1. 人事をいきなり刷新しない
後継者から見て、幹部が高齢で、やり方が古く見えることはよくあります。だからといって就任早々に配置を変えると、現場は「粛清が始まった」と受け取ります。
食品工場では、抜けた人の代わりがすぐには見つかりません。製造リーダーや品質管理の担当者が数人辞めると、生産が回らなくなります。
1年目は、人を動かすより役割を明確にするほうが効果的です。誰が何を決めてよいかを整理するだけで、組織はかなり動きやすくなります。現場リーダーの役割をどう定義するかを参照してください。
2. 取引先をいきなり整理しない
原価を見れば、赤字の取引先が見つかります。「こんな条件でやっていたのか」と驚くこともあるでしょう。
しかし、その取引が工場の稼働を埋めている場合があります。切った途端に固定費が浮かなくなり、かえって利益が減ることもあります。
正しい順番は、まず値上げを交渉し、それでも駄目なら考えるです。しかも交渉には準備が要ります。価格改定の交渉と儲からない商品をやめるをご覧ください。
3. 大きな設備投資をいきなり決めない
老朽化した設備を見れば、更新したくなります。ただし就任直後は、まだ工程のどこが本当のボトルネックかが見えていません。
設備を入れ替えても、律速工程が別のところにあれば生産量は増えません。工程改善が先、設備は後という順序は、食品工場では特に当てはまります。省人化投資の順序で扱っています。
4. 先代を全否定しない
やり方を変えるとき、「今までのやり方は間違っていた」という言い方をしないでください。従業員の多くは、そのやり方で何十年も働いてきた人たちです。先代を否定することは、その人たちを否定することになります。
同じ変更でも、「これまでこうしてきた理由は分かる。ただ状況が変わったから、こう変える」という説明にすると、受け止め方がまったく違います。
5. 全部を自分で決めない
責任感の強い後継者ほど、すべてを自分で判断しようとします。ですが、先代が何十年かけて作った判断の勘は、1年では身につきません。
工場長、製造部長、品質管理責任者。それぞれの領域で意見を聞き、判断を委ねる範囲を決める。この形のほうが、結果的に早く進みます。工場長を育てるもご覧ください。
代わりに、1年目にやるべきこと
聞いて回る
全従業員と個別に話す時間を取ってください。10分でも構いません。「困っていることは何か」「変えたほうがよいと思うことは何か」。ここで出てくる話が、その後の打ち手の材料になります。
数字を自分で作り直す
品目別の採算、ライン別の稼働、ロスの分類。既存の資料を読むだけでなく、自分で集計し直します。作る過程で、会社の構造が見えてきます。品目別採算の作り方が出発点です。
小さく変えて、成果を見せる
大きな改革の前に、小さな改善を1つ成功させてください。段取り替えの時間を10分短縮する、ロスを1つ減らす。「変えたら良くなった」という体験を現場と共有することが、次の変更への信頼になります。
2年目以降
1年かけて現場と数字を掌握したら、そこからが本番です。承継後の課題は2代目・3代目が直面する食品工場の課題にまとめています。