期限は誰が決めるのか
消費期限・賞味期限は、製造者が科学的・合理的な根拠に基づいて設定するものです。行政が個別に定めるものではありません。
つまり、設定した根拠を説明する責任は製造者にあります。
消費期限と賞味期限
| 消費期限 | 賞味期限 | |
|---|---|---|
| 対象 | 品質の劣化が早い食品 | 比較的品質が保たれる食品 |
| 意味 | 安全に食べられる期限 | おいしく食べられる期限 |
| 食品の例 | 惣菜、弁当、生菓子、食肉 | 缶詰、レトルト、菓子、調味料 |
どちらを表示するかは、製品の特性によって判断します。おおむね品質の劣化が早いものが消費期限の対象とされます。
設定の3つの試験
1. 微生物試験
保存期間中に、微生物が増殖して安全性を損なわないかを確認します。
- 一般生菌数、大腸菌群などの推移
- 想定される保存温度で保管し、経時的に測定
- 期限を超えた時点まで測定すると、余裕度が見える
実施の体制は微生物検査の体制をご覧ください。
2. 理化学試験
品質の劣化を数値で確認します。
- pH、水分、水分活性
- 酸価、過酸化物価(油脂を含む食品)
- 粘度、色調
油脂を多く含む製品では、酸価・過酸化物価の推移が重要な指標になります。
3. 官能試験
実際に人が確認します。
- 外観、色、におい、味、食感
- 複数人で評価する
- 評価の基準を決めておく(5段階など)
官能試験だけで設定するのは避けてください。微生物・理化学試験と組み合わせることで、根拠として成立します。
安全係数
試験で得られた期限に対して、一定の余裕を持たせるのが一般的です。
流通中の温度変動、家庭での保管条件、個体差を考慮するためです。試験で「10日は問題ない」という結果でも、期限を7日と設定する、といった形になります。
係数の考え方は、業界団体の手引書等で示されていることがあります。自社でどう設定したかを記録に残してください。
記録に残すこと
次を1つの資料としてまとめます。
- 製品名と規格(配合、包装形態、保存温度帯)
- 実施した試験の内容(項目、方法、実施機関)
- 試験の結果(経時的なデータ)
- 判定の基準
- 安全係数の考え方
- 設定した期限
- 実施日と責任者
この資料が、期限設定の根拠そのものです。製品ごとに作成し、保管してください。
見直しが必要になる場面
一度設定したら終わりではありません。次の場合は、期限の妥当性を再確認してください。
- 配合を変更した
- 原材料の仕入先を変えた
- 包装形態・包材を変更した
- 製造工程を変更した(加熱条件、冷却方法)
- 設備を入れ替えた
- 保存温度帯を変更した
- クレームが発生した
包材の変更は見落とされがちです。ガスバリア性が変われば、品質の保持期間も変わります。
年次の検証に、この確認を組み込むことをおすすめします。検証と見直しをご覧ください。
承継の場面で確認される点
買収監査や取引先の工場監査で、必ず確認される項目です。
- 製品ごとに期限設定の根拠資料があるか
- 試験の実施記録が残っているか
- 配合や工程を変更した際に、見直しをしているか
- 安全係数の考え方が説明できるか
「創業以来この期限でやっている」という説明は通用しません。根拠資料がない場合、承継前に試験を実施して整えておくことをおすすめします。
資料がない場合の対応
- 主力製品から優先順位を付ける
- 外部の検査機関に保存試験を依頼する
- 結果をもとに、現在の期限が妥当か確認する
- 妥当でなければ、期限を見直す
- 根拠資料としてまとめ、保管する
全製品を一度にやる必要はありません。売上の大きい製品、リスクの高い製品から着手してください。
表示との関係
設定した期限は、食品表示のルールに従って表示します。表示の方法(年月日か年月か、表示位置)にも決まりがあります。食品表示法の基本をご覧ください。
※ 営業許可・衛生管理・食品表示の具体的な取扱いは、法令の改正や管轄行政庁の運用によって異なります。実行にあたっては、管轄の保健所等および専門家に必ずご確認ください。