要因1:原価が見えていない

最も多い要因です。いくら上がったかを説明できないと、交渉のテーブルにつけません

「なんとなく苦しい」では、相手は動きません。「主原料が◯%上がり、1個あたり◯円の原価増になっている」と示せて初めて、話が始まります。

対策

品目別の原価計算を整備する。これが出発点です。原価計算を始めるをご覧ください。

完璧である必要はありません。主力10品目でも、交渉の材料としては十分機能します。

要因2:1社への依存度が高い

売上の半分以上を1社が占めていると、断られたら終わりという状況になります。この構造では、対等な交渉は成立しません。

特にPB・OEM専業の工場では、この問題が深刻です。

対策

短期では解決しません。3〜5年かけて構成を変える計画が必要です。

  • 粗利率の高い取引先を伸ばす
  • 性質の違う販路を1つ試す
  • 自社ブランドを持つ

PB・OEM依存からの脱却新しい販路の開き方をご覧ください。

要因3:代替されやすい

「他社でも作れる」商品ばかりだと、値上げを求めた瞬間に切り替えられます。

対策

  • 設備の優位性:他社が持たない設備で作れる商品を増やす
  • 品質・衛生の水準:監査を通っている、認証を持っている
  • 小回りの利き方:小ロット、短納期、緊急対応
  • 開発力:相手の要望に応じた商品を提案できる

4番目が最も効きます。言われたものを作るだけの関係から、一緒に商品を作る関係になれば、切り替えのコストが上がります。商品開発の進め方をご覧ください。

要因4:長年の関係が壁になる

「先代の代からお世話になっている」「ここまで育ててもらった」。この感情が、交渉を難しくします。

ただし、取引先の担当者は数年で交代します。相手にとっては、必ずしも同じ重みの関係ではありません。

対策

  • 関係と条件を分けて考える
  • 「継続的な供給のために必要」という枠組みで話す
  • 経営者交代のタイミングを使う

代替わりは、この壁を越えられる数少ない機会です。価格改定の交渉をご覧ください。

要因5:交渉の場そのものがない

年に一度の価格見直しの機会がない。担当者と会う機会が少ない。契約書に価格改定の規定がない。

対策

  • 契約書に価格協議の規定を入れる(原材料が一定以上変動した場合に協議する)
  • 定期的な面談の機会を作る
  • 年に一度、原価の状況を共有する(値上げ要求とは別に)

1番目が有効です。規定があれば、それを根拠に協議を申し入れられます。契約書の棚卸しをご覧ください。

共通する構造

5つの要因を並べると、共通点が見えます。いずれも「準備」と「構造」の問題であり、交渉当日の話術の問題ではありません。

  • 原価が見える → 材料がある
  • 依存度が低い → 断られても致命傷にならない
  • 代替されにくい → 切り替えコストが相手にある
  • 感情を切り離せる → 条件の話ができる
  • 協議の枠組みがある → 話す機会がある

優先順位

すべてを同時には変えられません。次の順で取り組んでください。

  1. 原価を見えるようにする(数か月でできる)
  2. 契約に協議の規定を入れる(更新の機会に)
  3. 自助努力の実績を作る(歩留まり、ロス、段取り)
  4. 販路を広げる(数年かかる)
  5. 代替されにくい商品を作る(数年かかる)

1〜3は1年以内にできます。ここまでやれば、交渉の材料は揃います。

承継・M&Aへの影響

価格転嫁ができていない会社は、粗利率が低く、評価も下がります

逆に、「原材料高の局面で価格改定を実現した実績」は、買い手から高く評価されます。その会社に交渉力があることの証明だからです。

買い手は食品工場の何を見ているか売る前の1年でできる企業価値の上げ方をご覧ください。