在庫が資金を縛る仕組み
食品工場の資金の流れは次のとおりです。
- 原料を仕入れて代金を払う(資金が出る)
- 製造して人件費を払う(資金が出る)
- 在庫として保管する(資金が寝る)
- 出荷する
- 売掛金を回収する(資金が入る)
在庫が多いほど、3の期間が長くなり、資金が必要になります。
さらに食品では、期限切れによる廃棄リスクが加わります。在庫は資金と利益の両方を圧迫します。
回転を測る
在庫回転日数 = 在庫金額 ÷ 1日あたりの出庫金額
この日数を、次の3つに分けて見てください。
- 原材料・包材
- 仕掛品
- 製品
どこに在庫が滞留しているかで、打ち手が変わります。
滞留在庫の見つけ方
手順1:最終出庫日で並べる
在庫の品目ごとに、最後に動いた日を出します。動いていない期間の長い順に並べてください。
| 滞留期間 | 扱い |
|---|---|
| 1か月以内 | 通常 |
| 1〜3か月 | 要確認 |
| 3〜6か月 | 使う見込みを確認、なければ処分 |
| 6か月超 | ほぼ確実に不要 |
期限のある食品では、この期間はさらに短くなります。実態に合わせて設定してください。
手順2:金額を出す
滞留在庫の金額を集計します。「これだけの資金が寝ている」と数字で見ると、対応が進みます。
手順3:理由を分類する
- 終売になった商品の専用原料・包材
- 最低ロットが大きく、使い切れない
- 仕様変更で使えなくなった包材
- 取引が終了した先の専用品
- 試作・サンプル用の残り
- 単純な発注ミス
理由が分かると、再発防止ができます。
削減の打ち手
原材料・包材
- 発注ロットを見直す:仕入先と最低ロットを協議する
- 共通化する:品目ごとの専用原料を減らし、共通原料を増やす
- 発注頻度を上げる:1回の量を減らし、回数を増やす
- 先入先出を徹底する:置き場のルールと表示
- 包材の仕様変更時のルール:旧包材を使い切る計画を立てる
包材の共通化は効果が大きい打ち手です。品目ごとに専用のトレーやフィルムを使っていると、在庫が膨らみます。品目数を絞るをご覧ください。
仕掛品
- 工程間の停滞を減らす
- ロットサイズを小さくする
- ボトルネック工程を改善する
仕掛品が多い工場は、工程のどこかが詰まっています。ライン稼働率の見方をご覧ください。
製品
- 需要予測の精度を上げる
- 受注生産の比率を上げる
- リードタイムを短縮する(短納期に対応できれば在庫が減る)
- 取引先と発注のルールを協議する
仕込み計画と需要予測をご覧ください。
処分の判断
使う見込みのない在庫は、早く処分するほうが有利です。理由は次のとおりです。
- 保管スペースが空く
- 棚卸の手間が減る
- 実態の純資産が明確になる
- 売却時に指摘されない
「もったいない」という感情が、判断を遅らせます。すでに支出した費用は戻りません。保管し続けるコストのほうが大きいことがあります。
棚卸の運用
- 定期的に実地棚卸を行う
- 帳簿との差異を調査し、記録する
- 差異が大きい品目の原因を探る
- 滞留在庫を毎回チェックする
棚卸を「数えるだけの作業」にしないでください。差異と滞留を見る機会にすると、価値が変わります。
効果
資金面
在庫回転日数が10日短縮できれば、10日分の資金が手元に戻ります。借入の返済にも、設備投資にも使えます。資金繰り表の作り方をご覧ください。
利益面
- 廃棄が減る
- 保管費・光熱費が減る
- 棚卸の手間が減る
承継・M&A
買収監査では、在庫が最も時間をかけて見られます。滞留や期限切れが多いと、評価損として純資産から差し引かれます。
整理されている工場は、それだけで管理水準が伝わります。在庫の評価と財務デューデリジェンスをご覧ください。
まず何をするか
倉庫を歩いて、半年動いていないものを写真に撮る。それだけで、問題の大きさが見えます。