点検1:株式の譲渡制限
ほとんどの中小企業は、株式の譲渡に会社の承認を要する旨を定款で定めています(譲渡制限株式)。まずここを確認します。
確認するのは、承認機関がどこになっているかです。取締役会設置会社なら取締役会、そうでなければ株主総会が原則ですが、定款で別に定めている場合があります。承継の際は、この機関の承認手続きが必要になります。
点検2:機関設計が実態と合っているか
古い会社では、定款上は取締役会と監査役を置くことになっているのに、実際には取締役が1人しかいない、監査役が何年も前に亡くなっている、といったずれが起きています。
この状態のまま重要な決議をすると、手続きの有効性に疑義が生じます。M&Aの買収監査では必ず指摘される項目です。承継の前に、定款を実態に合わせるか、実態を定款に合わせるかを決めてください。
点検3:役員の任期と登記
取締役・監査役の任期が満了しているのに、重任の登記をしていない会社があります。定款で任期を10年に伸長している会社では特に忘れられがちです。
登記が古いままだと、代表交代の登記の前に過去分をさかのぼって処理する必要が生じ、時間と費用がかかります。代表交代の手続きとあわせて確認してください。
点検4:相続人等に対する売渡請求の定め
株式を相続した人に対して、会社がその株式の売渡しを請求できる旨の定めが定款にあるかを確認します。
この定めがないと、少数株主に相続が発生するたびに株式が細かく分散していきます。これから増えるのを止めるための手当てとして、承継の準備段階で入れておく価値があります。ただし、自社の株主構成によっては思わぬ形で作用することがあるため、導入は専門家と検討してください。
点検5:株券発行の定め
定款上「株券を発行する」となっている会社があります。この場合、株式を譲渡するには原則として株券の交付が必要です。
ところが実際には株券を作っていない、あるいは紛失している会社が多くあります。この状態では譲渡の手続きが取れません。株券不発行会社への定款変更を、承継の前に済ませておくのが実務的です。
点検6:目的(事業目的)
登記されている事業目的が、実際の事業と合っているかを確認します。食品製造業では、製造だけを目的に掲げていて、実際には卸売や小売、通信販売も行っているという例があります。
直ちに違法というわけではありませんが、許認可の申請や補助金の申請で目的の記載を求められることがあります。承継のタイミングは、整理する良い機会です。
点検7:株主名簿
定款と並んで確認すべきなのが株主名簿です。次の3点を見ます。
- 名簿が現在も更新されているか(法人税申告書の別表二と一致しているか)
- 各株主の現住所と生存が確認できるか
- 名義を借りただけの株(名義株)が含まれていないか
名簿が実態と合っていないことは、承継の場面で最も頻繁に問題になります。分散した株式をまとめると名義株の整理で扱っています。
点検の進め方
順番としては、まず法務局で現在事項全部証明書(登記事項証明書)を取り、手元の定款と突き合わせます。それから株主名簿と別表二を照合します。ここまでは1日でできます。
ずれが見つかったら、司法書士や弁護士に相談してください。調べるのは自分で、直すのは専門家と——この分担が効率的です。
※ 会社法上の手続と登記の要否は、会社の機関設計や個別の事情によって異なります。定款変更を含め、実行にあたっては司法書士・弁護士等の専門家に必ずご確認ください。