最終契約に書かれること

  1. 譲渡する対象と対価
  2. クロージングの日と、その前提条件
  3. 表明保証
  4. 補償
  5. 誓約事項(クロージングまでにやること、その後にやること)
  6. 競業避止義務
  7. 従業員の処遇
  8. 解除の条件

このうち、売り手にとって最も重要なのが3と4です。

表明保証とは

売り手が買い手に対して、「会社の状態は次のとおりです」と表明し、それが真実であることを保証するものです。例えば次のような内容です。

  • 決算書は適正に作成されている
  • 開示した以外に債務・保証はない
  • 営業許可は有効で、法令に違反していない
  • 未払いの賃金・社会保険料はない
  • 重要な契約に違反はなく、解除事由も生じていない
  • 株式は適法に発行され、売り手が完全な所有権を持つ
  • 係争や、その恐れのある事案はない

これが事実と違っていた場合、次の補償につながります。

補償とは

表明保証に違反があった場合や、契約上の義務を果たさなかった場合に、売り手が買い手の損害を補填する約束です。

つまり、譲渡代金を受け取った後でも、返金を求められる可能性があるということです。ここが最終契約の交渉で最も重要な理由です。

売り手が交渉すべき4つの点

1. 補償の上限額

「譲渡代金の◯%を上限とする」という定めを入れます。上限がないと、理論上は代金全額を超える負担もありえます。

2. 補償の期間

「クロージングから◯年以内に請求されたものに限る」という定めです。一般に1〜3年程度で設定されますが、税務や労務に関する事項は期間を長めに設定されることがあります。

3. 補償の下限(デミニミス)

少額の指摘まですべて補償の対象にすると、際限がなくなります。「1件◯円以上」「累計◯円を超えた場合に限る」といった定めを入れます。

4. 「知る限り」の限定

表明保証の文言に「売り手が知る限り」という限定を入れられるかどうかは、重要な交渉点です。

ただし、すでに開示した事項については、この限定は意味を持ちません。逆に言えば、事前に開示しておけば表明保証の対象から外せます。買収監査で問題を先に出しておく実務的な意味がここにあります。

食品製造業で特に注意する表明保証

  • 営業許可・食品表示に関する法令遵守:範囲外の品目を製造していないか、表示に誤りがないか
  • 製品の品質・安全性:出荷済みの製品に問題がないこと
  • 回収に関する事項:過去の回収と、現在発生の恐れがないこと
  • 労務:未払い残業・社会保険の未加入がないこと
  • 原料の調達:仕入契約に違反がないこと

2番目と3番目は食品製造業に固有の重さがあります。クロージング後に出荷済み製品の問題が発覚すると、回収費用と信用の毀損が生じます。期間と上限を明確にしておくことが特に重要です。

誓約事項

クロージング前については、「通常の営業の範囲を超える行為をしない」といった義務が定められます。大きな設備投資、資産の処分、役員報酬の変更などが制限されます。

クロージング後については、競業避止義務が典型です。一定期間、同種の事業を行わないという約束で、期間と地域の範囲を確認してください。同業で再起することを考えている場合は特に重要です。

従業員の処遇

雇用の維持について、どこまで契約に書けるかは交渉次第です。雇用維持を契約に残すで具体的な条項の書き方を扱っています。

保険という選択肢

表明保証違反に備える保険があります。売り手の補償負担を軽減できる一方、費用と引受の条件があります。食品製造業で使えるかは表明保証保険は食品製造業でも使えるかをご覧ください。

署名の前に

最終契約書は分量が多く、専門用語も多くなります。必ず自社側の弁護士に確認してもらってください。仲介会社が作成した雛形をそのまま受け入れるのは避けるべきです。

※ 契約条項の効力や解釈は、記載内容や個別の事情によって異なります。署名の前に必ず弁護士等の専門家にご確認ください。