デジタコで分かること
- エンジンの始動・停止の時刻
- 走行・停車の時間帯
- 速度、走行距離
- 連続運転の時間
- 急加速・急ブレーキなどの挙動
これらは自動で記録され、改ざんが難しいという点で、極めて信頼性の高いデータです。監査でも、労務デューデリジェンスでも、まずここが見られます。
デジタコで分からないこと
一方で、次は記録されません。
- 停車中に何をしていたか:荷待ちか、荷役か、休憩か、仮眠か
- 出勤してから乗車するまでの時間:点呼、点検、朝礼
- 降車後の作業時間:洗車、日報作成、報告
- 車を離れての作業:倉庫内の仕分け、事務所での待機
ここが労働時間の判断で最も重要な部分です。デジタコだけを根拠に労働時間を管理することはできません。
日報と組み合わせる
実務の要点は、デジタコの「いつ止まっていたか」に、日報の「何をしていたか」を重ねることです。
日報の様式は、次を区分して書ける形にしてください。
- 荷待ち(荷主名と場所も)
- 荷役・付帯作業
- 休憩
- 仮眠
- その他の待機
項目が多すぎると書かれなくなります。選択式やチェック式にして、負担を減らすのが定着のコツです。労働時間の把握方法をご覧ください。
拘束時間の集計に使う
多くのデジタコには、拘束時間・休息期間を自動集計する機能があります。次のような使い方ができます。
- 基準を超えそうなドライバーを事前に警告する
- 月次で全ドライバーの拘束時間を一覧化する
- 特定の路線・荷主で時間が膨らんでいることを発見する
重要なのは事後の集計ではなく、事前の警告として使うことです。月末に「超えていました」と分かっても手遅れです。時間外労働の上限規制への対応をご覧ください。
賃金台帳との突合
労務デューデリジェンスや監査で行われるのが、この照合です。
- デジタコ:実際の拘束時間
- 日報:労働時間として扱うべき時間
- 賃金台帳:実際に支払った時間と金額
1と3に差があり、その差が説明できない場合、未払いの疑いとして扱われます。 月次でこの照合を行い、ずれがあればその場で対応してください。未払残業代の整理の進め方をご覧ください。
荷主交渉の材料になる
デジタコと日報から、次が数字で出せます。
- 荷主別の平均荷待ち時間
- 特定の納品先での待機の実態
- 時間帯別の混雑状況
これは待機料や運賃改定を求める交渉の根拠になります。「待たされて困っています」ではなく「御社での平均待機は◯分、月間で◯時間です」と示せるかどうかで、話がまったく変わります。
荷待ち時間の削減、「標準的な運賃」の使い方をご覧ください。
安全管理にも使う
- 急加速・急ブレーキの多いドライバーを把握し、個別に指導する
- 連続運転の状況を確認する
- 速度超過の傾向を見る
- 燃費の良し悪しから運転特性を分析する
これらは安全教育の材料になり、事故の減少と保険料の抑制にもつながります。安全教育の仕組み化をご覧ください。
導入・活用の注意点
1. データを見る担当を決める
導入したが誰も見ていない、という会社が実際にあります。月次で誰が何を確認するかを決めてください。
2. ドライバーに目的を説明する
「監視されている」と受け取られると反発が生まれます。「働いた時間を正しく払うため」「荷主と交渉するため」「事故から守るため」という目的を伝えてください。
3. 指導に使うときは丁寧に
データで責めるのではなく、事実を共有して一緒に改善する姿勢が必要です。使い方を誤ると、離職の原因になります。ドライバーの離職防止をご覧ください。
4. 補助制度を確認する
機器の導入には補助制度が用意されることがあります。名称・要件・時期は年度によって変わるため、最新の情報を確認してください。設備投資と補助金活用をご覧ください。
M&Aでの意味
デジタコのデータが整備され、日報・賃金台帳と照合されている会社は、労務リスクが読める会社として評価されます。逆にデータがない、あるいはあっても使われていない会社は、保守的に見積もられます。
未払残業代が価格に与える影響、評価が上がる会社の条件をご覧ください。
事前の警告として使う設定
事後の集計ではなく事前の警告として使うことが重要だと書きました。実際の設定と運用を示します。
まず、警告を出す水準を決めてください。基準そのものに達してからでは遅いので、手前の段階で知らせる設定にします。どこに置くかは、運行の余裕によります。
次に、警告を誰が受け取るかを決めてください。配車の担当が受け取る形が実務的です。運行を組み替えられる立場でなければ、知らせても対応できません。
そして、警告が出たときの手順を決めてください。次の運行を減らす、他の人に回す、傭車に出す。選択肢が用意されていないと、結局そのまま割り当てることになります。
あわせて、警告が頻発する場合は、設定ではなく運行の側に原因があります。特定の人や便で繰り返し出るなら、そこを見直してください。
そして、警告を無視した記録も残ってしまう点に注意してください。知らされていたのに対応しなかった、という形になります。出た以上は、対応の記録も残す運用にしてください。
日報の様式を定着させる
選択式やチェック式にして負担を減らすのが定着のコツだと書きました。もう少し具体的にします。
まず、区分の数を絞ってください。荷待ち、荷役、休憩、仮眠、その他。五つ程度が上限です。細かく分けるほど、判断に迷い、記入が止まります。
そして、時刻の記入は必要最小限にしてください。到着、作業開始、作業終了、出発。この四つがあれば、待機と作業が分かれます。
荷主名や場所は、あらかじめ印刷しておく方法があります。定期の便であれば、毎回書く必要がありません。
そのうえで、記入する場所と時期を決めてください。その場で書くのか、帰庫してから書くのか。まとめて書く運用では、記憶で埋めることになり、精度が落ちます。
そして、様式を変えた後は、実際に書かれたものを確認してください。想定と違う書き方をしている人がいれば、様式が分かりにくいということです。
照合で差が出たときの見方
