パターン1:自社の評価を知らないまま交渉に入る
最も多い型です。提示された金額が妥当かどうかを判断する基準がないため、「そんなものか」と受け入れてしまいます。
防ぎ方:交渉に入る前に、時価純資産と調整後利益を自分で計算しておく。完璧である必要はなく、おおよそのレンジが分かれば十分です。食品工場の売却相場はあるのかの手順で試算してください。
パターン2:追い込まれてから動く
体調を崩した、主要な取引先を失った、資金繰りが厳しくなった。この状態で相手を探すと、時間がないことが相手に伝わります。
候補を比較する余裕もなく、最初に手を挙げた1社と進めることになります。
防ぎ方:会社が順調なうちに動く。「まだ早い」と思える時期がいちばん条件よく動けます。「まだ早い」と思う社長ほど早く動くべき理由をご覧ください。
パターン3:磨き上げをせずに出す
役員報酬も保険料も整理していない決算書をそのまま出すと、実力より低い利益で評価されます。
滞留在庫が資産に残ったまま、使えない包材が計上されたまま、というのも同様です。買収監査で減額されます。
防ぎ方:決算書の磨き上げを先に行い、調整後の数字を自分で示す。
パターン4:候補が1社しかない
比較対象がないと、提示条件を受けるか断るかの二択になります。断れば話が終わるという状況では、交渉になりません。
防ぎ方:複数の候補と並行して進める。ただし、基本合意で独占交渉権を与えた後は他と話せなくなるため、その前の段階で複数を確保することが重要です。買い手はどう探すのかと基本合意書で決めることをご覧ください。
パターン5:問題を隠して監査で発覚する
未払い残業、設備の更新負担、株式の分散、個人名義の資産。これらを伏せたまま進めると、買収監査で必ず見つかります。
そのときに起きるのは、単なる減額ではありません。「他にも隠していることがあるのでは」という疑念が生じ、条件全体が厳しくなります。
防ぎ方:先に開示する。先に出した問題は交渉の前提になり、表明保証の対象からも外せます。買収監査で何を見られるかを参照してください。
パターン6:条件を先に譲ってしまう
「従業員の雇用さえ守ってもらえれば」「工場さえ残してもらえれば」。この気持ちは自然ですが、交渉の入口でこれを伝えると、価格の交渉力を失います。
買い手からすれば、価格を下げても条件さえ飲めば成立すると分かるからです。
防ぎ方:条件は最終契約の交渉で詰める。入口では「重視している」と伝えるにとどめ、価格と条件を交換材料として扱う。価格交渉で使える材料と雇用維持を契約に残すをご覧ください。
その他の要因
アドバイザー任せにする
仲介は双方から報酬を受け取る構造であり、成立を優先する力が働きます。任せきりにせず、自分で判断軸を持ってください。FAと仲介の違いを参照してください。
最終契約書を読まない
価格が決まっても、表明保証と補償の範囲が広ければ、後から返金を求められる可能性があります。実質的な手取りは契約条項で決まります。最終契約書の要点をご覧ください。
税金を考えずに総額だけで判断する
譲渡価格がそのまま手元に残るわけではありません。手取りベースで比べることが必要です。売却後の手取りを参照してください。
逆に、高く売れる会社の共通点
- 数年前から準備を始めている
- 数字を自分の言葉で説明できる
- 課題を自分から開示し、対策も示している
- 複数の候補と並行して話している
- 「この条件を下回るなら断る」という線を持っている
- 専門家を自分の側にも置いている
いずれも、時間があれば誰でもできることです。売る前の1年でできる企業価値の上げ方から始めてください。