下道が安いとは限らない

高速代を節約した場合、次のコストが増えます。

  • 時間:拘束時間が延びる=人件費が増える
  • 燃費:信号・渋滞での停止と発進が増える
  • 車両の消耗:ブレーキ、タイヤ、駆動系
  • 疲労:ドライバーの負担が大きい
  • 事故リスク:一般道は交差点・歩行者がある
  • 機会損失:その時間で他の仕事ができた

時間あたりの人件費を計算すると、高速代を上回ることは珍しくありません。キロ単価・時間単価の考え方をご覧ください。

計算してみる

次を比較してください。

項目高速利用下道
所要時間  
走行距離  
高速料金 0
燃料費(燃費差を反映)  
時間コスト(時間×時間あたり人件費)  
合計  

主要な路線について一度計算し、基準を決めてください。 毎回考える必要はありません。

拘束時間の規制が判断を変えた

下道で時間がかかると、拘束時間の基準に収まらなくなることがあります。この場合、高速利用は選択ではなく必要になります。

また、連続運転の制限との関係でも、高速利用のほうが休憩を計画的に取りやすい面があります。時間外労働の上限規制への対応をご覧ください。

荷主への請求

高速代を誰が負担するかを、契約で明確にしてください。

  • 運賃に含む(実費は自社負担)
  • 実費を別途請求する
  • 一定額まで自社、超過分は請求

「運賃に含む」の場合、実際にどれだけ使っているかを把握しておかないと、値上げ交渉の根拠が作れません。ETCの利用明細から、荷主別・路線別に集計してください。

納品時刻の指定が厳しい荷主については、「時間指定を守るには高速利用が必要」という説明が成り立ちます。荷主との契約書を整える運賃交渉の進め方と代替案をご覧ください。

割引の活用

時間帯や利用状況に応じた割引制度があります。制度の内容・条件・適用期間は見直されることがあるため、最新の情報を確認してください。

  • ETCコーポレートカードなどの法人向けの仕組み
  • 時間帯による割引
  • 利用額に応じた割引

制度を使っていない会社が実際にあります。 年間の高速代が大きいほど、確認する価値があります。

判断を現場任せにしない

ドライバー個人の判断に委ねると、次の問題が生じます。

  • 基準がばらつく
  • 「節約している」つもりで、時間コストが増える
  • 間に合わせるために無理な運転をする

路線ごとに会社が基準を決めて指示してください。「この路線は原則高速、この区間は下道」という形です。

実績を把握する

  • ETCの利用明細を月次で確認する
  • 車両別・路線別・荷主別に集計する
  • 予定と実績のずれを確認する

集計すると、特定の路線・特定のドライバーで想定以上に使っていることが分かることがあります。理由を確認してください(渋滞、指示、習慣)。

M&Aでの意味

高速代は運送会社のコストの中で無視できない比重を占めます。荷主別に把握し、請求の取り決めが明確な会社は、原価管理ができていると評価されます。

逆に「なんとなく使っている」状態は、改善余地として見られます。車両別の原価管理買い手は運送会社のどこを見るかをご覧ください。

基準を決めるまでの手順

主要な路線について一度計算し基準を決めてくださいと書きました。この作業を実際に進める手順を示します。

まず、対象にする路線を選んでください。全部を計算する必要はありません。運行の回数が多い路線から、五つほど選べば足ります。これで大半の判断がつきます。

次に、その路線について実際の数字を集めます。高速を使った場合と使わなかった場合の所要時間は、過去の運行記録から拾えます。両方の実績がない場合は、一度ずつ走って測ってください。

そして、時間あたりの人件費を用意します。ここは車両別の原価から出せます。賃金と社会保険料の会社負担分を、稼働の時間で割った額です。

この三つが揃えば、計算は単純な足し算になります。高速料金と燃料費の差、時間コストの差。合計で比べれば、どちらが安いかが出ます。

結果は、路線ごとに一枚の表にしてください。「この路線は原則高速」「この区間は下道」と書いてあれば、現場で迷いません。

そして、この基準は燃料の単価や賃金が変われば変わります。年に一度は計算し直してください。

時間コストをどう見積もるか

時間あたりの人件費を計算すると高速代を上回ることは珍しくないと書きました。ただ、この時間コストの見積もりには注意が要ります。

単純に賃金を時間で割った額だけでは、実態より小さく出ます。その時間が時間外に当たるなら、割増の分を加える必要があります。長距離の運行で遅くなる場合、この差は大きくなります。

