制度の考え方

後継者が自社株を贈与または相続で取得した場合に、一定の要件のもとでその株式に対応する贈与税・相続税の納税を猶予する制度です。

納税が「免除」されるのではなく「猶予」される点が重要です。要件を満たし続ければ、最終的に免除される場合がありますが、途中で要件を外れると猶予されていた税額と利子税を納めることになります

どんなときに検討するか

  • 自社株の評価額が高く、贈与税・相続税の負担が重い
  • 納税資金を用意する目処が立たない
  • 後継者が決まっており、長期にわたって事業を続ける見込みがある
  • 会社を売却する予定がない

最後の2つが重要です。将来的にM&Aを考えている会社では、慎重な検討が必要です。株式を譲渡すると、猶予が打ち切られる可能性があります。

大まかな流れ

  1. 特例の適用を受けるための計画を、期限内に都道府県知事に提出する
  2. 要件を確認し、株式を贈与または相続する
  3. 都道府県知事の認定を受ける
  4. 税務署に申告し、担保を提供する
  5. 一定期間、毎年の報告と届出を行う

1番目の計画提出には期限があります。制度の内容や期限は改正されることがあるため、必ず最新の情報を確認してください。

要件のイメージ

詳細は複雑ですが、大きくは次の3つに関する要件があります。

会社に関する要件

  • 中小企業者であること
  • 資産保有型・資産運用型の会社に該当しないこと
  • 従業員が一定数以上いること
  • 上場企業・風俗営業会社でないこと

「資産保有型会社」に該当しないことは、食品製造業でも注意が必要です。工場や土地の割合が高く、事業実態が乏しいと判断されると該当する可能性があります。実際に製造を行い、従業員を雇用していれば通常は問題になりませんが、確認は必要です。

先代経営者に関する要件

  • 代表者であったこと
  • 一定以上の議決権を保有していたこと
  • 贈与の場合、代表を退任すること

後継者に関する要件

  • 代表者に就任すること
  • 一定以上の議決権を保有すること
  • 一定期間、役員であったこと(贈与の場合)

注意点1:継続的な報告が必要

認定を受けた後、一定期間は毎年、都道府県と税務署への報告・届出が必要です。この手続きを失念すると、猶予が打ち切られます

顧問税理士と、誰がいつ何を提出するかを明確にしておいてください。顧問税理士とどう連携するかをご覧ください。

注意点2:打ち切りになる場面

次のような場合、猶予が打ち切られる可能性があります。

  • 後継者が代表を退任する
  • 株式を譲渡・贈与する
  • 会社が資産保有型会社等に該当することになる
  • 会社が解散する
  • 報告・届出を怠る

打ち切られると、猶予されていた税額に加えて利子税を納めることになります。金額が大きくなるため、影響は深刻です。

注意点3:M&Aとの関係

食品製造業では、将来的に第三者への譲渡を選ぶ可能性があります。この制度を利用した後にM&Aを行うと、猶予の打ち切りが問題になります

一定の場合に負担を軽減する仕組みが設けられていることもありますが、条件は限定的です。将来の選択肢を狭める可能性があることを理解したうえで判断してください。

使わないという選択

この制度は強力ですが、次の場合は使わないほうが結果的に良いこともあります。

  • 納税資金を用意できる目処がある
  • 株式の評価額がそれほど高くない
  • 将来M&Aの可能性を残しておきたい
  • 後継者が長期にわたって続ける確信が持てない

評価額を下げる方法や、時間をかけて贈与する方法もあります。自社株評価を下げる打ち手生前贈与の使い方をご覧ください。

検討の順番

  1. 自社株を評価してもらう
  2. 制度を使わない場合の税額を試算する
  3. 納税資金を用意できるかを確認する
  4. 将来M&Aの可能性があるかを考える
  5. そのうえで、専門家と適用の可否を検討する

※ 税務の取扱いは、法令の改正や個別の事情によって異なります。実行にあたっては、顧問税理士等の専門家に必ずご確認ください。