手続きは4系統に分けて考える
代表交代でやることは多いのですが、次の4つに分けると抜け漏れが防げます。
- 会社法上の手続き(決議)
- 登記
- 許認可・行政への届出
- 実務(金融機関・取引先・システム)
1. 会社法上の手続き
代表取締役の選定方法は、機関設計によって変わります。
- 取締役会設置会社:取締役会の決議で代表取締役を選定
- 取締役会非設置会社:定款の定めに従い、株主総会の決議や取締役の互選など
あわせて、先代が取締役も退任するのか、取締役として残るのかを決めます。役員構成が変わるなら、株主総会での選任決議も必要です。
議事録は必ず作成し、保管してください。M&Aの買収監査では過去の議事録が確認されます。定款と実態のずれは定款・株主名簿の点検で先に確認しておいてください。
2. 登記
代表取締役の変更登記は、変更から所定の期間内に法務局へ申請します。必要書類は機関設計や就任者が既存の取締役かどうかで変わるため、司法書士に依頼するのが一般的です。
あわせて確認したいのが、過去の役員登記が滞っていないかです。任期満了に伴う重任登記が漏れていると、まずその処理から必要になります。
3. 許認可・行政への届出(食品製造業で特に重要)
営業許可
株式譲渡や社内承継のように会社そのものが変わらない場合、食品衛生法に基づく営業許可は継続します。ただし、代表者が変わったことについての届出が必要になる場合があります。
一方、事業譲渡や個人事業からの承継のように営業主体が変わる場合は、扱いが根本的に異なります。手続きを誤ると製造できない期間が生じるため、必ず事前に管轄の保健所へ確認してください。詳しくは食品衛生法の営業許可は引き継げる?で扱っています。
食品衛生責任者
食品衛生責任者は施設ごとに定める必要があります。代表者が兼任していた場合、交代に伴って変更の届出が必要になります。食品衛生責任者の要件と交代の手続きをご覧ください。
その他の許認可・届出
自社の事業内容に応じて、次のようなものが該当することがあります。該当の有無は必ず個別に確認してください。
- 食品リサイクルや廃棄物に関する届出
- 水質汚濁防止法など環境関係の届出
- 高圧ガス・ボイラー等の設備に関する届出
- 労働保険・社会保険の事業主変更
4. 実務
見落とされやすいものを挙げます。
- 金融機関の届出印・代表者変更(借入契約、当座、ネットバンキング)
- 個人保証の扱い(先代の保証を外し、後継者が引き受けるか協議)
- 取引先への通知と、契約書の名義変更
- リース契約・賃貸借契約の名義
- 各種システム・クラウドサービスの管理者アカウント
- 会社案内・ウェブサイト・名刺・請求書の表記
- 官公庁の入札参加資格(該当する場合)
個人保証は、代表交代と同時に自動的に外れるわけではありません。金融機関との協議が必要です。個人保証を外すにはを早い段階で読んでおいてください。
進め方の順序
実務上は、次の順で動くとスムーズです。
- 3〜6か月前:保健所・金融機関に事前相談、必要書類を確認
- 1〜2か月前:主要取引先へ通知、司法書士へ登記の準備を依頼
- 交代日:決議・議事録作成
- 交代後すみやかに:登記申請、行政への届出、金融機関の手続き
- その後1〜2か月:契約・システム・印刷物の名義変更
特に保健所への事前相談は早めに行ってください。自治体によって運用が異なり、必要書類も変わります。