実車率とは
総走行距離のうち、荷物を積んで走った距離の割合です。
実車率 = 実車距離 ÷ 総走行距離
あわせて見たいのが実働率(実働日数 ÷ 営業日数)です。実働率は「車両が動いているか」、実車率は「動いている間に稼げているか」を表します。
目安は業態・車種・エリアによって大きく異なるため、他社比較より自社の過去との比較が有効です。
空車が生まれる原因
- 帰り荷がない:片道輸送が中心の構造
- 回送距離が長い:営業所と積地・卸地の位置関係
- 荷主の指定:他社の荷物を積めない契約になっている
- 配車の組み方:往路と復路を別々に考えている
- 車種のミスマッチ:帰り荷はあるが車両が合わない
3は意外に多く、契約を見直すだけで改善できる場合があります。
帰り荷を探す方法
- 既存荷主に相談する:同じ方面の荷物を持っていないか
- 同業者との情報交換:地域の協同組合や横のつながり
- 求貨求車システム:マッチングサービスの活用
- 利用運送の活用:自社で運べない荷を取り次ぐ
- 復路を前提とした営業:往路の荷主を探す際、復路もセットで提案する
5の発想が有効です。「この方面に定期便があるので、復路の荷物を安定して運べます」という提案は、荷主にとっても魅力があります。
配車の工夫
- 往路と復路をセットで組む前提に切り替える
- 複数車両の運行を面で見て、積み替えや中継を検討する
- 近距離と長距離を組み合わせ、空き時間を埋める
- 実車率の低い運行を毎月洗い出し、原因を潰す
共同配送・混載
1社では満載にならない荷物を、複数荷主分まとめて運ぶ方法です。積載効率が上がり、実車率も改善します。荷主側にとっても輸送費の削減になるため、提案として通りやすい施策です。
「安くても積む」の判断
空車で帰るくらいなら安くても積む、という判断は一定の合理性があります。ただし基準が必要です。
変動費(燃料・高速代など)を上回るかが最低ラインです。それを下回るなら、積まないほうが損失は小さくなります。
この判断には車両別の原価が必要です(車両別原価の出し方)。
承継・M&Aでの意味
実車率・実働率は、買い手が収益力を測る際に見る指標です。数値そのものより、把握して改善に取り組んでいるかが評価されます。
まず、どこで空車になっているかを特定する
実車率を出すだけでは、改善の手がかりになりません。全体の数字が低いことは分かっても、どの運行のどの区間で空いているかが分からないからです。
特定の仕方は難しくありません。日報の運行ごとに、積んで走った区間と空で走った区間を分けて記録してください。積地までの回送、卸地から次の積地までの移動、帰庫までの距離。この三つに分けるだけで、どこが長いかが見えます。
一か月分を並べると、傾向が出ます。特定の路線でいつも帰りが空いている、営業所から積地までの回送がそもそも長い、卸地から帰庫までが遠い。原因の場所によって、打ち手が変わります。
回送が長いなら、営業所の位置や車両の置き場所の問題です。帰りが空いているなら、荷物を探す話になります。同じ「実車率が低い」でも、まったく別の課題です。
そして、区間ごとの距離が分かれば、改善したときの効果も計算できます。「この区間に荷物を積めれば、月にこれだけ」という形で示せると、社内でも動きやすくなります。
帰り荷を探すときに詰まる場所
帰り荷を探す方法をいくつか挙げましたが、実際にやってみると、たいてい同じところで詰まります。
一つは、時間が合わないことです。荷物はあるが、積める時刻に間に合わない。あるいは、待っている時間が長すぎて、次の日の運行に影響する。この場合は、卸しの時刻を早められないかを先に確認してください。往路の条件を少し変えるだけで、復路の選択肢が増えることがあります。
二つ目は、車両が合わないことです。荷台の形、冷凍冷蔵の有無、パワーゲートの要否。車格のミスマッチは、その場では解決できません。ただ、同じ方面を走る車両の構成を見直すときの材料にはなります。
三つ目は、単発で終わることです。一度きりの荷物では、運行の組み方が変わりません。だから、探すときは継続して出る荷物かどうかを必ず確認してください。継続しない荷物は、あくまで補助です。
