なぜ記録が重要なのか
- 衛生管理を実施したことを示す唯一の手段
- 問題が起きたときに、原因を追跡できる
- 取引先の工場監査で必ず確認される
- 行政の立入検査で確認される
- 承継・M&Aの場面で、体制の証明になる
最後の点が見落とされがちです。記録は後から作れません。3年分の記録が欲しければ、3年前から取り始めている必要があります。
何を記録するか
| 区分 | 記録する内容 |
|---|---|
| 一般衛生管理 | 温度確認、健康確認、洗浄、手洗い、そ族昆虫、使用水 |
| 重要な工程 | 加熱温度と時間、冷却、金属検出機の作動確認 |
| 逸脱と対応 | 基準を外れた事実、対象製品の処置、原因、再発防止 |
| 教育 | 実施日、内容、参加者 |
| 検証 | 見直しの実施日、確認内容、変更点 |
3番目の逸脱と対応の記録が最も重要です。異常がなかった記録より、異常があったときにどう対応したかの記録のほうが、体制の証明になります。
紙とデジタルの使い分け
紙が向いているもの
- 製造現場でその場に書き込むもの
- 手が濡れる・汚れる環境での記録
- チェック方式で済むもの
- 従業員が機器に不慣れな場合
デジタルが向いているもの
- 冷蔵・冷凍設備の温度(自動記録)
- 加熱機器の温度履歴(機器の出力を保存)
- 金属検出機の作動記録
- 集計・傾向分析が必要なもの
- 複数拠点をまとめて管理する場合
温度の自動記録は、費用対効果が最も高いデジタル化です。記録漏れがなくなり、担当者の負担も減ります。温度管理のIoT化をご覧ください。
現実的な組み合わせ
すべてをデジタル化する必要はありません。温度は自動記録、それ以外は紙という組み合わせから始めるのが実務的です。
電子化の進め方は衛生記録の電子化をご覧ください。
続く記録にする5つのコツ
1. 1枚にまとめる
帳票が何種類もあると、書き漏れが起きます。1日1枚を目標にしてください。
2. チェック方式にする
数値を書く必要のない項目は、チェックで済ませます。書く量が減れば、続きます。
3. 動線上に置く
記録する場所が作業場所から遠いと、後でまとめて書くことになります。その場で書ける位置に帳票を置いてください。
4. 誰でも分かる形にする
外国人従業員がいる工場では、写真、イラスト、ふりがなを使います。「異常なし」より「○」のほうが確実です。
5. 確認する人を決める
書きっぱなしにせず、週1回、責任者が目を通して押印する。これがあると、記録の質が保たれます。
やってはいけないこと
- 後からまとめて書く(実測でないことが分かります)
- 毎日同じ数値を書く(測っていないと見られます)
- 異常があったのに「異常なし」と書く
- 記録を修正液で消す(二重線と訂正印が原則)
- 逸脱の記録を残さない
最後が特に問題です。逸脱が一度もない記録は、かえって不自然に見えます。異常が起きること自体は問題ではなく、対応が記録されていることが重要です。
保管期間
記録の保管期間は、製品の賞味期限・消費期限を考慮して定めるのが基本です。期限を過ぎた後も一定期間残すことで、問題が起きたときに遡れます。
具体的な期間は業態や製品によって異なるため、手引書や保健所の指導を確認してください。
承継を見据えるなら、できるだけ長く残しておくことをおすすめします。買い手にとって、記録の蓄積は安心材料です。
保管の方法
- 月ごと、年ごとにファイルする
- 保管場所を決め、誰でも取り出せるようにする
- 水濡れ・紛失のリスクがある場所に置かない
- デジタルの場合、バックアップを取る
「記録はあるが、どこにあるか分からない」という状態は、記録がないのと同じです。買収監査で求められたときに出てこなければ、体制が疑われます。
承継時の引き継ぎ
記録の様式、記入方法、保管場所、確認の頻度。これらを引き継ぎ資料に含めてください。担当者が代わっても運用が途切れないようにすることが重要です。
PMIの場面でも、記録の運用は絶対に止めないのが原則です。PMIの進め方をご覧ください。
※ 営業許可・衛生管理・食品表示の具体的な取扱いは、法令の改正や管轄行政庁の運用によって異なります。実行にあたっては、管轄の保健所等および専門家に必ずご確認ください。