サーチャージとは
基本運賃とは別に、燃料価格の変動分を加算・減算する料金です。基準となる価格を決め、そこからの乖離に応じて金額が変わります。
重要なのは、下がったら減額する設計にすることです。「上がったときだけ請求する」形は荷主に受け入れられません。双方向にすることで、公平な仕組みとして提案できます。
設計の要素
1. 基準価格
「この価格を前提に基本運賃を設定した」という起点です。導入時の価格、または過去一定期間の平均を使います。基準を明確にしておかないと、後で議論になります。
2. 参照する指標
軽油価格の推移を示す公表データを使います。自社の仕入価格ではなく、第三者が公表している指標を使うほうが、荷主の納得を得やすくなります。
3. 改定の頻度
月次、四半期など。頻度が高いほど実態に合いますが、事務負担も増えます。多くの場合、月次または一定幅を超えたときの改定が使われます。
4. 加算額の計算方法
次のいずれかが一般的です。
- 距離あたり:1キロあたり◯円を加算
- 運行あたり:1運行につき◯円
- 運賃に対する率:基本運賃の◯%
自社の車両の燃費と、走行距離をもとに実際の負担増を計算して設定してください。根拠が示せることが重要です。
荷主への提案の仕方
提案書に入れる内容
- 燃料価格の推移(グラフ)
- 自社の年間燃料使用量と、価格変動による負担額
- 提案する仕組み(基準価格、指標、頻度、計算方法)
- 下がった場合は減額すること
- 試算:現在の価格ならいくらになるか
伝え方
「値上げをお願いしたい」ではなく、「価格変動に双方が振り回されない仕組みにしたい」という切り口が有効です。
荷主にとっても、毎回交渉されるより仕組みで決まるほうが管理しやすいという面があります。
タイミング
- 燃料が上昇局面にあるとき(必要性が伝わりやすい)
- 契約の更新時
- 担当者が代わったとき
- 他の条件変更と同時に
断られたときの代替案
- 一定幅を超えたときだけ協議するという条項を入れる
- 年1回の運賃見直しの取り決めをする
- まず主要荷主1社で試験的に導入する
- 基本運賃に一定の変動分を織り込む
仕組みが無理でも、協議の根拠を契約に残すことには意味があります。荷主との契約書を整えるをご覧ください。
元請経由の場合
元請から仕事を受けている場合、元請自身が荷主から収受できていないと、下請には回ってきません。
この場合、元請と一緒に荷主へ提案する形が考えられます。元請も同じ課題を抱えていることが多いためです。
なお、燃料費の上昇を運賃に反映しないことは、取引の公正さの観点からも問題とされ得ます。下請法・物流特殊指定の基本をご覧ください。
導入後の運用
- 毎月、指標の価格を確認し、加算額を計算する
- 請求書に内訳として明示する(基本運賃とサーチャージを分ける)
- 記録を残す
請求書で分けて表示することで、荷主も内容を把握できます。基本運賃に混ぜてしまうと、下がったときに減額しにくくなります。
自社の燃料コストも管理する
サーチャージで転嫁できても、使用量そのものを減らす取り組みは別に必要です。
- 燃費の管理と運転指導(燃費管理と運転指導)
- アイドリングの削減
- 回送距離の削減
- 燃料の調達方法の見直し
M&Aでの評価
サーチャージを導入できている会社は、コスト変動を転嫁できる会社として高く評価されます。買い手が最も懸念する「燃料が上がったら利益が消える」というリスクへの答えになるためです。
導入している荷主の数と割合を整理しておいてください。運賃改定の実績が評価される理由、評価が上がる会社の条件をご覧ください。
基準価格をどう決めるか
基準を明確にしておかないと後で議論になると書きました。決め方には、いくつかの考え方があります。
導入する時点の価格を使う方法は、最も分かりやすい形です。「この価格を前提に今の運賃を決めました」という説明が成り立ちます。ただし、導入の時期がたまたま高い時期だと、その後に下がったときに減額が続きます。
一定期間の平均を使う方法は、時期による偏りを避けられます。過去半年、あるいは一年の平均。どの期間を取るかを相手と合意しておけば、後の議論を避けられます。
