まず測る

「うちは燃費が悪い」という感覚ではなく、数字を出してください。

  • 車両別:車格・年式による差を把握する
  • ドライバー別:同じ車両でも人によって差が出ます
  • 路線別:走行条件による差
  • 月別:季節による差(暖房・冷房、渋滞)

給油記録と走行距離があれば計算できます。デジタコや燃料カードのデータを使うと自動化できます。デジタコを労務管理にどう使うかをご覧ください。

燃費を左右する要因

運転(改善余地が最も大きい)

  • 急加速・急減速
  • 速度(高速域ほど悪化する)
  • エンジン回転数の使い方
  • アイドリング時間
  • 惰行の活用

同じ車両・同じ路線でも、人によって1割以上差が出ることがあります。ここが最大の改善余地です。

車両

  • 年式(新しいほど燃費が良い傾向)
  • 整備状態(エアクリーナー、インジェクター)
  • タイヤの空気圧と摩耗(タイヤ管理
  • エアロパーツの有無

運行条件

運転指導の進め方

1. データを共有する

まず、全員の燃費を本人に伝えます。順位を貼り出すやり方もありますが、下位の人が萎縮する面もあるため、慎重に判断してください。個別に伝えるほうが効果的なことが多いものです。

2. 具体的な行動に落とす

「燃費を良くしろ」では変わりません。デジタコのデータから、その人の癖を特定してください。

  • 「急加速が月◯回あります。信号の変わり際が多いようです」
  • 「アイドリングが1日平均◯分あります」
  • 「◯km/h以上での走行が◯%を占めています」

3. 良い人のやり方を共有する

燃費の良いドライバーに、何を意識しているかを話してもらうのが最も効きます。同じ立場の人の言葉は説得力があります。安全教育の場で取り上げてください。安全教育の仕組み化をご覧ください。

4. 責める場にしない

燃費の悪さを責めると、無理な運転につながることがあります。安全より燃費が優先されては本末転倒です。「安全を前提に」を必ず添えてください。

安全とセットで効く

燃費の良い運転は、そのまま安全運転です。

  • 急加速・急ブレーキが減る=事故リスクが下がる
  • 車両の消耗が減る=整備費が下がる
  • タイヤの摩耗が減る
  • 保険の等級にも良い影響

燃費改善は、燃料費だけの話ではありません。

評価への反映

燃費を評価項目に入れると、意識が変わります。ただし安全の指標と必ずセットにしてください。

  • 無事故無違反 + 燃費
  • 路線・車格の違いを考慮する(同じ条件で比較する)
  • 順位ではなく、改善幅を評価する方法もあります

評価制度のつくり方をご覧ください。

装備と車両選定

  • アイドリングストップ機能
  • エアロパーツ:長距離では効果が出やすい
  • 燃費の良い車両への更新:更新計画と連動させる(整備費と車両更新計画
  • 適正な車格の選定:過大な車両は燃費が悪い

装備の導入には補助制度が用意されることがあります。名称・要件・時期は年度によって変わるため、最新の情報を確認してください。設備投資と補助金活用をご覧ください。

燃料の調達

  • 給油所との価格交渉(年間使用量をもとに)
  • 自社給油設備の検討(規模による)
  • 燃料カードの条件
  • 給油場所の指定(価格差のある地域)

効果の見える化

改善の効果を金額で示してください。

年間削減額 = 年間走行距離 ÷ 改善前燃費 × 燃料単価 - 年間走行距離 ÷ 改善後燃費 × 燃料単価

金額で示すと、社内の関心が変わります。 「みんなの努力で年間◯円のコスト削減になりました」という共有は、次の取り組みにつながります。

M&Aでの意味

燃費を車両別・ドライバー別に管理している会社は、原価管理ができている会社と評価されます。買い手にとっては、買収後の改善余地も見えます。

燃料費率(売上に対する燃料費の割合)の推移を3期分示せると、説明しやすくなります。直近3期の数字をどう見せるかをご覧ください。

条件を揃えないと比べられない

車両別・ドライバー別に測ると書きました。ただ、そのまま数字を並べると、指導の入口で必ずつまずきます。条件が違うからです。

同じ会社の中でも、長距離を走る車と地場を回る車では、燃費の水準がまったく違います。積んでいる量も、通る道も違う。この状態で数字だけを並べると、条件の悪い運行を担当している人が下位に並びます。