あわせて、車両が拘束されている時間の価値も入れてください。その車両がその時間、他の仕事に使えないという意味では、機会の損失があります。ただし、次の仕事が実際にあるかどうかで意味が変わります。仕事が余っている状況でなければ、この分は小さく見積もってください。

そして、翌日への影響も考えてください。帰庫が遅くなれば、休息の時間が必要になり、翌日の出発が遅れます。一日の運行だけを見て判断すると、この影響が抜けます。

逆に、時間に余裕のある運行では、時間コストを大きく見積もる必要はありません。急ぐ理由がないなら、下道を選ぶ判断も合理的です。

だから、路線ごとの基準には、時間の制約があるかどうかも書き添えてください。同じ路線でも、着時刻の指定がある便とない便では、判断が変わります。

現場が基準どおりに動かないとき

判断を現場任せにしないと書きました。ただ、基準を決めても、そのとおりに動かないことがあります。理由を知っておいてください。

一つは、節約が評価されると思っている場合です。会社が費用の削減を強く言っていると、良かれと思って下道を選びます。だから、基準を伝えるときに、高速を使うことが会社の方針であると明確にしてください。使わないことが節約ではない、と伝わる必要があります。

二つ目は、時間に余裕があるときです。早く着きすぎても待つだけなら、下道でよいと考えます。これ自体は合理的な判断なので、頭ごなしに否定しないでください。基準に「時間に余裕がある場合は下道でよい」と書いておけば済みます。

三つ目は、習慣です。長く同じ路線を走っている人は、自分のやり方を持っています。変えてもらうには、なぜ変えるのかを数字で示す必要があります。

そして、実績と基準がずれている場合は、まず理由を聞いてください。渋滞を避けた、通行止めがあった、指示があった。正当な理由があることも多くあります。

荷主に請求する場合の実務

実費を別途請求する形にする場合、運用を整えておく必要があります。

まず、請求の根拠が示せることです。利用の明細から、どの運行でいくら使ったかを対応づけられる形にしておいてください。運行と明細が結びつかないと、確認を求められたときに答えられません。

次に、どこまでを請求するかの線です。指定された経路の分だけか、迂回した分も含めるか。遅延を避けるために追加で使った分はどうか。決めておかないと、そのつど判断が分かれます。

そして、請求の時期です。運賃と同じ月に請求するのが基本ですが、明細の締めが運賃の締めとずれる場合があります。ずれる場合は、翌月に回すのか、概算で計上するのかを決めてください。

運賃に含む形にしている場合も、実際の使用額は把握しておいてください。含んでいる前提の金額と、実際にかかっている額がずれていれば、それが交渉の材料になります。

そして、着時刻の指定が厳しい荷主については、その指定を守るために高速が必要である旨を、契約や見積の段階で明記しておいてください。後から説明するより、はるかに通りやすくなります。

安全と時間の関係

下道では事故のリスクが上がると触れました。この点は、費用の比較とは別に、独立して考える必要があります。

時間を詰めるために下道を選び、結果として急ぐ運転になる。この構図が最も危険です。費用を削るつもりが、事故という形で大きな損失につながります。

だから、運行を組む段階で、余裕のある時間を置いてください。下道で行くなら、その分の時間を確保する。確保できないなら、高速を使う。この順序で考えます。

そして、乗務する人が自分の判断で急がなくて済む状態を作ってください。着時刻に間に合わない見込みが立った時点で、連絡して調整できる仕組みがあれば、無理な運転は起きにくくなります。

