2つの動機

1. 社会的な要請

  • 食品ロス削減に関する法令・計画
  • 取引先からの要請
  • 消費者の関心
  • 環境への配慮を求める投資家・金融機関

2. 経営上の必要

こちらのほうが直接的です。廃棄されるものは、原材料費も加工費も人件費もすべて失われています。

「社会のため」ではなく「利益のため」に取り組むと考えたほうが、実行が続きます。

工場で発生するロス

3段階に分けて把握してください。

段階内容単価の重み
原料ロス前処理での除去、劣化、期限切れ原材料費のみ
工程ロス設備残留、切り替え、不良原材料費+一部の加工費
製品ロス返品、期限切れ、規格外すべてが失われる

製品ロスが最も高くつきますロスの分類をご覧ください。

削減の打ち手

1. 作りすぎを止める

最も効果が大きい打ち手です。

  • 需要予測の精度を上げる
  • 取引先から販促情報をもらう
  • 受注生産の比率を上げる
  • 短時間で追加生産できる体制を作る

4番目が効きます。段取り替えが短ければ、安全側に多く作る必要がなくなります。仕込み計画と需要予測段取り替え時間の短縮をご覧ください。

2. 歩留まりを上げる

  • 前処理の方法を見直す
  • 設備への残留を減らす
  • 過剰充填を減らす
  • 不良の発生を減らす

歩留まりとロスの改善をご覧ください。

3. 在庫を減らす

原料も製品も、滞留すれば期限切れになります

  • 先入先出の徹底
  • 発注ロットの見直し
  • 在庫回転の管理

在庫回転を上げるをご覧ください。

4. 受け皿を作る

それでも出てしまうものに、行き先を用意する

  • 規格外品を別商品の原料にする
  • 訳あり品として直販・ECで販売する
  • 冷凍して保存する
  • 社員販売
  • フードバンクへの提供
  • 飼料化・肥料化

「捨てる」から「使う」への転換です。処理費用が減り、場合によっては収入にもなります。

ただし、提供・販売する場合は、安全性と表示の確認が必要です。期限切れのものを提供することはできません。食品表示法の基本をご覧ください。

商慣行の見直し

業界の慣行が、ロスを生んでいる面があります。

納品期限に関する慣行

賞味期限のうち一定期間を過ぎたものは納品できない、という慣行があります。これが返品・廃棄の原因になることがあります

業界全体で見直しの動きがあります。取引先と協議する余地がないか、確認してみてください。

返品の条件

無条件の返品は、実質的な値引きであると同時に、廃棄の原因です。

返品の条件を取引条件の中で協議することは、正当な申し入れです。価格交渉の環境整備をご覧ください。

期限表示の見直し

賞味期限を「年月日」から「年月」表示にする取り組みがあります。日付の違いによる廃棄が減る効果があります。

ただし、期限設定の根拠が必要です。消費期限・賞味期限の設定根拠をご覧ください。

効果の測り方

  • 廃棄量(kg)と金額
  • 売上高に対する廃棄率
  • 理由別の内訳
  • 廃棄物の処理費用

金額で管理してください。「今月は500kg廃棄」より「今月は80万円捨てた」のほうが、現場に伝わります。

処理費用も含めると、効果はさらに大きくなります。食品廃棄物の処理をご覧ください。

取り組みが評価される場面

1. 取引先との関係

取引先も食品ロス削減の目標を持っていることがあります。「一緒に廃棄を減らしましょう」という提案は、取引先にとってもメリットです。

これを起点に、発注情報の共有や納品条件の見直しを協議できることがあります。

2. 補助金・支援制度

食品ロス削減に関する支援制度があることがあります。食品製造業が使える補助金の種類をご覧ください。

3. 承継・M&A

廃棄率の低さは、管理水準の高さを示す指標です。買い手は、改善余地としても、管理体制の証明としても見ています。

買い手は食品工場の何を見ているかをご覧ください。

まず何をするか

  1. 廃棄の記録を、理由別に取り始める
  2. 1か月分を金額に換算する
  3. 最も金額の大きい理由から対策する

記録がなければ、何も始まりません。まず記録から始めてください。

※ 本記事は一般的な傾向を整理したものです。統計値や制度の内容は時点によって変わります。個別の判断にあたっては、最新の情報をご確認のうえ、専門家にご相談ください。