なぜ輸出が注目されるのか
- 国内市場が縮小している
- 日本食への関心が海外で高い
- 国として輸出促進が図られている
- 支援制度が用意されている
一方で、中小の食品メーカーにとってはハードルが高いのも事実です。
ハードル1:相手国の制度
これが最大の関門です。国ごとに、次が異なります。
- 使用が認められる添加物
- 残留農薬・動物用医薬品の基準
- 表示のルール(言語、表示項目)
- required となる証明書
- 施設の登録・認定の要否
- 関税
「日本で売っているものをそのまま出せる」とは限りません。使用している添加物が相手国で認められていない、といったことが起こります。
確認の方法
- 公的な輸出支援機関の情報
- ジェトロなどの相談窓口
- 輸出を扱う商社
- 相手国のバイヤー
まず相談してください。自社で調べるには情報量が多すぎます。
ハードル2:施設の認定・認証
品目や相手国によっては、施設の登録や認定が必要になります。
- 特定の品目について、輸出先国が求める施設要件
- HACCPに基づく衛生管理の実施
- FSSC22000など、国際的な認証
認証の取得には、準備期間と費用がかかります。FSSC22000・ISO22000は承継でどう扱われるかをご覧ください。
ハードル3:物流と品質保持
- 輸送期間中の品質保持(温度、振動)
- 賞味期限が十分にあるか
- 冷凍・冷蔵での輸送コスト
- 通関の時間
- 包装の強度
賞味期限が短い商品は、輸出に向きません。輸送と現地での流通に要する期間を差し引いて、販売できる期間が残るかを確認してください。
期限設定の見直しが必要になることもあります。消費期限・賞味期限の設定根拠をご覧ください。
ハードル4:ロットと価格
- 輸出は一定のロットがないと成立しにくい
- 輸送費が上乗せされ、現地価格が高くなる
- 為替の変動リスク
- 代金回収のリスク
「少量を試しに送る」ことは、コスト面で難しいことがあります。
現実的な進め方
段階1:情報を集める
- 公的な輸出支援機関に相談する
- 自社製品が、どの国なら出せそうかを確認する
- 使用している添加物・原料の制約を確認する
この段階で「難しい」と分かることもあります。それも重要な情報です。
段階2:商社・専門事業者と組む
いきなり自社で直接輸出しないでください。
- 輸出を扱う商社に販売する(国内取引として扱える)
- 越境ECの事業者を通じる
- 輸出のノウハウを持つ企業と組む
これなら、通関や現地対応の負担を負わずに始められます。まずここから試すのが現実的です。
段階3:商談会・展示会に出る
海外バイヤーとの商談会が、国内でも開催されています。渡航せずに反応を確かめられます。
準備するもの
- 英語(または相手国言語)の商品資料
- 規格書(成分、アレルゲン、原産地)
- 価格表(FOB、CIFなどの条件別)
- 工場の情報(設備、許可、認証)
- サンプル
規格書がすぐ出せることが前提です。原料規格書の管理をご覧ください。
段階4:直接輸出を検討する
継続的な取引が見込めるようになってから、直接の輸出を検討します。
支援制度
輸出に関する支援制度があります。
- 商談会・展示会への出展支援
- 認証取得への支援
- 施設整備への支援
- 専門家による相談
制度は年度ごとに変わります。最新の情報を確認してください。食品製造業が使える補助金の種類をご覧ください。
判断の材料
向いている場合
- 賞味期限が長い(常温、冷凍)
- 一定のロットで生産できる
- 日本らしさが訴求できる
- 使用している添加物・原料に制約が少ない
- 国内の稼働に余力がある
向きにくい場合
- 賞味期限が短い(日配品)
- 少量多品種で、まとまったロットが作れない
- 国内の需要で手一杯
- 認証取得の余力がない
「国内でも人手が足りない」状態で輸出に取り組むのは、負担が大きすぎます。
リスクへの備え
- 代金回収(前払い、信用状、貿易保険)
- 為替の変動
- 製品事故が起きた場合の対応
- PL保険の適用範囲(海外が対象か確認)
最後の項目は必ず確認してください。国内向けの保険では、海外での賠償に対応できないことがあります。生産物賠償責任保険(PL保険)の見直しをご覧ください。
承継との関係
輸出への取り組みは、後継者が主導しやすく、企業価値の向上にもつながります。
ただし、成果が出るまでに時間がかかります。本業が安定していることが前提です。
※ 本記事は一般的な傾向を整理したものです。統計値や制度の内容は時点によって変わります。個別の判断にあたっては、最新の情報をご確認のうえ、専門家にご相談ください。