比べるなら、条件を揃えてください。同じ路線を走る人どうし、同じ車格どうし。比較の単位を小さくすると、条件の差が消えて、運転の差が見えます。

揃えられない場合は、本人の過去と比べてください。先月と今月、去年の同じ月と今年。この見方なら、条件がほぼ同じです。改善しているかどうかが分かれば、指導としては足ります。

そして、指導の場で数字を出すときは、この点を先に言ってください。「条件が違うので、他の人とは比べていません。前月のご自身と比べています」。この一言で、受け取られ方が変わります。

デジタコのデータをどう読むか

その人の癖を特定してくださいと書きました。ただ、データを開いても、どこを見ればよいか分からないという声があります。見る順番を決めておくと迷いません。

最初に見るのは、アイドリングの時間です。ここは意識だけで減らせる部分で、本人にも納得されやすい項目です。待機中、荷降ろし中、休憩中。どの場面で長いかまで分かれば、具体的な話ができます。

次に見るのが、急な加速と減速の回数です。回数そのものより、どこで起きているかを見てください。特定の区間に集中しているなら、運転の癖ではなく道の問題かもしれません。

三つ目が、速度の分布です。高い速度域で走っている時間が長ければ、燃費に直結します。ただし、ここは運行の余裕の問題であることが多く、本人だけの責任ではありません。出発が遅い、待機で時間を失っている。原因が配車側にある場合があります。

だから、データを見るときは、運行の記録と並べてください。数字の背後に何があったかが分かって初めて、直せる話になります。

指導が続かない会社の共通点

燃費の指導を始めても、数か月で立ち消えになることがあります。共通しているのは、いくつかの型です。

一つは、最初に全員を対象にしたことです。人数が多いと、一人あたりに割ける時間がなくなり、数字を配るだけになります。まず数人に絞って、丁寧に話してください。効果が出れば、その人が周りに広めます。

二つ目は、伝えるだけで終わったことです。「急加速が多い」と言われても、どうすればよいかが分からなければ変わりません。信号の手前で早めにアクセルを戻す、坂の手前で加速しておく。具体的な操作まで落としてください。

三つ目は、結果を返さなかったことです。指導した翌月、その人の数字がどうなったかを伝えてください。変わっていれば認め、変わっていなければ理由を一緒に考える。この往復がないと、言われっぱなしで終わります。

そして、担当を決めてください。社長が思い出したときにやる形では、続きません。運行管理の担当が月に一度の作業として組み込むのが現実的です。

金額に換算するときの注意

改善の効果を金額で示してくださいと書きました。ここで、示し方を誤ると信用を落とすことがあります。

まず、燃料の単価が変動することを織り込んでください。燃費が改善しても、単価が上がれば支払額は増えます。「削減できた」と言った翌月に請求が増えていると、話が噛み合いません。だから、金額を示すときは、単価を固定した前提で計算していることを明記してください。

次に、走行距離の変化も見てください。距離が減れば燃料費は減りますが、それは改善ではありません。距離あたりの数字で比べる必要があります。

そして、期間を短く取りすぎないでください。一か月では、季節や運行の中身に左右されます。少なくとも三か月、できれば前年の同じ時期と比べてください。

金額を伝えるときは、会社の削減額だけでなく、その人の運行で何が変わったかも添えてください。全社の合計額は、自分の話として受け取られにくいものです。

装備と運用のどちらを先にやるか

装備と車両選定について触れましたが、費用のかかる対策と、かからない対策の順番を整理しておきます。

先に手をつけるべきは、費用のかからないほうです。空気圧の管理、アイドリングの削減、運転の指導。これらは今日から始められて、効果も出ます。

装備の導入は、その後です。理由は二つあります。一つは、運用が変わっていない状態で装備を入れても、効果が埋もれること。もう一つは、効果を測る基準が要ることです。改善前の数字がなければ、入れた装備が効いたのかどうか分かりません。