差が説明できない場合は未払いの疑いとして扱われると書きました。差が出たときの追い方を示します。
まず、差がどこで生じているかを特定してください。運行の記録では動いているのに、勤怠に記録がない時間。あるいは、日報に作業が書かれているのに、賃金の計算に入っていない時間。
次に、その時間が何だったかを本人に確認してください。記録の書き忘れなのか、区分の誤りなのか、そもそも記録する欄がなかったのか。
そして、原因が記録の様式にあるなら、様式を直してください。個人の書き方の問題として処理すると、同じことが繰り返されます。
原因が計算の設定にあるなら、設定を直してください。この場合、同じ誤りが他の人にも及んでいる可能性があります。
そして、確認した内容と対応を記録してください。差があったこと自体より、確認して対応している事実が重要になります。
目的を説明したうえで使う
監視されていると受け取られると反発が生まれると書きました。この説明を、導入の時点で丁寧に行ってください。
まず、何が記録されるかを正確に伝えてください。曖昧なままだと、実際より広く監視されていると想像されます。記録される項目を具体的に示すほうが、不安が小さくなります。
そして、何に使うかを伝えてください。働いた時間を正しく計算するため、荷主と条件を交渉するため、事故から守るため。この三つが主な用途です。
あわせて、何に使わないかも伝えてください。個人の評価には使わない、と決めているなら、そう明言してください。そして、実際に使わないでください。一度でも使えば、以後の記録は当てになりません。
データを見る担当も明確にしてください。誰でも見られる状態は、不安の原因になります。
そして、集計の結果を本人に返してください。自分の記録がどう使われ、何が変わったか。これが見えれば、協力が続きます。
見る担当と見る項目を決める
導入したが誰も見ていないという会社があると書きました。見る体制の作り方を具体的にします。
まず、月次で見る項目を決めてください。全部を見ようとすると続きません。拘束時間の集計、基準に近い人の一覧、急な操作が多い人。この三つで足ります。
そして、それぞれを誰が見るかを割り振ってください。時間の管理は運行の担当、運転の傾向は安全の担当。同じ人が全部を担うと、負担が偏ります。
見る時期は、月の締めに合わせてください。他の集計と同じ時期にまとめると、資料が揃っていて効率的です。
そして、見た結果を一行でも残してください。何を確認し、気になる点があったか。この記録があると、確認が続いていることが示せます。
あわせて、週の途中でも見る仕組みを作ってください。月次だけでは、その月のうちに手を打てません。
荷主別の集計をどう出すか
荷主別の平均荷待ち時間が出せると書きました。実際に出すための条件を補足します。
まず、日報に荷主名または現場名が記録されている必要があります。運行の記録だけでは、どこで止まっていたかは分かっても、それがどの荷主かまでは結びつきません。
そして、記録の書き方を揃えてください。同じ現場が人によって違う名称で書かれていると、集計できません。あらかじめ一覧を作り、そこから選ぶ形にしてください。
集計の単位は、荷主別だけでなく現場別にも出してください。同じ荷主でも、拠点によって状況が違うことがあります。
そして、期間は数か月分を並べてください。一か月では、たまたまと言われます。推移が見えると、悪化しているかどうかも分かります。
出した数字は、社内でも共有してください。配車の判断にも使えますし、記録を書いている人にとっては、自分の記録が使われている実感になります。
運転の傾向を指導につなげる
急加速や急ブレーキの多いドライバーを把握し個別に指導すると書きました。指導につなげる方法を補足します。
まず、回数だけを見て順位を付けないでください。走る路線によって、条件が違います。同じ路線を走る人どうしで比べるか、本人の過去と比べる形にしてください。
そして、どこで起きているかを見てください。特定の区間に集中しているなら、道の条件かもしれません。運転の癖ではなく、その区間の問題である可能性があります。
指導の場では、事実から入ってください。数字を示し、心当たりを聞く。責める形にすると、次から記録を意識した運転になり、実態が見えなくなります。
そして、改善を一点に絞ってください。全部を直そうとすると、何も残りません。
次に会うときに、結果を一緒に見てください。この往復があって、初めて指導になります。記録に残すだけの作業にしないでください。
機器を入れ替えるとき
導入した機器を後から入れ替える場面もあります。そのときに気をつける点を挙げます。
まず、過去のデータをどうするかを確認してください。古い機器のデータが引き継げるか、引き継げないなら書き出して保管できるか。必要な期間の記録が残らなくなると困ります。
次に、集計の基準が変わらないかを確認してください。同じ項目でも、機器によって計測や集計の仕方が違うことがあります。前後で数字が変わると、推移が読めなくなります。
そして、日報や勤怠との連携も見直してください。これまで手作業で突き合わせていた部分が自動化できる場合があります。逆に、これまで繋がっていたものが切れることもあります。
入れ替えの時期は、繁忙期を避けてください。慣れるまでの期間は、記録が乱れます。
そして、しばらくは新旧の記録を並べて確認してください。数字が想定どおり出ているかを確かめてから、切り替えを完了させてください。
まとめ
デジタコは客観的な運行記録ですが、停車中の内容までは分かりません。日報と組み合わせて初めて労働時間の管理になります。事後集計ではなく事前警告として使い、月次で賃金台帳と突き合わせてください。荷主交渉と安全教育の材料としても活きます。
※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。労働時間・賃金に関する具体的な取扱いは、法令の改正や個別の労働条件、実際の運用によって異なります。是正を検討される際は、社会保険労務士等の専門家にご確認ください。