よくある問題
- リーダーが一番手を動かしていて、全体を見られない
- 何をすべきか本人が分かっていない
- 権限がなく、いちいち工場長に確認する
- 手当は付いたが、責任だけが増えた
- 作業者との関係が難しくなった
「作業が一番できる人」を「リーダー」にしただけでは、役割は変わりません。定義が必要です。
役割を定義する
リーダーの仕事は、作業ではなく「回すこと」です。次を明文化してください。
やること
- その日の人の配置を決める
- 生産の進捗を管理し、遅れに対応する
- 品質の異常を判断し、報告する
- 設備の異常に初期対応する
- 記録が正しく付けられているか確認する
- 新人・応援者に作業を教える
- 作業者の体調・様子を見る
- 改善点を工場長に報告する
やらないこと
- 特定の工程に固定で入る
- 全部を自分でやってしまう
「原則としてラインに固定で入らない」と決めるのが有効です。人が足りないときは入りますが、それが常態化すると全体が見えません。
権限を与える
役割を定義しても、権限がなければ機能しません。
- その日の人の配置を決められる
- 生産順序を入れ替えられる
- 品質異常時にラインを止められる
- ◯円までの消耗品を発注できる
- 残業の指示ができる(36協定の範囲内で)
3番目が最も重要です。「止めていいのか」と迷っている間に、不良品が流れます。「迷ったら止める。止めた判断は責めない」と明言してください。
リーダーの人数と範囲
- 1人が見る範囲は、5〜10人程度が目安
- ラインごと、シフトごとに置く
- 不在時の代行者も決めておく
代行者を決めていないと、リーダーが休めません。多能工化と同じ発想で、リーダーも複数育ててください。
育成の順序
段階1:教える役割から
いきなりリーダーにせず、まず新人の教育担当を任せます。
教えることで、自分の作業を言語化する必要が生まれます。これがリーダーの基礎になります。教育計画の作り方をご覧ください。
段階2:一部を任せる
- 朝礼の進行
- 記録の確認
- 翌日の準備の指示
段階3:ラインを任せる
上記の権限を与え、実際に回してもらいます。最初は工場長が近くにいて、判断を確認する形から始めます。
段階4:判断を任せる
工場長が離れても回る状態にします。
リーダーになりたがらない問題
食品工場でよく聞く課題です。理由は次のとおりです。
- 責任だけ増えて、処遇が見合わない
- 人間関係が難しくなる(同僚から上司へ)
- 残業が増える
- 何をすればよいか分からない
対策
- 手当を明確にする(責任に見合う額に)
- 役割を文書で定義する(何をすればよいかを示す)
- 権限を与える(決められない立場にしない)
- 工場長が支援する姿勢を示す
- キャリアの道筋を示す(リーダー → 工場長)
「何をすればよいか分からない」が最大の不安です。役割定義書が、この不安を解消します。
同僚から上司になる難しさ
長く横並びだった人が指示を出す立場になると、摩擦が生じます。
緩和する方法
- 任命を正式に発表する(曖昧にしない)
- 工場長がリーダーの判断を支持する姿勢を見せる
- リーダーの決定を、工場長が覆さない(覆す場合は本人と先に話す)
- リーダー同士が相談できる場を作る
2番目と3番目が重要です。作業者の前でリーダーの判断を否定すると、以後リーダーの指示が通らなくなります。
評価に組み込む
リーダーの評価は、作業の速さではなくラインの成果で見てください。
- ラインの稼働率
- 不良率
- 記録の正確さ
- 新人の育成状況
- 改善提案とその実行
- メンバーの有給取得率
最後の項目を入れると、休める体制づくりが進みます。人事評価制度の作り方をご覧ください。
承継の観点
リーダーが育っている工場は、経営者が交代しても現場が回ります。
買い手にとって、これは大きな安心材料です。逆に、社長や工場長がすべてを見ている工場は、その人が抜けたときのリスクが高いと評価されます。
人が残る会社と残らない会社の違いをご覧ください。