大前提:評価を下げることは目的ではない
株価を下げる打ち手の多くは、会社の純資産や利益を実際に減らすものです。税負担は軽くなりますが、会社の体力も落ちます。
後継者が引き継ぐ会社を弱くしてまで、税負担を減らす意味があるか。ここを先に考える必要があります。
打ち手1:役員退職金を支給する
最も一般的な方法です。先代の退任にあわせて役員退職金を支給すると、会社の純資産が減り、利益も減るため、評価額が下がります。
先代にとっては引退後の生活資金になるため、合理性があります。
副作用
- 会社の現預金が大きく減る(運転資金が細る)
- 不相当に高額とされる部分は損金にならない
- 金融機関から見て自己資本が減る
食品製造業は在庫と売掛の資金負担が重い業種です。支払時期と金額を、資金繰りから逆算して決めてください。役員退職金の税務上の注意と資金繰り表の作り方をご覧ください。
打ち手2:不良資産を整理する
回収できない売掛金、価値のない在庫、使っていない設備。これらを整理すると純資産が減り、評価額が下がります。
副作用
ほとんどありません。むしろ実態を正しく反映する作業であり、M&Aを選ぶ場合にも有利に働きます。優先度の高い打ち手です。
食品工場では、賞味期限切れの製品、使えなくなった包材、動いていない原材料が該当します。在庫の評価をご覧ください。
打ち手3:設備投資を行う
設備を取得すると、減価償却によって利益と純資産が減ります。評価額の引き下げにつながります。
副作用
- 資金が必要(借入なら返済負担)
- 不要な設備を買えば、単なる無駄になる
もともと必要だった設備更新のタイミングを合わせるのであれば合理的です。税対策のために不要な設備を買うのは本末転倒です。設備の寿命から逆算するを参照してください。
打ち手4:不動産を取得する
土地・建物は、取得価額と相続税評価額に差が生じることがあります。これを利用して評価額を下げる方法です。
副作用
- 多額の資金が必要
- 事業に不要な不動産は、資産保有型会社の判定に影響する可能性がある
- 取得後一定期間は、評価上の取扱いが異なる場合がある
特に2番目は、事業承継税制の適用を考えている場合に問題になります。事業承継税制(納税猶予)をご覧ください。
打ち手5:配当を抑える
類似業種比準方式では配当が評価要素の1つになるため、配当を抑えると評価が下がる方向に働きます。
副作用
中小企業では、そもそも配当を出していないことが多く、追加の効果は限定的です。また、株主が分散している場合は不満につながります。
打ち手6:会社の規模区分を変える
会社の規模によって評価方式の適用割合が変わるため、規模区分を変えることで評価額が動くことがあります。
副作用
従業員数や総資産を意図的に操作するのは現実的ではありません。組織再編を伴う場合は、税務上の要件判定が複雑になります。
やってはいけないこと
- 実態のない経費を計上する
- 売上を意図的に翌期にずらす
- 必要な修繕を先送りする
- 合理的な理由なく資産を安く譲渡する
これらは税務上否認されるリスクがあるだけでなく、会社そのものを弱くします。
優先順位
副作用の小ささで並べると、次の順です。
- 不良資産の整理(副作用ほぼなし。まずこれ)
- もともと必要な設備投資のタイミング調整
- 役員退職金(資金繰りを確認したうえで)
- その他(専門家と個別に検討)
タイミングが重要
評価額は決算期ごとに変わります。株式を移転するタイミングと、これらの打ち手のタイミングを合わせる必要があります。
年単位の設計になるため、顧問税理士と早い段階から相談してください。顧問税理士とどう連携するかをご覧ください。
※ 税務の取扱いは、法令の改正や個別の事情によって異なります。実行にあたっては、顧問税理士等の専門家に必ずご確認ください。