工場長に求められること

領域具体的な内容
生産生産計画、稼働管理、納期の遵守
品質衛生管理、クレーム対応、監査対応
数字原価、歩留まり、稼働率、人件費
採用、教育、シフト、評価、労務
設備保全、更新計画、投資の判断
安全労災防止、法令遵守
対外取引先の監査対応、行政対応

製造出身者が最も不慣れなのは「数字」と「対外」です。ここを意識して育てる必要があります。

育成の順序

段階1:現場を任せる(ライン責任者)

  • 担当ラインの生産計画と稼働管理
  • 人の配置とシフトの原案作成
  • 品質の判断
  • 異常時の初期対応

この段階で、「自分でやる」から「人にやってもらう」への転換が課題になります。優秀な作業者ほど、自分でやってしまいがちです。現場リーダーの役割をどう定義するかをご覧ください。

段階2:数字を任せる

ここが分かれ目です。次を順に任せてください。

  1. ラインの稼働率と停止理由の集計
  2. 歩留まり・ロスの集計と分析
  3. 担当ラインの原価計算
  4. 改善による効果の試算
  5. 設備投資の提案(投資額と回収)

集計させるだけでなく、「なぜこの数字になったか」を説明させてください。分析ができて初めて、経営に近づきます。

ライン稼働率の見方品目別採算の作り方をご覧ください。

段階3:人を任せる

  • 採用面接への同席、次に単独
  • 教育計画の作成
  • 評価の一次判定
  • 労務上の相談への対応

労務は法令の知識が必要な領域です。社会保険労務士の説明を一緒に聞かせる、外部研修に出すといった支援が有効です。食品工場の労務管理 完全ガイドをご覧ください。

段階4:対外を任せる

  • 取引先の工場監査への対応
  • 保健所への相談・届出
  • 設備メーカー・工事業者との折衝
  • クレーム発生時の取引先対応

取引先の工場監査は、格好の訓練の場です。第三者の目で自社を説明する経験になります。取引先の工場監査をご覧ください。

権限を明確にする

「任せる」と言いながら、実際には決められない状態が最も本人を消耗させます。

決めておくこと

  • 金額いくらまでの支出を決裁できるか
  • 人の採用・配置をどこまで決められるか
  • 生産計画の変更をどこまで決められるか
  • 出荷可否の判断(品質異常時)
  • 設備の修理・更新の判断範囲

4番目は必ず明確にしてください。品質異常が出たときに「社長に聞かないと決められない」では、対応が遅れます。

失敗させる

権限を与えれば、失敗も起きます。致命的でない範囲で失敗させることが、育成の本質です。

  • 失敗の範囲を限定する(金額、影響の大きさ)
  • 結果を一緒に振り返る
  • 責めるのではなく、原因と対策を考えさせる

失敗のたびに社長が介入すると、次から判断しなくなります

外に出す

社内だけでは視野が広がりません。

  • 業界団体の研修・勉強会
  • 展示会・工場見学
  • 他社の工場を見る機会
  • 公的機関のセミナー

他社の工場を見ると、自社の当たり前が当たり前でないと気づきます。これが改善の出発点になります。

工場長が育つと何が変わるか

  • 社長が現場から離れられる
  • 後継者の負担が軽くなる
  • M&Aで「実務の中核が残る」ことが評価される
  • 先代の残留期間が短くて済む

3番目は特に重要です。買い手が最も恐れるのは、キーパーソンがまとめて抜けることです。工場長が育っていれば、経営者が交代しても現場が回ります。

人が残るかどうかは価格に影響するか引き継ぎ期間はどれくらい必要かをご覧ください。

後継者候補としての工場長

社内承継を考える場合、工場長は有力な候補です。ただし、次の点を確認してください。

  • 本人に意思があるか
  • 数字と対外の経験を積んでいるか
  • 株式の買い取り資金と保証の問題を解決できるか

いきなり打診する前に、役員に登用して経営の数字を見せる段階を踏んでください幹部を役員に上げるか社内承継(MBO)の設計をご覧ください。