拠として使えます。「標準的な運賃」の使い方をご覧ください。
断られたときの対応
- まず作業を減らす提案に切り替える:料金が無理でも、時間短縮なら受け入れられることがあります
- 記録を続ける:次の交渉機会のために
- 他の条件で調整する:運賃、便数、車格
- 優先順位を下げる:他の仕事を優先する
- 撤退を検討する:採算に合わない取引が続くなら(赤字取引の見極めと撤退)
契約書に入れる
合意できたら、必ず書面にしてください。担当者が代わると、口頭の取り決めは消えます。
- 何分を超えたら待機料が発生するか
- 単価
- 附帯作業の範囲と料金
- 請求の方法
荷主との契約書を整えるをご覧ください。
現場での徹底
取り決めても、現場で記録し請求しなければ収入になりません。
- ドライバーに、待機時間を記録する意味を伝える
- 記録の様式を簡単にする
- 月次で集計し、請求に反映する
- 請求漏れがないか確認する
M&Aでの意味
待機料・附帯作業料を収受できている会社は、荷主との交渉力がある会社として評価されます。逆に、無償作業が多い会社は「改善余地がある」とも見られます。
収受の状況を荷主別に整理しておいてください。運賃改定の実績が評価される理由をご覧ください。
記録が続かない理由
一か月でよいので実測してくださいと書きました。ところが、実際にやってみると、途中で記録が途切れる会社が多くあります。理由はだいたい決まっています。
一つは、記録の様式が重いことです。項目が多く、自由記述の欄があると、疲れている帰りには書けません。書く項目は、到着の時刻、作業を始めた時刻、終わった時刻、作業の中身。この四つに絞ってください。作業の中身も、選択肢を並べて丸を付ける形にします。
二つ目は、目的が伝わっていないことです。何のために書くのかが分からないと、優先順位が下がります。「この記録で運賃の交渉をする」と伝えるだけで、書き方が変わります。
三つ目は、書いたものが何にも使われないことです。集めるだけで何も起きないと、次から書かなくなります。だから、集計した結果を必ず本人に見せてください。「先月、この現場で平均これだけ待っていました」と示すと、記録の意味が伝わります。
そして、全便を同時に始めないでください。まず問題の大きい二つか三つの現場に絞る。範囲が狭ければ、確認も声かけもできます。
作業の線引きをどこに置くか
無償で行っている作業を洗い出すと書きました。洗い出した後、どこまでを運賃に含まれる作業とみなすかを決める必要があります。
判断の基準は、運ぶために必要な作業かどうかです。荷台への積み降ろしそのものは、運送に伴う作業として扱われるのが通常です。一方、店舗の棚に並べる、値札を付ける、構内を横持ちする。これらは運ぶこととは別の作業です。
ただし、線引きは契約の内容によって変わります。もともとその作業込みで契約している場合、後から別料金だと主張するのは難しくなります。だから、まず契約書を確認してください。
書面がない場合は、いつからその作業が始まったかを確認してください。当初は運ぶだけだったのに、途中から増えている。この経過が示せれば、条件が変わったという話になります。
そして、線引きを決めたら社内で共有してください。現場で判断が分かれると、同じ荷主に対して対応がばらつきます。「ここまではやる、ここからは確認する」という基準を、乗務する人が持てる形にしてください。
最初の請求が難所になる
取り決めても現場で請求しなければ収入になりません、と書きました。実務では、最初の一回がいちばん難しくなります。
これまで請求していなかったものを出すと、必ず問い合わせが来ます。「これは何ですか」「聞いていません」。相手の経理と現場に、話が伝わっていないことが多いためです。
だから、最初の請求の前に、担当者に一報を入れてください。「今月から、合意いただいた待機料を計上します。内訳を添付します」。この一手間で、摩擦がかなり減ります。
内訳は、日付と便ごとに、何分待って、いくらになるかを並べてください。合計額だけを出すと、確認できず保留になります。
そして、初回で金額が想定より小さくても構いません。まず請求の流れを作ることが目的です。流れができれば、翌月からは通常の処理になります。
逆に、初回でつまずいて請求をやめてしまうと、合意そのものが形骸化します。ここは一度だけ手をかけてください。
荷主の現場と話す
待機を減らすほうが安く済むことがあると書きました。実際に減らすには、相手の現場と話す必要があります。
まず、待たされている原因を確かめてください。バースが空かないのか、検品に時間がかかるのか、担当者が不在なのか。原因によって、打てる手が違います。
原因が分かれば、こちらから案を出せます。到着の時刻を少しずらす、事前に連絡を入れる、書類を先に渡しておく。相手に費用がかからない案なら、現場の判断で通ることがあります。
話す相手は、荷受けの現場責任者です。営業や購買の担当者に言っても、現場までは届きません。ただし、現場に直接持ちかける前に、窓口の担当者に一言通してください。順序を飛ばすと、後で問題になります。
そして、改善した場合は、その効果を伝えてください。「先月から平均でこれだけ短くなりました」。相手の現場にとっても成果になります。次の相談がしやすくなります。
