在庫が資金を縛る仕組み

食品工場の資金の流れは次のとおりです。

  1. 原料を仕入れて代金を払う(資金が出る)
  2. 製造して人件費を払う(資金が出る)
  3. 在庫として保管する(資金が寝る
  4. 出荷する
  5. 売掛金を回収する(資金が入る)

在庫が多いほど、3の期間が長くなり、資金が必要になります

さらに食品では、期限切れによる廃棄リスクが加わります。在庫は資金と利益の両方を圧迫します

回転を測る

在庫回転日数 = 在庫金額 ÷ 1日あたりの出庫金額

この日数を、次の3つに分けて見てください。

  • 原材料・包材
  • 仕掛品
  • 製品

どこに在庫が滞留しているかで、打ち手が変わります

滞留在庫の見つけ方

手順1:最終出庫日で並べる

在庫の品目ごとに、最後に動いた日を出します。動いていない期間の長い順に並べてください。

滞留期間扱い
1か月以内通常
1〜3か月要確認
3〜6か月使う見込みを確認、なければ処分
6か月超ほぼ確実に不要

期限のある食品では、この期間はさらに短くなります。実態に合わせて設定してください。

手順2:金額を出す

滞留在庫の金額を集計します。「これだけの資金が寝ている」と数字で見ると、対応が進みます

手順3:理由を分類する

  • 終売になった商品の専用原料・包材
  • 最低ロットが大きく、使い切れない
  • 仕様変更で使えなくなった包材
  • 取引が終了した先の専用品
  • 試作・サンプル用の残り
  • 単純な発注ミス

理由が分かると、再発防止ができます

削減の打ち手

原材料・包材

  • 発注ロットを見直す:仕入先と最低ロットを協議する
  • 共通化する:品目ごとの専用原料を減らし、共通原料を増やす
  • 発注頻度を上げる:1回の量を減らし、回数を増やす
  • 先入先出を徹底する:置き場のルールと表示
  • 包材の仕様変更時のルール:旧包材を使い切る計画を立てる

包材の共通化は効果が大きい打ち手です。品目ごとに専用のトレーやフィルムを使っていると、在庫が膨らみます。品目数を絞るをご覧ください。

仕掛品

  • 工程間の停滞を減らす
  • ロットサイズを小さくする
  • ボトルネック工程を改善する

仕掛品が多い工場は、工程のどこかが詰まっていますライン稼働率の見方をご覧ください。

製品

  • 需要予測の精度を上げる
  • 受注生産の比率を上げる
  • リードタイムを短縮する(短納期に対応できれば在庫が減る)
  • 取引先と発注のルールを協議する

仕込み計画と需要予測をご覧ください。

処分の判断

使う見込みのない在庫は、早く処分するほうが有利です。理由は次のとおりです。

  • 保管スペースが空く
  • 棚卸の手間が減る
  • 実態の純資産が明確になる
  • 売却時に指摘されない

「もったいない」という感情が、判断を遅らせます。すでに支出した費用は戻りません。保管し続けるコストのほうが大きいことがあります。

棚卸の運用

  • 定期的に実地棚卸を行う
  • 帳簿との差異を調査し、記録する
  • 差異が大きい品目の原因を探る
  • 滞留在庫を毎回チェックする

棚卸を「数えるだけの作業」にしないでください。差異と滞留を見る機会にすると、価値が変わります。

効果

資金面

在庫回転日数が10日短縮できれば、10日分の資金が手元に戻ります。借入の返済にも、設備投資にも使えます。資金繰り表の作り方をご覧ください。

利益面

  • 廃棄が減る
  • 保管費・光熱費が減る
  • 棚卸の手間が減る

承継・M&A

買収監査では、在庫が最も時間をかけて見られます。滞留や期限切れが多いと、評価損として純資産から差し引かれます。

整理されている工場は、それだけで管理水準が伝わります。在庫の評価財務デューデリジェンスをご覧ください。

まず何をするか

倉庫を歩いて、半年動いていないものを写真に撮る。それだけで、問題の大きさが見えます。