疲労の面でも差があります。信号と交差点の多い道を長時間走るのは、負担が大きくなります。長距離の運行では、この差が事故のリスクに直結します。

費用の計算では表れませんが、事故が一件起きれば、削減した高速代の何年分もが失われます。判断の際には、この点を含めてください。

実績の集計から見えること

車両別・路線別・荷主別に集計すると書きました。集計して見えることを、具体的にしておきます。

まず、荷主別に見ると、どの取引で高速代が重いかが分かります。時刻の指定が厳しい荷主ほど、使用額が大きくなります。この金額は、その取引の採算に直接効きます。

次に、路線別に見ると、想定と実績のずれが見えます。原則下道と決めた路線で使用が多いなら、基準が実態に合っていない可能性があります。

そして、車両別あるいは人別に見ると、同じ路線でも差が出ることがあります。この差の理由は、聞かなければ分かりません。習慣なのか、出発の遅れなのか、指示の違いなのか。

集計の頻度は月次で足ります。明細は月ごとに届くため、そのタイミングで確認する運用にしてください。

そして、集計した結果は、荷主別の採算の表に組み込んでください。高速代を別に管理していると、その取引の本当の採算が見えません。

割引や法人向けの仕組みを確認する

制度を使っていない会社が実際にあると書きました。確認の手順を示しておきます。

まず、現在どういう契約で支払っているかを確かめてください。車両ごとに個別のカードを使っているのか、法人向けの仕組みを使っているのか。ここが把握できていない会社があります。

次に、年間の使用額を集計してください。額が分かれば、どの仕組みが有利かを比べられます。台数と使用額によって、適した形が変わります。

そして、制度の内容と条件を確認してください。適用の条件、必要な手続き、期間。これらは見直されることがあるため、古い情報のまま判断しないでください。所属している団体や、発行元の案内で確認できます。

手続きに手間がかかる場合もありますが、年間の使用額が大きいほど、一度の手間で得られる効果は大きくなります。

あわせて、カードの管理も整えてください。誰がどの車両で使っているかが分からないと、明細を車両別に集計できません。管理の方法を決めておいてください。

拘束時間の制約から逆算する

下道で時間がかかると拘束時間の基準に収まらなくなることがあると書きました。この場合、判断の順序が変わります。

費用の比較から入るのではなく、まず時間の制約から入ってください。その運行を拘束時間の範囲で終えられるか。終えられないなら、高速の利用は費用の問題ではなく、運行を成立させる条件になります。

この確認は、運行を組む段階で行ってください。走り出してから足りないことが分かると、途中で調整する形になり、無理が生じます。

あわせて、休憩と休息の時間も織り込んでください。連続して運転できる時間には制限があり、その分だけ全体の所要時間が伸びます。高速のほうが休憩を計画的に取りやすい面があります。

そして、時間が収まらない運行については、高速の利用だけで解決しないこともあります。中継を入れる、二人で乗る、出発の時刻を変える。運行の組み方そのものを見直す必要がある場合もあります。

この検討にかかる費用は、荷主に説明する材料になります。時刻の指定を守るために何が必要かを、具体的に示せるからです。

ドライバーに基準を伝えるとき

路線ごとに会社が基準を決めて指示すると書きました。伝え方によって、受け止められ方が変わります。

まず、理由を添えてください。「この路線は原則高速」とだけ言われると、費用を気にしなくてよいのかと戸惑います。時間と安全を含めて計算した結果である、と伝えれば納得が得られます。

次に、例外の扱いを明示してください。渋滞や通行止めで判断が必要になる場面は必ずあります。そのときに誰に連絡して判断を仰ぐのか、あるいは現場の判断でよいのか。決めておけば迷いません。

そして、基準を守ったことで着時刻に間に合わなかった場合の責任も、会社が持つと伝えてください。ここが曖昧だと、結局は自分の判断で急ぐことになります。

基準は紙にして、車内に置けるようにしてください。口頭で伝えただけでは、しばらくすると曖昧になります。

そして、実績を見て基準が実態に合っていないと分かったら、直してください。守れない基準を掲げ続けると、基準そのものが軽く扱われるようになります。

まとめ

高速代の節約は、時間コスト・燃費・車両消耗・事故リスクまで含めると損になることがあります。主要路線について一度計算し、会社として基準を決めてください。拘束時間の規制により、高速利用が必要になる場面も増えています。契約での負担の取り決めと、実績の把握を進めてください。