もう一つ、前回の運賃改定の時点を基準にする方法もあります。その時点の価格を前提に運賃が決まったという整理です。改定の経緯が記録に残っていれば、これが最も筋の通った説明になります。
どの方法を選んでも、基準は書面に残してください。口頭で決めた基準は、担当者が代わると分からなくなります。
そして、基準そのものを見直す条件も決めておいてください。運賃を改定したときには、基準も新しい前提に合わせる必要があります。
加算額の根拠をどう作るか
自社の車両の燃費と走行距離をもとに実際の負担増を計算してくださいと書きました。この計算の手順を示します。
まず、対象の運行について、距離あたりの燃料の使用量を出します。車両ごとの燃費が分かっていれば、そのまま使えます。
次に、価格が一定額動いたときに、その運行でいくら変わるかを計算します。距離に使用量を掛け、価格の差を掛ければ出ます。この額が、加算の根拠になります。
ここで大事なのは、実際の燃費を使うことです。カタログの数値を使うと、実態と離れます。積載した状態で、実際の路線を走ったときの数字を使ってください。
そして、車格ごとに分けてください。大型と中型では、同じ距離でも使用量が違います。一つの数字でまとめると、どちらかが実態と合わなくなります。
計算の過程は、提案の資料に残してください。金額だけを示すと、どこから出た数字かを問われます。計算の式が見えていれば、相手も検証できます。
提案が通りやすい形にする
価格変動に双方が振り回されない仕組みにしたいという切り口が有効だと書きました。もう少し踏み込んで、通りやすくする工夫を挙げます。
まず、相手の事務の負担を小さくしてください。毎月の計算をこちらで行い、明細を添えて請求する形にする。相手が計算しなければならない仕組みだと、導入の障壁になります。
次に、変動の幅に上限や下限を置く案も検討してください。青天井で増える可能性があると、相手は予算を組めません。一定の範囲を超えた場合は協議する、という条項を入れると受け入れられやすくなります。
そして、最初は試験的に始める形を提案してください。半年なり一年なり、期間を区切って運用し、その後に本格導入を判断する。相手にとって決断の重さが下がります。
あわせて、導入後に相手が得るものを示してください。毎回の交渉がなくなること、予算の見通しが立つこと、運行体制が維持されること。相手側の利点として伝わる形にします。
そして、他の条件と一緒に持ち出さないでください。運賃の改定と同時に提案すると、全体が値上げの話として扱われます。仕組みの話として、単独で持ちかけるほうが進みます。
導入後に形骸化させない
毎月指標の価格を確認し加算額を計算すると書きました。この運用が止まると、仕組みがあっても機能しません。
止まる理由の多くは、担当が決まっていないことです。誰が指標を確認し、誰が計算し、誰が請求に反映するか。三つの作業を明確に割り振ってください。
そして、計算の様式を固定してください。毎月同じ形に価格を入れれば加算額が出る、という表を作っておけば、作業は数分で終わります。
下がったときの減額も、確実に反映してください。上がったときだけ請求し、下がったときに黙っていると、次に上げるときの信頼を失います。仕組みとして提案した以上、双方向に運用することが前提です。
請求書では、基本運賃とサーチャージを分けて表示してください。混ぜてしまうと、金額の内訳が見えなくなり、後で減額しにくくなります。
そして、年に一度は仕組み全体を見直してください。基準価格が実態と離れていないか、加算の計算が今の燃費と合っているか。車両を入れ替えれば、燃費も変わります。
元請を通す場合の進め方
元請自身が荷主から収受できていないと下請には回ってこないと書きました。この構造の中で、どう進めるかを整理します。
まず、元請がすでに荷主から収受しているかを確認してください。収受しているのに下に回していないなら、それは分配の問題です。話の持ちかけ方が変わります。
