2つの課税方式
贈与税には、大きく2つの計算方式があります。どちらを使うかで、その後の扱いが変わります。
| 暦年課税 | 相続時精算課税 | |
|---|---|---|
| 基本の考え方 | 年ごとに贈与額を計算し課税 | 贈与時は軽く、相続時に精算 |
| 基礎控除 | 年ごとに一定額 | 年ごとの基礎控除と、累計の特別控除 |
| 相続時の扱い | 一定期間内の贈与は相続財産に加算 | 贈与財産を相続財産に加算して精算 |
| 選択の変更 | — | 一度選ぶと暦年課税に戻せない |
制度の内容は改正されることがあります。適用にあたっては最新の取扱いを税理士に確認してください。
暦年課税の使い方
毎年、基礎控除の範囲内あるいはそれに近い額で株式を贈与していく方法です。時間はかかりますが、負担を分散できます。
向いている場合
- 承継まで10年以上の時間がある
- 株式の評価額がそれほど高くない
- 後継者が複数いて、それぞれに分けたい
注意点
- 相続開始前の一定期間内の贈与は、相続財産に加算される
- 贈与の事実を明確に残す必要がある(贈与契約書、株主名簿の書き換え)
- 評価額が上がっていくと、後の贈与ほど負担が重くなる
最後の点は重要です。会社が成長すると株価も上がるため、早く始めるほど有利になります。
相続時精算課税の使い方
一定額まで贈与時の税負担を抑えられる一方、相続時にその贈与財産を相続財産に加算して精算する方式です。
向いている場合
- まとまった株式を一度に移したい
- 今後、株価が上がる見込みがある(贈与時の価額で固定される)
- 承継までの時間が限られている
注意点
- 一度選択すると、その贈与者からの贈与について暦年課税に戻せない
- 相続時に精算されるため、相続税の負担がなくなるわけではない
- 逆に株価が下がった場合、贈与時の高い価額で固定されてしまう
株価の見通しが判断の分かれ目です。設備投資や事業拡大で今後の利益成長が見込めるなら、早めに固定する意味があります。
贈与の事実を残す
形式が整っていないと、贈与がなかったものとされる可能性があります。次を必ず行ってください。
- 贈与契約書を作成し、双方が署名・押印する
- 株主名簿を書き換える
- 法人税申告書の別表二を更新する
- 贈与税の申告を行う(納税額がゼロでも申告が必要な場合がある)
特に株主名簿と別表二の更新は忘れられがちです。実態と合っていないと、M&Aの買収監査でも指摘されます。定款・株主名簿の点検をご覧ください。
他の相続人への配慮
後継者だけに株式を集中させると、他の相続人との間で不公平が生じます。生前贈与は遺留分の計算において考慮されることがあります。
株式以外の財産の配分、遺言書の作成、除外合意・固定合意の活用。これらとセットで設計してください。遺留分への配慮と遺言書の作り方をご覧ください。
食品製造業での注意点
株価が変動しやすい
原材料価格や設備投資によって、利益と純資産が年ごとに動きます。評価額も毎年変わります。
大きな設備投資を行った年、役員退職金を支給した年は評価が下がる傾向があります。贈与のタイミングを、これらに合わせることで負担を抑えられる場合があります。自社株評価を下げる打ち手をご覧ください。
議決権に注意
少しずつ贈与していく途中では、後継者の議決権が過半数に届きません。先代に相続が発生すると、残りの株式が他の相続人に分散するリスクがあります。
贈与の途中段階でも、遺言によって残りの株式の行き先を定めておいてください。
事業承継税制との関係
事業承継税制を使う場合、贈与のやり方に要件があります。少しずつ贈与する方法とは相性が異なるため、どちらを選ぶかを先に決める必要があります。事業承継税制(納税猶予)をご覧ください。
※ 税務の取扱いは、法令の改正や個別の事情によって異なります。実行にあたっては、顧問税理士等の専門家に必ずご確認ください。