買収監査は4つの分野に分かれる
規模によって省略される分野もありますが、食品製造業では次の4つが実施されるのが一般的です。
財務で求められる資料
- 直近3〜5期の決算書、勘定科目内訳明細書、法人税申告書
- 月次試算表(直近2期分)
- 品目別の売上・粗利
- 取引先別の売掛金残高と回収サイト
- 在庫の明細(原材料・仕掛・製品、滞留期間つき)
- 固定資産台帳
- 借入金の一覧(残高・金利・返済予定・担保・保証)
- リース契約の一覧
食品製造業で特に見られるのが在庫です。賞味期限切れや長期滞留がないか、評価が適正かを確認されます。在庫の評価をご覧ください。
法務で求められる資料
- 登記事項証明書、定款、株主名簿
- 株主総会・取締役会の議事録(数期分)
- 営業許可証、施設の届出内容
- 取得している認証の証明書(FSSC22000等)
- 主要な取引基本契約書、OEM契約書
- 不動産の登記簿、賃貸借契約書
- 商標の登録状況
- 係争・クレームの履歴
ここでよく問題になるのが、契約書が見つからないことです。長年の取引が口約束で続いている例は少なくありません。契約書の棚卸しを早めに行ってください。
労務で求められる資料
- 従業員名簿(年齢・勤続・職種・雇用形態)
- 就業規則、賃金規程、退職金規程
- 労働条件通知書・雇用契約書
- 36協定、変形労働時間制に関する協定
- 直近2年程度の勤怠記録と賃金台帳
- 社会保険の加入状況
- 外国人従業員の在留資格に関する書類
最も指摘が出やすい分野です。着替えや清掃の時間の扱い、変形労働時間制の運用、パートの社会保険加入。詳しくは労務デューデリに備えるにまとめました。
環境・設備で求められる資料
- 設備一覧(導入年・取得価額・稼働状況)
- 修繕履歴と、今後の更新計画
- 排水処理の状況、水質に関する測定記録
- 冷媒の種類と管理状況
- 建物の建築年、増改築の履歴、アスベストの調査状況
- 廃棄物の処理委託契約とマニフェスト
- 近隣からの苦情の履歴(臭気・騒音)
この分野は食品工場に特有の論点が多く、金額に直結します。環境・設備デューデリで扱っています。
衛生管理に関する資料
4分野に加えて、食品製造業では次が確認されます。
- 衛生管理計画(HACCPに沿った衛生管理の文書)
- 記録類(温度、洗浄、点検、教育の記録)
- 検証・見直しの実施記録
- 原料規格書
- 製品の規格書・仕様書、期限設定の根拠資料
- 微生物検査の結果
- 取引先の工場監査の結果と、是正の記録
- 過去の回収・クレームの記録と、その後の対応
準備の進め方
- 基本合意の前から、上のリストを自分で埋めてみる
- 出てこない書類を洗い出す(ここが実際の課題)
- 不足を補う(契約書の巻き直し、記録の整備)
- 解消できない問題は、先に開示する方針を決める
4番目が重要です。未払い残業、個人名義の資産、株式の分散。これらは後から見つかると価格が下がるか破談になります。先に出せば交渉の前提になります。
社内の窓口を1人決める
資料の請求は次々に来ます。誰が対応するかを決めておかないと、その都度経営者が動くことになり、現場にも情報が広がります。
経理担当者など、限られた人を窓口にして、経営者が承認する形が現実的です。秘密保持契約で守れること・守れないこともあわせてご覧ください。