ドライバーが記録したがらない場面
記録する意味を伝えると書きましたが、意味が分かっていても書きたがらない場面があります。理由を知っておくと、対処できます。
一つは、現場での関係を壊したくないという心理です。毎日行っている現場で、時計を見て記録していると、相手に嫌がられるのではないかと考えます。実際、そういう空気の現場もあります。
この場合は、記録が個人の行動ではなく会社の運用であることを明確にしてください。全便で同じ記録を取っていること、会社の指示であること。本人が矢面に立たない形にします。必要なら、荷主側にも事前に伝えておいてください。
もう一つは、待機が長いことが自分の段取りの悪さと見られるのではないかという懸念です。到着が早すぎたから待っている、と受け取られたくない。だから短めに書く、あるいは書かない。
これは、集計の使い方を伝えることで解けます。個人を評価するためではなく、現場の条件を変えるために使う。実際にそのとおり使ってください。一度でも個人の話に使うと、以後の記録は当てになりません。
そして、書いてくれた人には結果を返してください。この現場の待機が短くなった、この便に料金が付いた。自分の記録が効いたと分かれば、続きます。
金額の決め方と見せ方
金額は自社の時間あたり原価を基準に設定すると書きました。ただ、そのまま提示すると通りにくい場合があります。
まず、単価を細かくしすぎないでください。端数のある金額は、社内の稟議で扱いにくくなります。切りのよい数字にしたほうが、決裁が進みます。
次に、無償の時間をどこまで置くかです。到着してすぐに料金が発生する形は、相手にとって受け入れにくいものです。一定の時間までは含み、それを超えた分から発生する形にすると、話が進みやすくなります。この一定の時間をどこに置くかは、実測した平均を見て決めてください。
そして、上限を設けるかどうかも決めておいてください。長時間の待機に対して青天井の請求になると、相手は警戒します。ただし、上限を設けるなら、そこを超える待機が常態化したときにどうするかも決めておく必要があります。
提示するときは、料金表の形にしてください。文章で説明するより、表のほうが社内で回しやすくなります。附帯の作業も、種類ごとに並べておきます。
集計を月次の作業に組み込む
月次で集計し請求に反映すると書きました。この作業を、誰の仕事にするかを決めてください。
日報から待機と作業の時間を拾う作業は、請求の担当が行うのが自然です。ただ、日報の記載が読み取りにくいと、この作業が重くなります。日報の様式を、集計しやすい形に整えておいてください。
集計は、荷主別に出してください。全体の合計だけでは、どこに手を打つかが分かりません。荷主ごとに、何時間待って、いくら請求できて、いくら請求できていないかが見える形にします。
請求できていない分の集計が、実は最も重要です。合意していない荷主で発生している時間が、そのまま次の交渉の材料になります。
そして、この集計は月次の締めと同じ日に行ってください。別の日にすると、忘れます。締めの手順の一項目として組み込めば、続きます。
合意が守られなくなったとき
担当者が代わると口頭の取り決めは消えると書きました。書面にしていても、実態が変わることがあります。
よくあるのは、請求を出すたびに確認が入り、支払いが遅れるようになる形です。あるいは、待機の時間について現場と認識が食い違い、減額を求められる。
このとき、合意の書面を示すだけでは進まないことがあります。必要なのは、記録の裏づけです。日付と便ごとの記録があれば、事実の確認で終わります。記録がなければ、水掛け論になります。
だから、合意した後も記録は止めないでください。請求の根拠として、毎月必要になります。
そして、認識の食い違いが続くようなら、記録の取り方を相手と揃えることを提案してください。相手側の入退場の記録と突き合わせられる形にすれば、争いになりません。
パレット化を提案するときの注意
作業を減らす案として、パレット化やかご車の活用を挙げました。これは効果が大きい一方で、相手にも負担が生じます。
相手が気にするのは、まず積載の効率です。パレットを使うと、同じ車両に積める量が減ることがあります。荷主にとっては、便数が増えて費用が上がる可能性がある。この点は先に整理しておいてください。
次に、資材の管理です。パレットやかご車は、行った先で回収する必要があります。誰が管理し、紛失したときにどうするか。ここが決まっていないと、後で揉めます。
そして、荷受け側の設備です。フォークリフトがない、通路が狭い、保管の場所がない。相手の現場を見ずに提案すると、実現できません。
だから、提案する前に現場を確認してください。可能なら、乗務している人に聞くのがいちばん早い方法です。実際に見ている人が、できるかどうかを知っています。
そのうえで、一部の便から試す形にしてください。全面的な切り替えを求めると、検討だけで時間が過ぎます。一便で効果が出れば、広げる話になります。
まとめ
無償で行っている作業を洗い出し、1か月実測してください。交渉では、事実 → コスト → 選択肢(料金・時間短縮・作業削減)の順で提案します。荷主にとっては待機を減らすほうが安いこともあり、それが実際の改善につながります。合意したら必ず書面にしてください。