そして、探す担当を決めてください。運転している本人が探すのは無理があります。誰かが日中に動く形でないと、続きません。
復路込みの提案をどう作るか
復路をセットで提案する発想が有効だと書きました。この提案を実際に組み立てる手順を整理します。
まず、自社が定期的に走っている方面を一覧にしてください。どの日に、どの区間を、どの車格で走っているか。これが提案の材料です。
次に、その方面から戻ってくる荷物を持っていそうな相手を考えます。往路の荷主と同じ業界とは限りません。むしろ、逆の流れを持つ業界のほうが噛み合います。
提案の形は、単純なほうが伝わります。「この曜日に、この区間を、この車格で走っています。復路にお使いいただけませんか」。相手にとっては、決まった日に確実に運べる手段が増えるという話になります。
そして、価格の出し方に注意してください。復路を埋めるための仕事だからと安く出しすぎると、その水準が既定になります。あくまで自社の必要な水準を基準にし、往復で採算に乗るかを確認してから提示してください。
断られても、往路の情報は残ります。次に同じ方面の話が出たときに、すぐ動けます。
安くても積むかの線をどこに引くか
変動費を上回るかが最低ラインだと書きました。ここを実務で使える形にしておきます。
まず、その運行にかかる変動費を出してください。燃料、高速代、フェリー代。走る距離が分かれば計算できます。乗務する人の時間外の割増が発生するなら、それも変動する費用として入れてください。
次に、この線を超えているかどうかを、その場で判断できるようにします。担当者が一件ずつ計算するのは現実的ではないため、区間ごとの目安を先に作っておいてください。この方面ならいくら、この距離帯ならいくら。表があれば即答できます。
そして、線を下回る依頼を受けた場合は、理由を記録してください。関係の維持、繁忙期の見返り、次の仕事につながる見込み。理由があるなら構いませんが、記録がないと惰性で続きます。
注意したいのは、この判断を続けているうちに、それが通常の水準として定着することです。相手にとっては、安く受けてくれる会社になります。だから、安く受けた場合は、必ずその旨を伝えてください。「今回は空きがあったのでこの金額です」と言い添えるかどうかで、次の交渉の余地が変わります。
契約が空車を生んでいる場合
荷主の指定で他社の荷物を積めない契約になっている場合があると触れました。これは意外に多く、しかも見直せることがあります。
まず、その制限が契約書に書かれているのか、慣行として続いているだけなのかを確認してください。書かれていないなら、話をする余地があります。
書かれている場合も、理由を確認する価値があります。荷物の性質上、混載できないのか。情報の管理の問題なのか。安全や品質の懸念なのか。理由が分かれば、条件付きで緩められる場合があります。
提案としては、区間を限る、品目を限る、事前に承諾を得る形にする。全面的な解除を求めるより通りやすくなります。
そして、制限が動かない場合は、その分の負担が運賃に含まれているかを確認してください。専属で使われるということは、他の仕事を受けられないということです。この点は、運賃の交渉で説明できる材料になります。
共同配送を持ちかけるときの順番
共同配送は提案として通りやすい施策だと書きました。ただ、どこから話を始めるかで、進み方がまったく違います。
最も進めやすいのは、同じ荷主の中で複数の届け先をまとめる形です。相手は一社なので、調整の相手も一人。運賃の分け方でもめることもありません。まずここから探してください。
次に進めやすいのが、同業者との組み合わせです。地域のつながりや協同組合を通じて、同じ方面を走っている会社と話す。片方の帰り、片方の往きが噛み合えば、両方の実車率が上がります。
最も難しいのが、複数の荷主の荷物をまとめる形です。積み合わせの可否、着時刻の調整、事故のときの責任、運賃の按分。決めることが多く、時間がかかります。ただし、まとまったときの効果はいちばん大きくなります。
どの形でも、最初に決めておきたいのは責任の所在です。誰の荷物がどこで傷んだのか分からない、という事態を避ける必要があります。積み込みの順序と記録の取り方を、始める前に決めてください。
