転嫁の進み方には差がある
業界全体としては価格改定が進んでいますが、領域によって差があります。
転嫁が進みやすい領域
- 自社ブランド商品:価格の決定権が自社にある
- 他社が作れない商品:代替がきかない
- 業界全体で原料が上がった品目:横並びで改定しやすい
- 取引先が分散している:1社に断られても致命傷にならない
転嫁が進みにくい領域
- PB・OEM:価格の決定権が相手にある
- 汎用品:他社でも作れる
- 1社への依存度が高い:断られたら終わり
- 長年据え置いてきた取引:切り出しにくい
PB・OEM専業の工場が、最も転嫁に苦労しています。PB・OEM依存からの脱却をご覧ください。
自社の位置を確かめる
指標1:粗利率の推移
最も分かりやすい指標です。3期分の粗利率を並べてください。
| 状況 | 意味 |
|---|---|
| 粗利率が維持または改善 | 転嫁できている |
| 粗利率が低下している | 転嫁が追いついていない |
売上が伸びていても、粗利率が下がっていれば転嫁できていません。単に原材料が上がった分だけ売上が増えているだけ、という可能性があります。
指標2:品目別・取引先別の改定実績
次を一覧にしてください。
- 品目ごとの前回の価格改定日と改定率
- その間の原価上昇率
- 取引先ごとの改定の実績
「何年も改定していない品目・取引先」が見えます。そこが優先的に取り組むべき対象です。
指標3:原価上昇との比較
原価が◯%上がったのに対し、価格を◯%改定したという対比を出してください。
差がそのまま、自社が吸収した分です。この金額が、利益の減少要因になっています。
転嫁が遅れている場合
まず原因を特定する
転嫁できていない原因は、たいてい構造的なものです。
- 原価が見えていない
- 1社への依存度が高い
- 代替されやすい
- 長年の関係が壁になっている
- 協議の場そのものがない
価格転嫁できない会社に共通することで、それぞれの対策を扱っています。
順序を守る
- 原価を見えるようにする(数か月でできる)
- 影響額を品目別に算定する
- 自助努力の実績を作る(歩留まり、ロス、段取り)
- 資料を作って協議する
- 契約に価格協議の規定を入れる
取引環境の整備
価格転嫁については、取引の適正化に向けた取り組みが進められています。
- コスト上昇分の転嫁に関する考え方の周知
- 協議に応じない場合の指摘
- 相談窓口の設置
協議を申し入れること自体は、正当な行為です。この前提を、まず自社の中で共有してください。
価格交渉の環境整備をご覧ください。
労務費・エネルギー費も対象
転嫁の対象は、原材料費だけではありません。
- 労務費:最低賃金の上昇
- エネルギー費:電気・ガス・燃料
- 物流費:運賃の上昇
これらも協議の対象になりえます。原材料だけを見て、他を見落とさないでください。
転嫁の実績が企業価値になる
買い手は、価格改定を実現した実績を明確に評価します。
理由は次のとおりです。
- その会社に交渉力があることの証明
- 代替されにくい商品を持っていることの証明
- 今後もコスト上昇に対応できるという安心
逆に、何年も価格を据え置いている会社は、今後の利益に不安があると見られます。
買い手は食品工場の何を見ているかと売る前の1年でできる企業価値の上げ方をご覧ください。
承継のタイミングを使う
代替わりは、取引条件を見直す数少ない機会です。
「代が替わりましたので、取引条件を一度見直させていただきたい」——この切り出し方ができるのは、このときだけです。
多くの後継者が、この機会を活かして粗利率を改善しています。2代目・3代目が直面する食品工場の課題をご覧ください。
※ 本記事は一般的な傾向を整理したものです。統計値や制度の内容は時点によって変わります。個別の判断にあたっては、最新の情報をご確認のうえ、専門家にご相談ください。