工場用地の相続が難しい理由

  • 面積が大きく、評価額が高くなる
  • 換金できない(売れば事業が続けられない)
  • 分けられない(分筆しても工場としては使えない)
  • 用途が限られる(宅地としての流通性が低い場合がある)

つまり、納税資金を生まない資産に多額の相続税がかかるという構造です。

小規模宅地等の特例

一定の要件を満たす宅地について、相続税の課税価格を減額する特例があります。事業用の宅地についても対象となる区分があります。

考え方のポイント

  • 被相続人等の事業に使われていた宅地であること
  • 相続人が事業を引き継ぎ、継続すること
  • 申告期限まで保有を継続すること
  • 適用できる面積に上限がある

工場用地は面積が大きいため、上限を超える部分には特例が適用されません。全体としてどれだけ軽減されるかは、面積と評価額次第です。

会社が使っている場合の扱い

個人名義の土地を、経営する同族会社が事業に使っている場合も、一定の要件のもとで特例の対象となる区分があります。ただし、賃貸借の状況(賃料の有無や水準)によって扱いが変わります

無償で貸している場合と、相当の対価を得て貸している場合とで適用区分が異なることがあるため、現在の賃貸借の状態を確認することが出発点になります。工場・土地が個人名義のときの相続対策をご覧ください。

評価に影響する要素

工場用地の評価では、次の点が考慮されることがあります。

  • 路線価または倍率方式による評価
  • 形状(不整形地、間口が狭い、奥行きが長い)
  • 接道の状況
  • 都市計画上の制限
  • 広大な土地であることによる補正
  • 土壌汚染の可能性

工場用地は不整形であることが多く、補正によって評価が下がる可能性があります。適用の可否は個別の判断になるため、税理士に確認してください。

納税資金をどう用意するか

1. 生命保険

最も確実な方法です。相続税の納税資金として、経営者を被保険者とする生命保険に加入しておきます。

2. 死亡退職金

会社から遺族へ支給される退職金です。一定の非課税枠があり、納税資金として機能します。ただし、会社に支払能力が必要です。

3. 自己株式の買い取り

相続した自社株を会社に買い取ってもらい、その資金を納税に充てる方法です。財源規制と税務上の取扱いがあるため、事前の検討が必要です。

4. 延納・物納

一定の要件のもとで、分割納付や、物での納付が認められる場合があります。ただし要件が厳しく、事業に必要な工場用地を物納するのは現実的ではありません

分けられない土地をどう配分するか

相続人が複数いる場合、工場用地を共有にするのは避けるべきです。共有になると、担保設定も建て替えも売却も、全員の同意が必要になります。

対応としては次があります。

  • 遺言で後継者に相続させる(他の財産で他の相続人に配慮)
  • 代償分割(後継者が他の相続人に金銭を支払う)
  • 生前に会社へ移す(相続財産から外し、株式に含める)

いずれも生前の準備が必要です。遺言書の作り方遺留分への配慮をご覧ください。

事前に確認しておくこと

  1. 工場用地の面積と、路線価等による概算評価額
  2. 個人名義か会社名義か
  3. 個人名義の場合、賃貸借契約の有無と賃料の水準
  4. 担保の設定状況
  5. 小規模宅地等の特例が使える見込みがあるか
  6. 納税資金の見通し

1と6だけでも試算しておくと、問題の大きさが分かります。そこから対策の優先順位が決まります。

※ 小規模宅地等の特例の適用要件や土地の評価方法は、法令の改正や個別の事情によって異なります。適用の可否は必ず税理士にご確認ください。