車両の更新は、さらに先の話になります。ただし、更新の時期が近い車両があるなら、そのときに燃費を選定の基準に入れてください。更新は数年に一度の機会なので、逃すと次まで待つことになります。

そして、装備や車両にかかる費用は、削減できる燃料費と並べて判断してください。何年で回収できるかが見えれば、判断が早くなります。

燃料の調達で確認しておくこと

給油所との価格交渉について触れました。ここは、運転の指導と違って短期間で効く領域なので、確認の手順を示しておきます。

まず、自社の年間の使用量を把握してください。数量が示せなければ、交渉になりません。車両別の集計ができていれば、そのまま使えます。

次に、現在どこでいくらで入れているかを一覧にしてください。複数の給油所を使っている場合、価格差が出ていることがあります。カードの明細を並べれば分かります。

そのうえで、支払いの条件も見てください。単価だけでなく、締めと支払いの時期、割引の条件。単価がわずかに高くても、条件がよければ実質は変わることがあります。

自社に給油の設備を持つ判断は、規模と立地によります。単価は下がりますが、設備の費用、在庫を持つ資金、保守の手間、そして貯蔵に関わる手続きが伴います。導入を検討するなら、これらを含めて何年で見合うかを計算してください。

そして、給油する場所を運行の中で指定できないかも見てください。同じ方面を走っているなら、価格の低い地域で入れる運用にできることがあります。ただし、そのために遠回りしては本末転倒です。

アイドリングをどう減らすか

アイドリングの時間は、指導のなかで最も取り組みやすい項目です。ただ、単に「止めてください」と言うだけでは減りません。

まず、なぜエンジンをかけたままにしているのかを聞いてください。理由の多くは、車内の温度です。夏の待機、冬の仮眠。快適さの問題ではなく、体調に関わる話であることもあります。

だから、減らす前提として、代わりの手段を考えてください。停車中に使える冷暖房の装備、待機の場所の見直し、待機そのものの短縮。装備には費用がかかりますが、燃料と車両の消耗が減るため、期間で見れば見合うことがあります。

もう一つの理由が、習慣です。荷降ろしの間、書類を書く間、そのままにしている。ここは声かけで変わります。デジタコの記録を本人に見せると、自分でも驚くことが多い部分です。

そして、待機中の運用は荷主の現場とも関わります。エンジンを止めていられる環境かどうか。相手の現場に相談する余地がある場合もあります。

減った時間は、そのまま金額に換算できます。効果が見えやすいので、最初の取り組みとして適しています。

燃費の数字を経営に戻す

燃料費率の推移を示せると説明しやすいと書きました。ここは、承継の場面だけでなく、日常の判断にも使えます。

売上に対する燃料費の割合を月ごとに並べてください。この数字が動いたときに、原因は三つのどれかです。燃料の単価が変わった、走り方が変わった、運賃の水準が変わった。

単価の影響を除きたい場合は、距離あたりの燃料使用量で見てください。こちらは自社の運用だけを反映します。二つを並べて見ると、何が起きているかが分かります。

そして、燃料費率が上がったまま戻らないなら、運賃の側を見てください。燃料が上がった分を運賃に反映できていない、という状態が数字に出ています。これは交渉の材料そのものです。

だから、燃費の管理は現場の話であると同時に、交渉の準備でもあります。数字を持っている会社は、費目の上昇を具体的に説明できます。

まとめ

燃費は車両別・ドライバー別に測ることから始めてください。運転の癖が最大の改善余地で、デジタコのデータから具体的な行動に落とすことが有効です。責める場にせず、良い人のやり方を共有し、安全の指標とセットで評価してください。改善効果は金額で示すと社内の関心が変わります。