収受していない場合は、元請も同じ課題を抱えています。だから、対立ではなく、一緒に荷主へ提案する形を持ちかけてください。こちらが作った計算の資料は、元請が荷主に説明する材料としても使えます。
その際、資料は元請が使いやすい形にしてください。自社の事情だけを書いた資料では、元請の社内で通りません。輸送全体としての負担が示されている形が望ましいでしょう。
そして、元請との間でも、記録を残してください。いつ、どういう資料を渡し、どう返ってきたか。この記録は、後の交渉でも、取引の公正さに関わる場面でも意味を持ちます。
進まない場合は、元請一社への依存度そのものを見直す話になります。交渉の余地は、取引の構造で決まる部分が大きいためです。
断られた場合に残せるもの
仕組みが無理でも協議の根拠を契約に残すことには意味があると書きました。ここをもう少し具体的にします。
残しておきたいのは、一定の条件で協議する旨の条項です。「燃料価格が一定の幅を超えて変動した場合、運賃について協議する」。この一文があるだけで、次に話を持ち出す根拠になります。
条項がなくても、書面のやり取りを残すことに意味があります。申し入れた事実と、その時点での価格の状況。数年後に振り返ったときに、経緯が説明できます。
そして、年に一度の見直しの取り決めができるなら、それも有効です。仕組みで自動的に反映されなくても、話す機会が確保されていれば、実質的には近い効果が得られます。
まず一社で試験的に導入する案も、現実的です。一社で運用の実績ができれば、他の荷主に提案するときの材料になります。「他社ではこの形で運用しています」という説明は効きます。
そして、断られたからといって、記録を止めないでください。燃料の使用量と価格の推移は、次の機会に必ず使います。
転嫁できても管理は必要
使用量そのものを減らす取り組みは別に必要だと書きました。この点を、もう少し踏み込んでおきます。
サーチャージで価格の変動を転嫁できても、使う量が多ければ、その分だけ全体の費用は大きくなります。加算の金額は使用量に比例するため、荷主の負担も増えます。
だから、使用量を減らす取り組みは、自社のためであると同時に、荷主に対する説明にもなります。「削減に取り組んだうえで、なお足りない分をお願いしています」という立て付けは、交渉でも効きます。
取り組みの内容は、記録して示せる形にしてください。燃費の推移、アイドリングの時間、回送の距離。数字で示せると、説得力が違います。
そして、削減できた分を自社の利益として残すか、加算の水準に反映するかは、契約の設計によります。努力した分が自社に残る形でなければ、取り組む動機が生まれません。ここは提案の段階で整理しておいてください。
買い手の目から見ても、転嫁の仕組みと使用量の管理は、両方あって初めて評価されます。
参照する指標の扱い
第三者が公表している指標を使うほうが荷主の納得を得やすいと書きました。運用にあたって決めておくことがあります。
まず、どの指標を使うかを書面で特定してください。名称だけでなく、どの区分の数値を見るのかまで決めておきます。曖昧だと、毎月の確認で解釈が分かれます。
次に、いつ時点の数値を使うかです。前月の数値なのか、当月の一定日の数値なのか。締めと請求の時期に合わせて決めてください。
そして、その指標が公表されなくなった場合の扱いも決めておくと安全です。代わりの指標を協議する、という一文があれば足ります。
自社の仕入価格を使わない理由は、相手が検証できないからです。こちらの調達の条件によって金額が変わる仕組みは、相手にとって受け入れにくいものです。公表されている数値であれば、相手も同じものを見られます。
そのうえで、自社の仕入価格は別に管理してください。指標と自社の実際の価格の差が大きいなら、調達の条件を見直す余地があるということです。
まとめ
燃料サーチャージは、価格変動を自動的に運賃へ反映する仕組みです。下がったら減額する双方向の設計にし、第三者が公表する指標を使うことで納得を得やすくなります。請求書では内訳として分けて表示してください。一度導入できれば、その後の交渉負担が大きく減ります。