数字が改善したことをどう確かめるか
実車率の低い運行を毎月洗い出すと書きました。洗い出した後、打った手が効いたかどうかを確かめる方法を持っておいてください。
見るのは、対象にした運行の実車率です。全社平均で見ると、他の要因に紛れて分かりません。手を打った運行だけを追ってください。
あわせて、距離あたりの売上も見てください。実車率が上がっても、安い荷物で埋めただけなら、収益は改善していません。実車率と採算は、別々に確認する必要があります。
そして、改善した状態が続いているかを数か月見てください。一時的に荷物があっただけなら、また戻ります。続いているなら、その形が定着したということです。
効果が確認できたら、同じやり方を他の運行にも当ててください。効かなかったなら、原因の見立てが違っていたことになります。区間ごとの記録に戻って、見直してください。
配車を面で見るとはどういうことか
複数車両の運行を面で見て積み替えや中継を検討する、と書きました。これは効果が大きい一方で、実際にやろうとすると難しい部分です。
面で見るというのは、一台ずつの往復を考えるのではなく、同じ日に走っている車両全体をひとつの絵として見ることです。A車が向こうで空になり、B車がその近くを通る。この二つが見えていれば、荷物を渡す選択肢が生まれます。
そのためには、その日の運行が一覧で見える状態が必要です。担当者の頭の中にしかないと、組み替えの余地に気づけません。ホワイトボードでも表でも構いませんが、全車両が一枚に並んでいることが条件です。
中継を実際に行うには、場所と時間の決めごとが要ります。どこで、何時に、どう受け渡すか。段取りが決まっていないと、待ち時間が増えて逆効果になります。まずは、同じ方面を走る二台で試してみてください。
そして、乗務する人の理解が必要です。自分の運行が途中で変わることを、負担と感じる人もいます。目的と、それによって何が良くなるのかを先に共有してください。
実車率だけを追わないために
実車率は改善の余地を示す指標ですが、これだけを目標にすると、判断を誤ることがあります。
たとえば、安い荷物を積んで空車を減らせば、数字は上がります。しかし、その運行で残る金額が減っていれば、経営としては後退です。数字が良くなったこと自体を成果としないでください。
もう一つ、実車率を上げるために遠回りをしてしまう場合があります。荷物を拾うために大きく迂回すると、走行距離そのものが伸びます。積んで走った距離は増えても、時間と燃料が余分にかかっています。
だから、実車率は単独で見ず、その運行で残った金額とセットで見てください。実車率が上がり、かつ残る金額も増えているなら、本当の改善です。
指標は、現場に方向を示す道具です。示し方を間違えると、数字を良くするための行動が始まります。何のために上げるのかを、共有してから使ってください。
営業所や車庫の位置が効いている場合
回送距離が長いという原因を挙げました。これは配車の工夫では埋めきれないことがあり、その場合は置き場所そのものを見直す話になります。
まず、車両ごとに回送の距離を集計してください。どの車が、月にどれだけ空で走っているか。数字が出ると、営業所からの距離が効いている車両が見えます。
見直しの選択肢はいくつかあります。夜間だけ積地の近くに置かせてもらう、営業所を移す、拠点を増やす。順に負担が重くなるので、軽いものから検討してください。荷主の敷地に置かせてもらえるなら、費用をかけずに解決することがあります。
ただし、車庫の場所には決められた要件があり、変更には手続きが必要です。実態だけ動かして届出をしていない、という状態にならないよう、動かす前に確認してください。
そして、拠点を増やす判断は、回送の削減だけで決めないでください。人の配置、点呼の体制、管理者の選任など、伴うものが多くあります。削減できる距離と、増える負担を並べて比べてください。
まとめ
実車率は、測れば改善の余地が見えてきます。既存荷主への相談、復路込みの営業、配車の組み替え。できるところから着手してください。
指標の設計や改善の進め方についてご支援します。