2つの資料の違い
| ノンネームシート | 企業概要書 | |
|---|---|---|
| 渡す相手 | 打診段階の候補すべて | 秘密保持契約を結んだ相手のみ |
| 分量 | A4で1枚 | 20〜50ページ程度 |
| 社名 | 伏せる | 開示する |
| 目的 | 関心の有無を確かめる | 検討・評価してもらう |
ノンネームシートに書くこと
おおむね次の項目です。
- 業種(例:食品製造業/惣菜・弁当)
- 地域(例:関東地方、東北地方)
- 売上規模のレンジ
- 営業利益のレンジ
- 従業員数のレンジ
- 特徴(3〜5項目の箇条書き)
- 譲渡の理由(後継者不在など)
- 希望するスキーム
特定されないための書き方
食品製造業では、次の情報から会社が特定されやすくなります。書かないか、粒度を粗くしてください。
- 独自商品名・ブランド名(最も特定されやすい)
- 特殊な設備の名称(保有社数が少ない設備は決め手になる)
- 取引先の社名(「大手量販店」程度にとどめる)
- 細かい地域表記(市町村名は書かず、地方名にする)
- 受賞歴・メディア掲載(検索すれば分かってしまう)
- 創業年(地域+業種+創業年で絞り込める)
数字はレンジで示します。「売上3億2,400万円」ではなく「3〜5億円」とするだけで、特定の難易度は大きく上がります。
それでも関心を引くには
特定されないよう情報を削ると、今度は魅力が伝わらなくなります。ここで効くのが、「買い手にとっての意味」を書くことです。
例えば次のような書き方です。
- ×「HACCPに対応済み」 → ○「大手量販店の工場監査を継続して通過している体制」
- ×「冷凍設備あり」 → ○「冷凍・チルド両対応のラインを保有し、繁忙期の受託余力がある」
- ×「従業員30名」 → ○「製造リーダー層が定着しており、経営者交代後も現場が回る体制」
買い手が何を見ているかを踏まえると、書くべきことが決まります。買い手は食品工場の何を見ているかを参照してください。
企業概要書に書くこと
秘密保持契約を結んだ後に渡す、詳細な資料です。おおむね次の構成になります。
- 会社概要:沿革、株主構成、組織図、拠点
- 事業内容:品目別の売上と粗利、製造工程、生産能力
- 取引先:構成比、取引の経緯、契約形態
- 製造設備:一覧、導入年、稼働状況、更新見込み
- 許認可・認証:営業許可の内容、衛生管理体制、取得認証
- 人員:年齢構成、技能の保有状況、労務の状況
- 財務:3期分の決算、実態純資産、正常収益力
- 譲渡の条件:希望スキーム、希望時期、従業員の処遇に関する要望
都合の悪いことを書くかどうか
結論としては、書いたほうが有利です。
設備の更新が必要、1社への依存度が高い、未払い残業の可能性がある。これらは買収監査で必ず見つかります。後から出ると「隠していた」と受け取られ、価格の再交渉や破談につながります。
先に開示すれば、それは交渉の前提になります。むしろ「課題を把握していて、対応策も考えている会社」という評価につながることも多くあります。
作るのは誰か
企業概要書はアドバイザーが作成するのが一般的ですが、内容は必ず経営者が確認してください。特に製造工程や技術的な強みは、現場を知らないと正確に書けません。
誤りがあると、買収監査でその点が突かれます。正確さは信頼に直結します。