名義変更が必要になる場面
- 相続によって不動産を承継する
- 生前贈与で後継者に移す
- 個人名義の工場を会社に売却する
- 会社分割・合併で不動産が移転する
- 事業譲渡で不動産を含める
かかる税と費用
登録免許税
登記の申請時に納める税です。不動産の価額に一定の税率を乗じて計算されます。税率は原因(相続・贈与・売買など)によって異なり、相続による移転のほうが低く設定されています。
工場用地は面積が大きく評価額も高いため、税額が相応の金額になります。事前に概算を出しておいてください。
不動産取得税
不動産を取得したときに課される地方税です。相続による取得は原則として課税されませんが、贈与や売買では課税されます。
一定の要件を満たす場合の軽減措置があることもあるため、自治体に確認してください。
司法書士への報酬
登記手続きを依頼する場合の費用です。物件数や内容によって変わります。
相続登記は義務化されている
相続によって不動産を取得したことを知った日から一定期間内に登記を申請することが義務とされています。正当な理由なく怠った場合、過料の対象となることがあります。
食品工場では、先代の相続時に登記をしないまま何十年も経っているケースがあります。この場合、さらに前の代までさかのぼって相続関係を確認する必要が生じ、手続きが極めて煩雑になります。
心当たりがあれば、いますぐ登記事項証明書を取得して確認してください。
登記が古いままだと何が起きるか
- 担保を設定できず、融資が受けられない
- 売却・譲渡ができない
- M&Aの買収監査で指摘され、クロージング条件になる
- 相続関係者が増え、同意を集めるのが困難になる
- 補助金の申請で書類が揃わない
特に4番目が深刻です。時間が経つほど関係者が増え、解決が難しくなります。
手続きの流れ(相続の場合)
- 登記事項証明書で現在の名義を確認する
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍を集める
- 相続人を確定する
- 遺言があればその内容、なければ遺産分割協議を行う
- 必要書類を揃えて法務局に申請する
2番目が手間のかかる作業です。本籍を何度も移していると、複数の役所から取り寄せる必要があります。司法書士に依頼するのが現実的です。
会社に移す場合の注意
個人名義の工場を会社に売却する場合、次を確認してください。
- 売買価額が適正か(著しく低いと税務上の問題が生じる)
- 会社に取得資金があるか(借入か、分割払いか)
- 担保が設定されている場合、金融機関の承諾が得られるか
- 個人に譲渡所得課税が生じること
- 会社の純資産が増え、株価が上がる可能性があること
最後の点は、承継の負担に直結します。自社株の評価と移転と工場・土地が個人名義のときの相続対策をご覧ください。
あわせて確認したい登記事項
担保の設定状況
完済しているのに抵当権が残っている(抹消登記をしていない)ことがあります。売却や新たな担保設定の障害になるため、確認してください。
建物が未登記になっていないか
食品工場では、増築した部分が未登記のままというケースがあります。売却や担保設定ができないほか、M&Aでも指摘されます。
境界の確定
隣地との境界が確定していない場合、売却時に測量と立会いが必要になります。時間がかかる作業なので、早めに着手してください。
まずやること
- 会社が使っているすべての不動産について、登記事項証明書を取得する
- 名義が実態と合っているか確認する
- 抵当権が残っていないか確認する
- 未登記の建物がないか確認する
- 問題があれば、司法書士に相談する
1〜4は数日でできます。個人名義の設備・車両・土地をどう整理するかとあわせて進めてください。
※ 登録免許税・不動産取得税の税率や軽減措置、相続登記の義務に関する取扱いは法令の改正や自治体によって異なります。手続きにあたっては司法書士・税理士等の専門家にご確認ください。