まず「どの許可を持っているか」を書き出す
食品衛生法の営業許可は業種ごとに分かれています。1社で複数持っていることも珍しくありません。
- 菓子製造業許可:パン・洋菓子・和菓子など
- そうざい製造業許可:惣菜・弁当のおかずなど
- 複合型そうざい製造業許可:そうざい製造に加えて、食肉や魚介の処理を同じ施設で行う場合
- 食肉製品製造業許可:ハム・ソーセージ・ベーコンなど
- 水産製品製造業許可:魚肉練り製品・干物・魚介の加工品など
- 冷凍食品製造業許可:冷凍した食品の製造
- 清涼飲料水製造業許可:飲料の製造
- 麺類製造業許可:生麺・ゆで麺・乾麺など
- みそ又はしょうゆ製造業許可:発酵調味料
- 食品小分け業許可:他社が製造したものを小分け包装する場合
このほか、乳製品を扱うなら乳処理業や乳製品製造業、漬物なら漬物製造業といった区分があります。 まとめて食品製造業許可と呼ぶこともありますが、実際の手続きは上のような業種ごとの区分で進みます。
実際にどの区分になるかは、扱う品目と工程で決まります。思っていた区分と違うことがあるので、許可の業種区分をどう調べるかの手順で確認してください。
許可ではなく営業届出で足りる業種もあります。届出で足りる場合を参照してください。
譲り方によって扱いが変わる
株式譲渡の場合
株式を売買しても法人格は変わりません。許可を持っているのは法人なので、営業許可はそのまま続くのが基本です。
ただし、代表者や役員が変わることに伴う変更の届出は必要になります。これは許可の取り直しとは別の手続きです。代表交代の手続き一覧で、他の届出とまとめて確認してください。
事業譲渡の場合
営業する主体が変わるため、譲受側が自分で許可を得る必要があります。施設が同じでも、許可は自動的には移りません。
法改正により、事業譲渡や相続・合併・分割の際に営業者の地位の承継を届け出る仕組みが整理されています。ただし、どの場面でどの届出が使えるかは自治体の運用にもよるため、事前に保健所へ相談してください。
詳しくは事業譲渡と許可の関係で扱っています。
個人事業を引き継ぐ場合
個人の許可は個人に紐づきます。親から子へ引き継ぐ場合でも、手続きが要ります。営業許可は承継でどうなるかを先に読んでください。
「引き継ぎ」「名義変更」「地位承継」の違い
相談の場で混ざりやすい言葉です。整理しておきます。
- 食品営業許可の引き継ぎ:日常的な言い方。実際には下の手続きのどれかを指しています
- 食品営業許可の名義変更:許可そのものを別人に付け替える手続きは、原則としてありません。 法人内で代表者が替わる場合の変更届と混同されがちです
- 食品営業許可の地位承継:相続・合併・分割・事業譲渡などで、 営業者としての地位を引き継ぐ考え方。届出(承継届)で扱われます
「名義を書き換えればよい」と思って進めると、必要な届出が漏れます。自社の場面がどれに当たるかを、 保健所に言葉で説明して確認するのが確実です。
食品営業届出の承継
許可ではなく食品営業届出で営業している場合も、営業者が変われば届出をやり直す考え方になります。 届出だからといって何もしなくてよいわけではありません。届出で足りる場合を参照してください。
手続きの落とし穴
1. 届出には期限がある
地位の承継や変更の届出には、期限が定められていることがあります。クロージングの日程を決めるときに、届出の期限も一緒に並べてください。
2. 更新時期と重なる
許可には有効期間があります。承継の時期と更新が重なると、手続きが集中します。許可の更新をどう管理するかで、一覧の作り方を示しています。
3. 資格者が抜ける
食品衛生責任者は、営業の施設ごとに置く必要があります。食肉製品や乳製品など一部の業種では、食品衛生管理者という別の資格者が求められる場合があります。
この人が社長本人なら、退任と同時に体制が欠けます。後任の確保は承継準備の最優先です。衛生管理の責任者を誰にするかを参照してください。
4. 施設の基準を満たさなくなる
許可を取り直す場面では、今の施設が現行の基準を満たすかを改めて見られます。古い施設ほど、想定外の手直しが出ることがあります。施設の基準をどう満たすかで確認してください。
デューデリジェンスで見られること
- 保有している許可の種類と、有効期間
- 許可証の記載と、実際の営業内容が合っているか
- 食品衛生責任者・管理者の設置状況
- 過去の行政指導・改善命令の有無
- 施設の変更を届け出ているか
2番目は見落とされがちです。許可を取ったあとに品目を増やしていて、区分が実態と合っていないことがあります。指摘される前に確認してください。
立入検査への備えとデューデリジェンスの準備で、資料の揃え方を示しています。
まとめ
営業許可は、承継が止まる原因になりやすい一方で、先に確認すれば片付く領域です。自社の許可を書き出し、保健所に相談する。ここから始めてください。全体像は許認可 完全ガイドにまとめています。
※ 営業許可の業種区分、承継の手続き、届出の期限は、取扱品目・工程・自治体の運用によって変わります。また法令の改正で内容が変わることがあります。自社にどれが当てはまるかは、必ず所管の保健所や専門家にご確認ください。